国立大学法人法改定案が22日の衆院本会議で日本共産党以外の賛成多数で可決され、参院に送られました。同法案は、各大学の中期目標の達成状況をはかる「指標」を中期計画に設けるもの。学長選考会議の「学長選考・監察会議」への改称や、常勤監事の義務化など学長監視機能も強化します。

 21日の文部科学委員会で日本共産党の畑野君枝議員は、学問の自由を保障するため各大学が主体的に策定すべき中期目標に対し、文科省が詳細な「大綱(素案)」を示すなど介入を強めていることを告発。今回の「大学改革」の発信源をただしました。

 萩生田光一文科相は、同省の検討会議提言に基づき、今回の法案に加え、新たに創設する官製「大学ファンド」から資金を受けるにふさわしい大学統治を求める方向性を経済財政諮問会議に説明したと答弁。経団連会長ら財界人が名を連ね、大学ファンド創設を主張してきた諮問会議の求めに沿った「大学改革」という法案の本質が鮮明になりました。

 畑野氏は、新たに加えられる指標に基づき学長選考・監察会議や監事が学長を評価すれば、達成状況が低いことも法令違反とされかねないと指摘。文科省の伯井美徳高等教育局長は、指標が評価材料になることはあり得るとしつつ「達成されなければ法律違反になるものではない」と答弁。運営費交付金算定の成果指標と中期計画の指標は別物との考えも示しました。

 畑野氏は、指標に基づく学長の評価は「国の進める大学改革に学長を従わせるためのけん制・監視機能の強化にほかならない」と批判しました。

(しんぶん赤旗2021年4月23日付)

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【反対討論】

 私は、日本共産党を代表して、国立大学法人法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  国立大学法人法制定時の審議では、中期目標の作成主体は国立大学法人である旨が政府答弁で明確にされました。しかし、法人化後の十六年間、国が提示した方向に沿って策定されてきたのが実態です。しかも、政府は、二〇二二年度からの第四期中期目標期間に向けて、中期目標に記載すべき内容をあらかじめ大綱で示し、それに基づく中期目標、中期計画を各大学に策定させようとしています。  こうした下で、中期計画の教育研究の質の向上と業務運営の改善及び効率化にこれらの実施状況に関する指標の記載を求めることは、大学が主体的に作成するべき中期目標、中期計画に国の大学改革の意向を押しつけ、大学の自主性、自律性、多様性を一層形骸化させることにほかなりません。  法案によって、学長選考・監察会議及び監事の権限が強められることで、中期計画に盛り込まれる指標への達成状況が、学長選考・監察会議や監事監査を通じて日常的にチェックされることになります。これは、国による大学改革の推進に学長を従わせるための牽制・監視機能の強化にほかなりません。  この間の政府の施策によって、学長の権限強化が進められてきたことが、学長の専横的な大学運営を助長し、教職員や学生と学長や大学執行部との信頼関係を損なう事態を様々生じさせています。教職員意向投票、学長の選考、解任のプロセスに教職員や学生の意見を反映させる仕組みなど学内民主主義システムこそ求められます。  指定国立大学法人に対して、経済的リスクが高い大学発ベンチャーへの出資を可能としている点も問題です。経済的リスクが高いこと等から、これまで出資対象とはされなかった大学発ベンチャーへの出資を指定国立大学法人について可能にすることは、大学に高いリスクを負わせるものであり、大学の主たる業務である教育研究活動の安定的運営が損なわれかねません。  また、経営効率を高めるための法人統合は教育機会提供に影響を及ぼしかねません。  以上、反対の理由を述べ、討論を終わります。

【議事録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 国立大学法人法改正案について伺います。
 萩生田光一文部科学大臣にまず伺います。
 本法案は、国立大学法人が作成する中期計画の記載事項の、教育研究の質向上と業務運営の改善、効率化について、目標を達成するために取るべき措置の実施状況に関する指標、これを記載することを求めるものとなっております。
 中期計画の前提となる中期目標は、国立大学法人法第三十条で文部科学大臣が定めることとされていますが、この規定は、なぜ、教育、研究を中心とする大学業務の中期目標を文部科学大臣が定めるのか、それは憲法第二十三条が規定する学問の自由、そして大学の自治を侵害するものだと、国立大学法人法制定時の国会審議で大問題になりました。
 当時の遠山敦子文部科学大臣は、中期目標の実際上の作成主体は国立大学法人とも解されるとする旨を繰り返し御答弁されました。二〇〇三年六月五日には私にもそう御答弁をされ、各党の質問にもそのように繰り返し御答弁されてまいりました。
 萩生田大臣に確認をさせていただきますが、これは今も変わらない考え方だということでよろしいですね。
○萩生田国務大臣 法律上、国立大学法人の中期目標は国が定めることとされていますが、法制定当時の国会における御審議や附帯決議などを踏まえ、国立大学法人の自主性、自律性を尊重する観点から、各法人が中期目標の原案を作成することとしており、その取扱いについては第四期中期目標期間に向けても変わらないものと認識しております。
 なお、お尋ねの当時の遠山大臣の答弁においては、中期目標について、国立大学法人が実際上作成主体になるとも解されるものであるが、高等教育全体の在り方あるいは財政上の観点などから文部科学大臣も関わって、両者が十分に意思疎通を図りながら協力をして中期目標を形成していく旨が述べられておりまして、その趣旨に沿って、文科省と各法人が十分に意思疎通を図りながら中期目標を作成していきたいと考えております。
○畑野委員 その点については、附帯決議でも、国立大学法人が決めることを配慮する、十分配慮していくということが言われてきたわけでございます。大臣もお認めになったように、中期目標の実際上の作成主体は国立大学法人とも解されるとおっしゃっておられたという御答弁だったと思います。
 さて、昨日の参考人質疑で、光本滋参考人は、法人化後の経過の中で、実際には、各大学の中期目標原案作成に先んじて、法人評価とは無関係に文部科学省から素案が示され、それに基づいて各大学の原案が作られてきたなど、中期目標の作成主体は各国立大学法人であるという国会答弁を覆すような事態が実際には進められてきたことを明らかにされました。
 昨年十二月二十三日に国立大学法人評価委員会総会に示された第四期中期目標期間における国立大学法人中期目標大綱(仮称)(素案)では、中期目標に関する留意事項に、(素案)から、自らの目指す方向性を踏まえ、第四期において特に改革を進め、特色化を図る項目を選択し、各法人の中期目標としてくださいとあります。
 伺いますが、この大綱は、第三期中期目標期間の国立大学法人評価の四年目終了時評価がまだ出ておりませんこの段階で、何を根拠に出されたんですか。
    〔原田(憲)委員長代理退席、委員長着席〕
○伯井政府参考人 お答えいたします。
 中期目標につきましては、御指摘いただいていますように、国立大学法人の自主性、自律性を尊重する観点から、各法人が原案を作成するという取扱いとしておりまして、従来、夏頃に御提出をいただくということとしております。
 その上で、第四期の中期目標期間に向けましては、国が国立大学法人に求める役割や機能を明確化する観点から、各法人の原案作成に先立って、国立大学法人総体として求められるものを、中期目標大綱(仮称)を示すということとしているところでございます。
 国立大学法人評価委員会による四年目終了時の評価結果については本年六月頃に決定するという予定でございますが、中期目標の原案策定に向けた各法人における検討の時間を十分に確保するということ、それから、各法人の意見を中期目標大綱自体にもしっかり反映していく必要があるといった観点から、今御指摘いただいた、昨年末に各法人に対して中期目標大綱の素案をお示ししたところでございます。この素案は、法人評価を実施する国立大学法人評価委員会の意見に加えまして、これまでの審議会の答申、各種報告書も参考に作成したものでございます。
 現在、各法人の意見を十分聞きながら、引き続き検討を進めているものでございます。四年目終了時の評価結果も踏まえつつ、各法人の意見というのも十分反映して、夏頃を目途に中期目標大綱を示したいというふうに考えております。
○畑野委員 つまり、六月から、これから出るものなのに、四年目終了時評価も示されないうちに文部科学省が勝手に方向性を示すと。これは、先ほど萩生田大臣もお答えになりましたけれども、二〇〇三年の、さきの国会答弁を覆すやり方だと言わなくてはなりません。そういう方向で第四期中期目標期間でも進めようとしているというのは、これは大問題だと思います。
 そこで、萩生田大臣に伺います。
 中期目標の実際上の作成主体は国立大学法人との国会答弁の立場であるわけですから、各大学への大綱の押しつけはやめるべきだと思いますが、いかがですか。
○萩生田国務大臣 押しつけるつもりは毛頭ございません。
 国会答弁とおっしゃるなら、さっき申し上げたように、遠山大臣は、文科大臣も関わって、両者が十分に意思疎通を図りながら協力して中期目標を形成していくというのが基本的な姿勢でありますので、大きな方向性をお示しして、あとはそれを各大学法人がオーダーメイドで、まさに地域性だとか専門性だとか得意分野なんかを示しながら作っていただくのが中期目標でございますので、何か、全ての国立大学法人に、文科大臣がこっちに向かって走っていけみたいな、そういうことを目指しているのではないということだけは、そういう答弁をしておけば安心していただけるんだと思いますので、お答えしておきたいと思います。
○畑野委員 何が主なのかという話なんですよ。
 先ほども、応援していきたいという話をされていましたけれども、やはり学問研究の中身というのは、当時、それはもう大臣だって私だって、みんな分からない、だからそれは大学に任せましょうということになった。そして、業務も、大学の教育、研究と関わるんですよ。だから、それは主体的には大学そのものが決めましょうと、そういう議論の帰結だったわけです。
 それで、今大臣おっしゃいましたけれども、大綱の押しつけはやめるべきなんだけれども、大綱そのもの自身が押しつけになっているんですよ。これは私は大問題だと思います。
 今日、資料にお示しいたしましたけれども、この折り畳んであるもの、これは、国立大学法人の第四期中期目標、中期計画の項目等についての案です。
 最初に、二〇二〇年十二月二十三日の国立大学法人評価委員会総会に出されたものが左にあります。これに対しては、細か過ぎると国立大学協会からも批判が今年の一月に出たと。それで、その右側に、今年の二月二日に追補ということで、これが赤字で右側に書き加えられているんです。御覧ください。
 そこには何て書いてあるかというと、下のところの赤字の、2の中期目標の五のところ、これが追加されていて、その中で何て書いてあるか。「原則として、大綱の項目に記載されている内容の削除はできませんが、各法人の強みや特色、社会的役割に応じて、大綱を超えた意欲的な中期目標を設定するために、削除等の修正が必要な場合は個別に御相談ください。」と。こんなことまで、頑張ったものについてはいいですよ、いや、これはちょっとできませんというのは認めませんよみたいな書き方をしているじゃありませんか。
 ですから、大綱の中身は最低基準なんですよ。これを下回るのは許されないと。こんなようなことで各大学の中期目標を縛ることはやめるべきだと。大臣は押しつけるものじゃないということですが、大綱そのものをやめるべきだということを申し上げておきたいと思います。
 この大綱の出どころですが、昨年十二月にまとめられた、国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議の最終取りまとめです。ここで言う戦略的経営と、今年三月二十二日の経済財政諮問会議に萩生田大臣が御提出された資料、世界と伍する研究大学を目指すための大学改革との関連について伺いたいと思います。
○萩生田国務大臣 国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議においては、国と国立大学法人との関係や経営裁量の拡大を可能とする規制緩和策等について議論が行われ、昨年十二月の最終取りまとめにおいて、国立大学法人の戦略的な経営実現に向けて、今回の法改正事項を含む多岐にわたる国立大学法人改革提言を報告いただきました。
 同取りまとめの中では、今回の法改正につながる第一弾の内容に加え、第二弾の方向性として、大学ファンドの創設の動向も踏まえつつ、更なる国立大学法人改革の実現に向けて、大学ファンドを受けるにふさわしいガバナンスの構築や特例的な規制緩和等について引き続き検討する必要性について提言されております。
 三月の経済財政諮問会議に提出した資料は、このように、第一弾の法改正の内容と、この度の大学ファンドの創設の動向を踏まえた第二弾の国立大学改革の方向性を併せて説明したものであります。
○畑野委員 重大な御答弁がございました。資料の二枚目です。
 つまり、大学ファンドも含めて進めよう、規制緩和も進めようということですよね。大学ファンドでの運用益で世界に伍する研究大学への成長を後押しするということですけれども、これはもう前の議論でも申し上げましたけれども、リスクの伴う賭けと言わざるを得ないわけです。
 日経新聞も、一月十六日付社説で、「低金利の時代、公的資金を投じ、運用益を確保するにはリスクも伴う。疑問が拭えない政策手段だ。」と報じました。
 モデルにしている年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFも、二〇一九年度は八兆二千八百三十一億円の運用損を出しましたとこの間も申し上げました。農林水産省の廃止予定の官民ファンド、農林漁業成長産業化支援機構も、最終欠損は百二十億円の見通しだと言われております。
 文部科学省自身も、リスク運用の停止があり得るとしているわけです。安定した支援策になる見通しはない、このようなばくちのような道に無理やり引きずり込むようなことは、私はやめるべきだと申し上げたいと思います。
 昨日の参考人質疑で、石原俊参考人から、この間、国立大学のガバナンス強化の名で、教学と経営の両方のトップである学長権限が強化されてきたことが、大学の現場では経営による教学の支配という形となって表れているとの指摘がなされました。戦略的経営や世界に伍する研究大学を目指すための大学改革は、これまで以上に経営による教学への支配を強化するものにほかならないと指摘しなければなりません。
 こうしたガバナンス改革による学長と学長選考会議の権限強化が、大学執行部と教職員や学生とのあつれきや対立を様々に引き起こしているということは、昨日の参考人質疑の中でも明らかにされましたし、報道もされてきました。
 多くの大学で、教職員による意向投票が廃止又は位置づけが軽視され、あるいは意向投票で劣位だった候補者が学長に選任される、また、学長の再任期間の制限を学長選考会議の決定で撤廃し、理論上は一人の学長が長期にわたりその地位を維持することを可能にするなどの問題です。
 私は、一つだけ今日は例を挙げておきたいと思います。この間、義務教育の教育条件の整備のことを大臣とも少人数学級を始めやってきましたので。
 実は、四月十九日に、「緊急オンライン院内集会:国立大学はどこへ行く?―国立大学法人法改正案の問題点を考える―」という集会がございまして、そこでの資料を拝見させていただきました。一つだけ例を挙げます。福岡教育大学の例です。
 二〇一三年の学長選考で、百二十三票で一位だった候補者ではなく、八十八票の二位だった候補者が再選された。その後、意向投票も廃止され、この学長が実質的に学長選考会議の委員全てを指名するため、学長を中心に、学長に逆らわない少数の者が、予算、人事、教育課程、カリキュラム編成等を掌握し、決定するようになった。二〇一六年入学生から、初等教育教員養成課程の教科選修制が廃止され、小中の複数免許取得が困難になるなど、卒業生のキャリアに影響を及ぼしている。
 ここでは、教育界のこれから進めようという動向には反する形での教育組織、カリキュラム改革が、教授会の反対、否決にもかかわらず強行された結果だというふうに厳しく言われています。
 その他もいろいろありますけれども、学長権限を強化してきた結果引き起こされているこうした大学の混乱、ガバナンス崩壊とも言える状況を、どのように大臣は受け止めていらっしゃるのでしょうか、伺います。
○伯井政府参考人 学術研究、高等教育をめぐる様々な課題、あるいは地域社会や産業界等から大学への期待などに対応するため、私どもとしては、学長のリーダーシップに基づき大学改革を推し進めていくということの重要性は変わらないというふうに考えております。
 ただ、今回の改正案は、学長がリーダーシップを発揮して大学改革を進めるに当たって、例えば、学長と教職員との意思疎通に大きな問題があって法人運営に支障を来しかねないような場合など、問題が起きた場合の自浄作用が大学の中で働くようなチェック機能を強化することが必要であるという観点に立って、各大学法人において、こうした仕組みを十分に機能させ、学内外のステークホルダーから信頼されるガバナンス体制を構築していただきたいというふうな考えで、様々な改革を提案しているものでございます。
○畑野委員 大臣に聞きますけれども、今回の法改正では、学長選考会議の委員に学長を加えることができないようにするなど、学長選考・監察会議の学長に対する牽制機能を強化するというんです。
 しかし、学長が選んだ学内、学外委員で学長選考・監察会議が構成される現状は変わらない。不正行為や法令違反を行う学長を選んだ学長選考会議は一体誰が牽制するのかということになるわけです。
 昨日、石原参考人も指摘されましたが、学長の選考、解任のプロセスに教職員や学生の意見を反映させる仕組みやリコール制度の新設など、学長や学長選考会議を牽制する学内民主主義のシステムが不可欠ではないかという意見でした。私は大事だと思いました。
 そして、学長選考に当たって、意向投票の結果は最大限尊重されるのは当たり前だと思うんですが、いかがですか。
○萩生田国務大臣 国立大学法人においては、学長の選考手続や方法について、学長選考会議が自らの権限と責任において主体的に判断し、定めるものであり、学長の選考や解任の申出に係る手続についても同会議において検討すべきものだと思います。
 このため、例えば、今御提案のあったリコール制度ですとか学長の再任回数の上限の設定などについても、それぞれの法人において、学長選考会議における議論に基づき自主的に判断されるべきものだと私は考えております。
 確かに、あらゆるステークホルダーの皆さんの信頼を得るということはすごく大事なんですけれども、例えば、それを意識して、学長が本来の経営業務じゃなくて職員の人気取りに走るようなことはあってはならないと思うんですね。必ずしも、やはり多くの支持を得ている人が経営能力にもたけているかというと、これはまたなかなか皆さんが知らないところで、政治家も、先生、同じですよね、得票数に限らず、やはりそれは仕事をさせてみないと、それぞれ得意分野というのは違うわけですから。
 私は、そういう意味では、必ずしも絶対値で数字だけを見るのではなくて、やはり全体を見渡して、多くのステークホルダーの皆さんから支持をされるということが大事なんだと思います。
 仮に、先生が心配しているような独裁的な学長が出てきて、何か自分の息のかかった子分みたいな者ばかりがその周りにいて風通しが悪いということであれば、それをきちんとやはり監事が申立てをしていただける新しい仕組みをつくったつもりでおりますので、そこは是非、それぞれの学校が自浄能力をしっかり持ってもらうということが大事だと思いますので、その自主性を尊重していきたいと思っております。
○畑野委員 東京大学でもいろいろとあったわけですけれども、四月に東京大学の第三十一代総長に就任された藤井輝夫氏は、新聞のインタビューでこのように述べられています。「大学はトップダウンで号令をかければ動く組織ではない。多くの皆さんと対話し、考えを共有していきたい」と述べていらっしゃるんです。大学人自らがこうした認識を持っていらっしゃるわけですから、それにふさわしい仕組みをつくるべきだと思います。
 二〇一四年の法改正と通知によって、本当に大混乱が起きている、こういうのは改めるべきだということを申し上げておきます。
 法案は、中期計画に記載する、教育研究の質の向上に関する目標を達成するための取るべき措置と、業務運営の改善及び効率化に関する目標を達成するため取るべき措置の双方に、これらの措置の実施状況に関する指標を加えることとしています。
 この指標は、中期目標及び中期計画に基づき実施される大学の教育、研究に関する業務について実施される監事監査や、学長の業務執行状況について恒常的に確認を行う学長選考会議において、業務執行状況の評価に活用されることになるのでしょうか。
○伯井政府参考人 学内の校務に関する決定権を有する学長がその結果について責任を負うというのは当然でありますので、文部科学省では、学長の業務の執行状況について、学長選考会議や監事等が恒常的に確認すべき旨をこれまでも通知をしてきております。
 このため、学長選考・監察会議や、監事による業務執行状況の確認過程において、中期計画に記載された指標が評価の材料として用いられることは、各法人の学長選考・監察会議等の判断によってはあり得るというものと考えております。
○畑野委員 指標の達成状況が芳しくなければ、監事監査で法令に反すると判断されることもあり得るということですか。確認。
○伯井政府参考人 今回、法律上は、中期計画において指標を記載することを義務づけておりますが、その達成がなされなければ法律違反になるというものではございません。
○畑野委員 もう一つ、中期目標、中期計画は、中期目標期間終了後の法人評価によって運営費交付金の配分に活用されることになっています。
 一方、大綱(仮称)(素案)の、留意事項では、指標の例示として若手教員比率が挙げられていますが、これと同様の指標が、運営費交付金の基幹経費における成果に係る客観・共通指標にあります。
 そこで伺いますが、今回中期計画に盛り込まれる指標は、運営費交付金の成果に係る客観・共通指標とリンクするのでしょうか。
○伯井政府参考人 今回改正によって盛り込もうとしております中期計画に掲げる指標は、各国立大学法人が自らの判断で設定するものでございますので、運営費交付金における成果に係る客観・共通指標とはリンクするものではない。すなわち、客観・共通指標というのは、相対的に評価して、まさに客観、共通で各年度の配分に活用する仕組みでございまして、自ら設定する指標というものとはリンクしないというふうに考えております。
○畑野委員 ちょっと今の御答弁ではよく分かりかねるところがあるんですが。
 しかし、今回の法改正で中期計画に指標が追加される、法律になるわけですよ。そして、学長選考・監察会議と監事の権限が強化されるということですから、実際、これはどうなっていくかというと、学長の業務遂行状況が指標への達成度として可視化される。政府が進める大学改革に従わせるための、強力な圧力になって作用することは、これは明らかだと思います。
 なぜなら、三月二十二日の経済財政諮問会議では、有識者議員から大学改革の進捗が遅いと批判されて、大学のガバナンス強化が強調されているんですね。まさに経済界の要望に沿った法改正じゃないか。このようなやり方はやめるべきだというふうに私は思います。
 二〇〇三年の、「国立大学の法人化に当たっては、憲法で保障されている学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、国立大学の教育研究の特性に十分配慮するとともに、その活性化が図られるよう、自主的・自律的な運営を確保すること。」ということが附帯決議に載っている。この立場を少なくとも守るべきだということを重ねて申し上げます。
 最後に、先ほど議論にもなりました、文科省が四月十六日に、「機関紙「しんぶん赤旗」による報道に関する事実確認について」という文書を公表したことについて伺います。
 藤原誠文部科学事務次官が亀岡偉民元文部科学副大臣と学校法人豊栄学園の清水豊理事長との会合に同席したという趣旨の報道について事実確認が行われたということです。その中で、飲食費については、亀岡議員が藤原次官の飲食に要した費用を負担したと認められるとしています。
 伺います。亀岡元副大臣はいつ、幾らその現金を支払ったのか、その事実や根拠となる領収書などの客観事実は確認したのでしょうか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
 亀岡議員に確認しましたところ、報道のあった二回の会合については、その都度、飲食費総額を確認の上、清水理事長に対し、清水理事長分を除く参加者の飲食費用として、先生の記憶の限りでは四万から六万円程度の現金をその場で手渡したということでございました。
 文科省には領収書等の提出まで亀岡議員に求める権限はございませんが、念のため亀岡議員にお聞きしてみたところ、支払いは清水理事長が一旦まとめて行っており、そもそも領収書は自分の手元にはないということでございました。
○畑野委員 そんないいかげんなことで、調査にならないじゃありませんか。
 清水理事長は、亀岡議員から受け取った飲食代を理事長個人の口座に入れており、赤旗の報道を受けて学園に返したと説明されています。
 本当に食事を行ったその日に支払いを受けたのかどうか疑わしいんですが、学園側からは資料は確認されていますか。
○増子政府参考人 お答え申し上げます。
 先生今御指摘のとおり、清水理事長は、亀岡議員から受け取った飲食代を理事長の個人の口座に入れているということを受けて、学園に返済したと説明があったと聞いております。
 ただ、御指摘の点につきましては、清水理事長と学校法人側の経理に関することでございますので、なかなか文科省として直接関与する立場にはないというふうに考えております。
○畑野委員 当時、大臣官房長の職にあった藤原次官は、当該学校法人と利害関係者だと、該当しているということは、文科省、お認めになりました。ですから、きちっとそういうのを調べないと駄目ですよ。それも、領収書も何も確認していないということです。
 これは何が問題になるかというと、これはまた次、機会があれば質問しますけれども、今回の文科省の報告書で、副大臣室で、補助金の担当者が清水理事長らに事業の概要説明をしたという事実が明らかになったんです。初めてです。何でこんなことが行われるのか。これが接待の対価であったとすれば重大な問題になるからなんです。
 私は、事実を明らかにするために、引き続き、資料の提出を求めるよう、調査を求めたいと思います。
 大臣、いかがですか、最後に。
○萩生田国務大臣 要するに、供応目的で接待をしたという事実があるんだとすれば更に調査をする必要があるんですけれども、先ほど、私も藤原次官からもきちんと聞き取りしました。また、亀岡さんからも謝罪も受けました。
 先生の政党はどうか分からないんですけれども、うちの政党は、飲んでいる席で急に役人を呼びつけたりする、そういう体質があるんですよ。これはよくないことです。それが何か、権威づけみたいにされているとすれば、それはよくない政治風土だと私は思いますので、我々全体も反省したいと思いますし、そこへ、さっき申し上げたように、あらかじめ同席をしろと言われて宴席へ出たんだとすれば、それは食事代が幾らなのか、こういうことは考えて、ちゃんと報告しなきゃならないんですけれども、もう火を消した後の焼き肉屋さんで、自分の分だけもう一回火を入れて焼くという役人はいないですよ。
 したがって、もう本当に、さっきも申し上げたように、席が用意していなくて、ああ、本当に来たのかといってみんなが脇を空けて、座布団を一枚間に入れて、そこに座れと言われて、散らかったキムチを食べた、そういう程度で接待だというのはちょっとやはり行き過ぎだと思うので、そこは私は職員たちを信じたいと思いますし、だからといって、そういう機会をどんどんどんどん失っていくことは、逆に、さっき申し上げたように、外部の皆さんとの感性を磨く意味では必要な一点だと思います。
 しかし、そこには、国民の皆さんから誤解を招くような、そういうやり取りはあってはならないということはきちんとピン留めした上で、この調査はこれで終わりにしたいと思っています。
○畑野委員 終わりにしないで、やはり問題ですよ。昼間に飲まずにやればいいんですよ、しっかりと。残業にもなるし、夜になったら。そういうことをきちっとできないようじゃ駄目だと。もう国民からの批判はすごいですよ。
 そのことを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。