学校での性暴力被害を防ごうと日本共産党を含む全会派が共同提案した「わいせつ教員防止」法案が27日の参院文教科学委員会で、全会一致で可決されました。同法案は教職員に児童生徒への性暴力を禁止し、性暴力をした教員に対する教員免許の再授与を拒否できるようにするもの。

 共産党の吉良よし子議員は質疑で、同法案の「児童生徒性暴力等」の定義で「特別の事情がある場合を除く」とあるが、「どのような事情があろうとも、少なくとも性交同意年齢(13歳)未満の『児童』との性的行為は、『特別の事情』には当たらないという理解でよいか」と確認しました。

 法案提出者を代表して答弁に立った同党の畑野君枝衆院議員は「おっしゃる通りだ」と答えました。

 吉良氏は、「本法案は、刑法では処罰の対象にならない行為まで幅広く禁止し、子どもたちの人権を守る立場を明確にしている」と強調。吉良氏に対する「子どもに配慮した対応が望まれる」との政府答弁(20日)に触れ、「深く傷ついた子どもたちが、事実認定の過程でさらに傷つくことのないよう学校での体制を一刻も早く整えるべきだ」と主張しました。

 萩生田光一文部科学相は「子どもに負担をかけない、2次被害を受けない体制を文科省としてつくりたい」と応じました。

(しんぶん赤旗 2021年5月28日付)

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【議事録】

○吉良よし子君 日本共産党の吉良よし子です。
 子供たちに対する性暴力、絶対に許されません。また、わいせつ教員、子供たちに対する性暴力で懲戒免職になった教員を子供たちの前に立たせない、当然のことであり、重要な立法です。
 では、まず早速ですが、児童生徒性暴力等の定義について伺いたいと思います。提案者に確認したいと思います。
 本法案第二条第三項第一号で、児童生徒性暴力等とは、児童生徒等に性交等をする又はさせることとあり、続いて括弧して、児童生徒等から暴行又は脅迫を受けて当該児童生徒等に性交等をした場合及び児童生徒等の心身に有害な影響を与えるおそれがないと認められる特別の事情がある場合を除くとし、特別の事情がある場合は除くんだということ書いてありますが、これ、とはいえ、どのような事情があったとしても、少なくとも性交同意年齢未満の子供、すなわち児童との性的な行為というのはこの特別な事情には当たらないと思うんですが、そういう理解でよろしいのかどうか、御答弁お願いします。
○衆議院議員(畑野君枝君) 吉良よし子議員のおっしゃるとおりです。
 特別の事情とは、児童生徒等の心身に有害な影響を与えるおそれがないと認められる特別の事情であり、犯罪行為である性交同意年齢未満の児童生徒等との性交がこの特別の事情に当たる場合があることは全く考えられません。
○吉良よし子君 全く考えられないと。つまり、法案には児童生徒等という言葉があるわけですけれども、それは基本的に十八歳未満の子供たちを便宜上指す言葉であって、性交同意年齢未満となる、十三歳未満となる児童に対する性的行為というのは例外なく禁止の対象になるということだと思うわけですね。
 一方、五月二十一日に取りまとめられた性犯罪に関する刑法検討会の取りまとめ報告書を読んでいますと、この地位、関係性を利用した犯罪類型の在り方の議論の中で、教師やコーチによる児童との性的行為を一律に処罰することには疑問があるという信じ難い意見も出されたという記述を見付けたわけなんです。これ、本当あり得ないとは思っているんですけど、刑法改正の議論ではそうした性交同意年齢の見直しももっと引き上げるべきという声も出されているわけですし、様々な規定の見直しが重要な論点となっているわけです。
 ただ、本法案の場合は、そうした刑法とは別建てで、十八歳未満の子供たちに対する教師からの性的な行為、盗撮、セクシュアルハラスメントなど、刑法で性犯罪の対象となっていない行為まで範囲を広げて禁止だと、幅広く禁止すると、そういう趣旨になっていると思うんですが、それでよろしいでしょうか。
○衆議院議員(池田佳隆君) 吉良先生のまさにおっしゃるとおりかと思います。
 第二条第三項で定義されております児童生徒性暴力等とは、現在の運用上、児童生徒等に対する性暴力等として懲戒免職処分の対象となり得る行為を列挙して定めたものであって、被害を受けた児童生徒等の同意や当該児童生徒等に対する暴行、脅迫等の有無を問いません。これを受けて、第三条で、教育職員等は児童生徒性暴力等をしてはならない、このように禁止規定を定め、刑法上の性犯罪の対象になっていない行為も含めて禁止しているところでございます。
○吉良よし子君 刑法上の性犯罪になっていない行為も含めて本法案では禁止の対象とすると。幅広くそういう対象を広げる中で子供たちの人権を守るという立場を明確にしているということは本当に大事なことだと思っております。
 ただ一方、現状を見てみると、こうした性犯罪の被害となった、被害を受けた子供たちがその被害を被害として認識できないとか、その知識がないがゆえに認識できないとか、また、その自分に起きたことを誰かにうまく言葉で説明できないとか、事実認定そのものに困難があるということを先日の質疑でも指摘させていただいたところです。
 さらに、そうした事実認定の過程において、何度も様々な、担任の教師であるとか、場合によっては学校長とか教育委員会とか、さらには警察まで出てきて、そこに何度も何度も同じ被害を説明させるような事態になってしまって、二次被害が生まれてしまうというのは本当にあってはならないと思うわけです。
 先日の質疑の際には、局長から、こうした事実認定を行う際の体制について、司法面接を参考にしたいという答弁もありましたけれども、今回の法案、実効性あるものにしていくためには、こうした被害そのもので深く傷ついている子供たちがそれ以上に傷つかないような体制づくり、相談体制、事実認定をする体制づくり、本当に急がれると思うわけですが、子供たちが安心して被害を相談できる体制を整える、文科大臣が先頭に立って急いでこれ体制つくっていくべきと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(萩生田光一君) 非違行為や疑わしい行為があった場合の事実関係の確認に当たっては、被害を受けた児童生徒に十分配慮して対応する必要があると考えており、文科省では、これまでも各教育委員会に対して、被害児童生徒の相談体制整備やスクールカウンセラーなどの専門家等による適切な支援を行うことや、処分事案の公表に関して被害児童生徒のプライバシー保護に十分配慮することなどを求めてきているところです。
 また、累次の聞き取りによる二次被害や記憶の変容等を避けるため、被害児童生徒に対して聞き取りを行う際、司法面接の手法を活用することも有効であると考えており、法務省等の関係省庁から情報もいただきながら、各教育委員会に対して、事案の調査に当たっての工夫や警察等の関係機関との連携の重要性などを研修会等を通じて伝えてまいりたいと思っています。
 今先生御披露いただいたように、やっとの思いで相談をした児童が、まずお母さんから聞かれる、で、お父さんが激高してまたそこに輪を掛けて聞く、担任の先生に聞かれて、生活指導の先生や養護の先生や指導主事ですとかね、校長も出てきて、これじゃ本当に参っちゃうし、だんだん記憶が変わっていっちゃう可能性もあります。他方、学校現場では、もしかしたら子供の勘違いもあるんじゃないかという同僚をかばう思いというのも分からなくない面もあると思うんですね。ですから、正しい聞き取りをするためにも、できるだけ子供に負担を掛けないこと。それから、これを授業時間にその子供だけ校長室や相談室へ呼んだら、それは友達は何かあったんじゃないかとみんな思いますよ。
 ですから、そういう配慮も含めて、できるだけ創造力を膨らませて、被害児童に相談しやすく、そして二次的な被害を受けないような、そういう相談の体制というものをきちんと文科省としてフォームをつくって、これを全国に展開をしていきたいなと思っていますので、基本的な指針への反映、これをきっちりやっていきたいと思っています。
○吉良よし子君 文科省としてフォームをつくって広めていくとおっしゃっていただいた。これ本当に大事なことだと思いますし、もう是非急いでやっていただかないと、この法案の実効性という観点からしても問題ですので、是非よろしくお願いしたいと思います。
 本当に子供への性暴力というのはもう深刻なダメージを与えるんだということは、この間、各委員からも指摘もあったことですし、私自身も先日の質疑で申し上げました。もうPTSD、数十年にわたって続く、まさに一回の子供のときのこの性暴力を受けたことによって人生が狂わされたという方が今現にいらっしゃるわけで、そうした子供への性暴力というのはもう絶対にあってはならないし、許してはならないんだということで、子供たちを守り抜く学校そして社会をつくるため力を合わせていくという決意を申し上げまして、私の質問を終わります。