畑野君枝議員は4月27日の衆院消費者問題特別委員会で、特定商取引法で定められた契約書面交付の電子化を認める同法改定案をめぐり、政府が被害の「歯止め」とする消費者の承諾について追及しました。

 畑野氏は、政府が契約書面の電子化について、「消費者の承諾を得た場合に限る」としていることについて、「消費者が契約内容を理解して意思決定できる状態になく承諾してしまう懸念がある」と追及しました。

 消費者庁の高田潔次長は、「口頭や電話だけの承諾は認めない。承諾をしたことを明示的に確認する」と述べ、「紙やそれ以外の承諾の取り方、一番いいやり方を考える」と初めて答えました。

 畑野氏が、政府が立法事実とする「消費者ニーズ」について、消費者団体の意見も聞かずに進められてきたと指摘。「消費者が契約書の電子化を求めた具体的な事実はあるのか」とただすと、井上信治消費者担当相は答えることができませんでした。

(しんぶん赤旗2021年5月4日付)

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【議事録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 特定商取引法、預託法等改正案について伺います。
 今回の政府提出法案には、契約書の電子化を可能とする項目が含まれました。これに対して多くの反対の声が上がっております。
 四月二十五日付の日本消費経済新聞では、
  特定商取引法・預託法等一括改正案に突然盛り込まれた契約書面等の電子化に反対する、あるいは、削除を求める意見書を出した消費者団体、弁護士会、司法書士会などの数は四月二十二日、百二十四団体に上った。短期間で異例な多さになった。「承諾した契約自体がトラブルになる取引分野では、契約書面交付電子化の「承諾」は被害防止の歯止めにならない」「高齢者を見守る人たちから被害に気付く機会を奪う」「メリットよりデメリットの方が大きく、消費者被害を拡大させる」「全く議論もせず、政治主導で入ったいびつさが随所に出ている」「政省令で規定しても悪質業者は守らず、被害が必ず増える」など、さまざまな問題点が指摘されている。
と報じております。
 四月二十二日で百二十四団体だったんですが、今日確認をいたしましたら、四月二十六日現在で百三十九団体に、更に増えているということです。
 四月二十一日に、立憲民主党、日本共産党、国民民主党は、政府提出法案への対案として、消費者保護を徹底する観点から、販売業者等が交付すべき書面の電子化に関する規定は設けないなどとする消費者の権利実現法案を衆議院に提出いたしました。
 四月二十二日本会議で、私も趣旨説明を行いました。書面であれば、本人が契約してしまったことを家族や友人に気づいてもらえることで被害回復への道が開かれます、契約を書面で取り交わすことが消費者被害の拡大を防ぐ最後のとりでなのです、このように申し上げました。そして、政府案と野党案の質疑が始まったわけです。与党案、野党案については、柚木道義議員が質問をし、野党案については井上一徳議員が答弁をいたしました。
 そこで、今日は、政府提出の法案について具体的に伺います。
 四月二十二日の本会議で、井上信治大臣は、今回の特商法、預託法等改正案について、消費者ニーズの変化はまさに今回の制度改正の立法事実と御答弁されました。
 しかし、今日の議論を通じても具体的な話はございませんでした。消費者からそんな声があるのかということについて、消費者庁長官は、紙などでもらったことはありませんでした、そうではないかなあと議論していましたということなわけです。
 それで、二〇二〇年十一月九日の規制改革推進会議成長戦略ワーキング・グループ会議では、書面や押印についての見直しについて、河野太郎行政・規制改革担当大臣が提起をし、そして、デジタル学習教材やプラットフォームを展開する事業者から、特商法の特定継続的役務提供の語学の教授に該当するために電磁的な契約書の交付が認められていない、電磁的な契約書を認めてほしいという要望があったというふうにあるわけです。
 これは事業者であって、議論の出発点としてはこういうことではなかったかと思うんですが、具体的に伺います。
○井上国務大臣 消費者ニーズの変化についてということでよろしいですか。
○畑野委員 特商法、預託法について、消費者がこういうふうに具体的に電子化をしてほしいと言ったという具体的な事実を言ってください。
○井上国務大臣 消費者ニーズの変化ということで申し上げますと、この十年で、スマートフォンの世帯保有率は約二・八倍、我が国の電子商取引の市場規模は約二・三倍と、急速に拡大をしております。また、高齢者もインターネットを介した機能、サービスを一定程度利用しており、令和元年における六十代のインターネットの利用率は九割を超え、七十代でも七割を超えています。このように、国民生活のデジタル化は急速に進展しており、規制や制度についてもこうした環境変化に即応していくことが求められております。
 また、例えば、目次機能や検索機能を使うことにより必要な事項に容易に到達して契約内容を把握することや、書類の保管や複製を容易にするといった、消費者にとってのメリットもあります。
 さらに、昨年来、新型コロナウイルス感染症対策が求められる中、極力人の接触を減らす等の新たな日常が模索され、自宅にいながらインターネットを利用する取引や手続の規定を整備する重要性は、いまだかつてなく高まっていると認識しています。
○畑野委員 だから、具体的に何にも大臣は答えなかったじゃないですか、この間もそうだけれども。消費者からの、長官だって、そういう紙はもらっていませんでしたという先ほどの話でしょう。立法事実はないということです。
 少し伺いますけれども、先ほど紹介した二〇二〇年十一月九日のワーキング・グループ会議の後の同年十二月二十一日、規制改革推進会議議長・座長会合が開かれ、特定商取引法の契約書面の電子化については議題にもされず、議論もされていないにもかかわらず、当面の規制改革の実施事項(案)の中に、突然、特定商取引法の特定継続的役務提供に係る契約前後の書面交付の電子化、次期通常国会に法案提出と盛り込まれたわけです。
 伺いますけれども、十一月九日からこの十二月二十一日まで、一体どこでどのような議論がされたんですか。
○高田政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、規制改革推進会議成長戦略ワーキング・グループで、まず、特定継続的役務提供というのが議論されております。また、それより少し前でございますけれども、十一月二日に、その事務局である規制改革推進室から、全ての民民手続、ですから、特定継続役務以外も含めて全部について検討の要請がございました。
 以上を踏まえまして、全ての部門について電子化を検討するという方針にしたところでございます。
○畑野委員 そんないいかげんな話がありますか。だって、このときには、そう言われながら、特定継続的役務提供に係るとやったんでしょう。本当に不誠実ですね。
 そして、消費者団体の意見も聞かないでやったんだけれども、ところが、今、高田次長も言ったけれども、それが特定商取引の類型全てに広げられるというのが二〇二一年一月十四日の消費者委員会です。もうどこでも議論がなくて、勝手に進めている。そこに消費者庁の取引対策課長が来て、二〇二〇年の十一月九日の規制改革推進会議成長戦略ワーキング・グループで、先ほど言った特定継続的役務提供における書面の電子化が議論になったと。さっきの次長の話と違うんですよ。なったと、十一月。スタートはここですよ。
 そして、この議論も踏まえて更に消費者庁内で政策的な対応の検討を進め、特定継続的役務提供に加えて、訪問販売等の特商法の各取引類型、それと預託法において、消費者の承諾を得た場合に限り、電磁的方法により交付することを可能にするといった制度的見直しを行っていくとしたわけですよ。
 規制改革推進会議議長・座長会合など含めて、そういう方向を出しながら、さらに、さっきの、それで進めるということです。
 確認しますけれども、昨年の十二月二十一日から今年の一月十四日、一体、具体的に消費者のどういう意見を聞いたんですか。この限定で教えてください。
○高田政府参考人 お答えいたします。
 確かに親会議は特定継続役務だけでございますけれども、十一月二日に事務局からそれ以外も全て検討というふうに来ておりますので、特定継続だけが検討というふうになったのではございません。
 いずれにいたしましても、消費者団体等の意見を丁寧に聞かなければいけないと思っておりますので、今後とも慎重に対応したいと考えております。
○畑野委員 具体的に消費者の意見を聞いたんですかと聞いたんだけれども、どうですか、その答えは。
○高田政府参考人 様々な意見をお聞きしながら検討はしております。
○畑野委員 様々な中に消費者は入っているんですか。教えてください。
○高田政府参考人 消費者委員会の委員になっておられる方など、消費者団体の方にも意見を伺っております。
○畑野委員 それは何月何日ですか。
○高田政府参考人 内部の議論でございますので、お答えは差し控えたいと思います。
○畑野委員 様々とか、聞きましたとか、非公開の場じゃ駄目なんですよ。消費者の保護に関わるんですから、プロセスをちゃんと明らかにしないと駄目ですよ。だから、こんなことになっているんじゃないですか。
 じゃ、これは、委員長、資料を出すようにお願いします。
○永岡委員長 後刻、理事会にて協議をさせていただきます。
○畑野委員 そして、二〇二一年の一月十四日の消費者委員会、さっきおっしゃった委員会、さっきも議論になっておりましたけれども、みんな反対じゃないですか。事前に聞いたと言うけれども、当日みんなびっくりして、言っておきましょうか。
 ある委員は、消費者は、契約書にサインしたときに、また、契約書を渡されたときに、そして二、三日後に頭を冷やしたときにその契約を認識します、そしてクーリングオフができます、こういったことから、私たちはすごく危惧しております。
 二人目の方は、今回の書面の電子化については、参入規制もなく、悪徳商法が少なくない特商法、預託法の規制類型全てに導入するということについては、先ほど指摘がありましたように、相談現場などからは懸念が多いと聞いております。
 三人目の方、特商法の取引類型なのですけれども、登録制も重要事項の説明義務もありませんので、ほかの既に電子交付されている分野とはやはり横並びに扱うことはできないと考えております、電子交付が必要とは思われない、例えば訪問販売ですとか、そういったことを含めて同時に扱う必要はないのではないかと考えております。
 次の方、余りにも拙速な電子書面化についてはやはり大変危惧しております。
 次の方、消費者の承諾を得る、消費者が納得ずくで希望した場合に限って電子化をするのだということなので、問題はないと聞こえるのですけれども、そこは全く違う、特定継続的役務提供とその他の取引類型というのは、誘引の段階における不意打ちだとか、あおりだとか、つけ込みとか、いろいろな誘引の中に問題があって、消費者が契約内容を確実に理解して意思決定ができる状態にないということを考えて、この書面交付だとか、その他の様々な規制が置かれています。
 次の方、特商法と預託法に関しては、電子化の前に、まだ解決されていない問題が社会的に山積をしている、それを更に電子化することによって問題が拡大していくということについての相談員の皆様や現場の方々の懸念、これが歴然としてある。
 こういうことですよ。さっき時間がなかったから代わりに言っておきますけれども、ということです。
 それで、伺いますけれども、消費者や相談員の団体からはニーズどころか多くの懸念が出た、これが事実なんです。とりわけ重大なのは、先ほどから議論されている承諾の問題です。
 この法案には、「当該申込みをした者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。」というふうになっているんだけれども、これは、先ほどから消費者委員会の委員からも言われた不意打ち、あおり、つけ込みなどの問題があって、だからいろいろな規制が置かれているんだということで、皆さん、やってきたわけです。
 四月二十五日の日本消費経済新聞に日本弁護士連合会の池本誠司弁護士がおっしゃっているんですけれども、半年間かけて昨年八月にまとめた検討会報告書、これは消費者庁の特商法・預託法検討委員会のことですけれども、委員もされておられましたので、この報告書は高く評価できるものだったが、何の議論もなく契約書面等の電子化が入ったのは驚きと怒りだと述べられ、以下、問題点を挙げたというんですね。
 一つ目は、書面交付とクーリングオフの消費者保護機能が骨抜きになる。特商法は、トラブルが多い訪問販売やマルチ商法などを規制し、悪質な不意打ち勧誘や利益誘導勧誘による不本意な契約被害を防止、救済するために、契約書面等の交付を義務づけ、クーリングオフを付与している。全国の消費生活センターなどに寄せられる訪問販売の相談件数は年間七から八万件、二〇一九年度は七万九千二十六件に上り、マルチ商法も一万件、二〇一九年度、一万一千六百十六件を超えている。こういうふうに述べられているんですね。
 池本弁護士は、例えばということで、床下にシロアリが発生している、急いで駆除しないと土台が駄目になる、地震が来ると家が倒れるなどと突然やってきた訪問販売業者に勧誘された場合、本体の契約自体、その必要性や金額の妥当性を検討する余裕もなく承諾してしまう。そのときに、すぐに工事を手配するため、タブレット画面にサインをして、契約書もメールで送ると工事が早く手配できると言われると、契約書面の電子データ送付にも承諾してしまうと指摘をした。こういうことなんですね。
 こういった問題、一体どういうふうにするんですか。何をもって承諾と言うんですか。
○高田政府参考人 まず、先ほどの御質問、今事実関係を確認いたしました。消費者委員会委員間打合せで消費者団体の方に御説明したのは、十二月十八日、一月七日、二回でございます。
 それから、ただいまの承諾のところの御質問でございます。
 承諾を実質的なものとすること、すなわち消費者が本当に納得して承諾をしていることを確保することは、極めて重要なものであると考えております。
 このため、消費者からの承諾の取り方については、承諾を得ていないにもかかわらず承諾を得たなどとする悪質事業者を排除する観点から、例えば、政省令、通達などにおいて、少なくとも、一、口頭や電話だけでの承諾は認めない、二、消費者が承諾をしたことを明示的に確認することとし、消費者から明示的に返答、返信がなければ承諾があったとはみなさない、三、承諾を取る際に、その承諾によってどのような効果があるのか、どのような内容のことが電子メール等で送付されるのかを明示的に示すことなどを明示的に規定することが適切であると考えております。
 消費者保護の観点から万全を期すよう、政省令、通達を作成する過程において、消費者団体等から現場での体験に基づく御意見などを十分丁寧に聞いて、具体的な規定等の在り方を検討してまいります。
○畑野委員 四月二十二日の本会議でも、井上大臣から、口頭や電話だけの承諾は認めないという御答弁はいただいているんです。
 今、明示的なという話があるんですけれども、明示的なとは何ですか、具体的には。
○高田政府参考人 消費者が承諾したことが明確に分かる、そういうものでございます。
○畑野委員 四月の二十三日の参議院地方創生・消費者問題特別委員会で日本共産党の大門実紀史議員がそのことを取り上げたんですが、代わりにメールで確認しますだったら何にも変わらないということになるんじゃないですかと、くぎを刺しているんですね。つまり、ブラックボックスに入っちゃう。
 だから、じゃ、明示的とは何ですか。例えば紙とか、そういうことになるんですか。
○高田政府参考人 先日の大門議員の御指摘、また今の畑野議員の御指摘等、あるいは消費者団体の意見を十分踏まえた上で、明示的、明確がどのようなことにするか、慎重に検討してまいりたいと考えております。
○畑野委員 それじゃ駄目なんですよね。
 三月三十日に参議院の財政金融委員会で大門議員が麻生太郎財務大臣に質問しまして、それで、どうですかとこの問題を質問しました。麻生大臣の方からは、「消費者庁から出ています話ですので、紙での書面交付が原則という点に加えて、今後政省令を整備していくということが書いてありますので、具体的な消費者保護方策というのを定めるには、この中に、政省令の中に書いていってもらわにゃいかぬことになるんですが。 書く書くといって書かないなんて例はいっぱいありますから、そういった意味では、」と言っているんですね。
 だから、少なくとも、こんな大問題になっているんだから、この場で言ってもらわなかったら判断しようがないんじゃないですか。例えば紙とか、そういうことも承諾の中に入るということを考えているんですか、明示の中で。
○高田政府参考人 紙での承諾の取り方、それ以外の取り方、いろいろ考えられると思います。一番いいやり方を考えたいと思います。
○畑野委員 紙というふうに初めておっしゃいました。
 これは、どういうふうになっていくかというのはあるんですけれども、私は、しっかりと消費者団体の皆さんに聞いて精査する必要があると思いますよ。どうですか。
○高田政府参考人 御指摘も踏まえまして、消費者団体、弁護士の皆さん、御意見を丁寧に伺って、消費者を守るための方策を検討したいと思います。
○畑野委員 そういう一つ一つのことを具体的に委員会で言ってくれないと、これは書く書くといって書かないということも起こり得るわけですから。
 私は、もう時間が来ましたから、幾つか質問しようと思ったんですけれどもできないんですけれども、井上大臣、菅義偉総理大臣と大門議員のやり取りが三月二十六日にありました。その中身は皆さんが紹介しているのであえて言いませんけれども、私、大事だなと思ったことがあるんです。
 それは、大臣に対して、相談員の方々が何を言っているか。まず、入口でいろいろ考える時間、ためらう時間がデジタル化によってなくなってしまうんじゃないかということを一番心配している。被害を発見するのも、家族が発見する。お金がどんどんなくなっていく、何でだろう、聞いたら本人は言わない、でも、たんすの中に契約書があって、これは何の契約書ということで娘さんが電話して、消費者センターに電話で発覚していく。契約書を見て、紙を見て、あっと気がつく場面がある、ここが大事なんだ。これが、パソコンとかスマホに入っちゃうとブラックボックスになっちゃう、お金が減っている理由は分からない、発見が遅れるということなんですね。
 私、こういう実態を是非大臣につかんでいただきたいと思うんですが、いかがですか。
○井上国務大臣 事務方から答弁しているとおり、これから、この法案を通していただいて、施行までの間に、どのようにして消費者保護をしっかりやっていくかということ、いろいろな、おっしゃるような事例を検討したり、あるいは様々な御意見を伺った上で、しっかり考えていきたいと思っています。
○畑野委員 野党提案も是非与野党で議論していただいて……
○永岡委員長 時間でございますので、短くお願いします。
○畑野委員 はい。
 そのことを強く求めて、質問を終わります。
 ありがとうございました。