無形文化財に国の登録制度を設け、地方自治体の登録制度を法律に位置づける文化財保護法改正案が8日の衆院本会議で採決され、全会一致で可決・通過しました。

 畑野君枝議員は7日の衆院文部科学委員会で、2015年に仙台市で開催された国連防災世界会議を通して、東日本大震災の復興の過程で住民が地元の祭りを復活させるなど、地域に根差した文化遺産が復興やコミュニティー再建に力を与えることが再認識されたことを紹介。文化遺産の意義についてただしました。

 萩生田光一文科相は、「非常に大きい」と答弁しました。畑野氏が、国内で唯一、系統的に無形文化財の調査研究、保存を担う東京文化財研究所の運営費交付金が削減されてきたことを取り上げ、「研究所の予算増、定員増を図るべきだ」と求めたのに対し、萩生田文科相は「努力したい」と述べました。

 畑野氏は、三味線の製造技術の継承が危機的状況にあると指摘。萩生田文科相は、文化庁の「選定保存技術への指定を検討している」と答えました。また畑野氏は、自治体の文化財保護に対する財政支援の強化、専門職員や学芸員の体制強化を求めました。

(しんぶん赤旗2021年4月16日付)

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【議事録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 文化財保護法改正案について伺います。
 前回の委員会の冒頭に、萩生田光一文部科学大臣から発言がございました。提出された法案に関わり誤りがあったということです。国民の皆さんに関わることですので、しっかりと国民の皆さんに報告するよう求めておきます。
 さて、初めに、文化財保護法改正案の趣旨について萩生田大臣に伺います。
○萩生田国務大臣 書道や茶道、華道、食文化を始めとする生活文化について、近年、文化芸術基本法に位置づけられたことも踏まえ、無形文化財やユネスコの無形文化遺産にしたいとの要望が寄せられるなど、無形の文化財の新たな保護措置を検討すべき状況になってきました。
 また、地域のお祭りなどについて、過疎化や急速な少子高齢化などによる担い手不足などの理由により、存続の危ぶまれる事態が増えているとの指摘があり、さらに、今般の新型コロナウイルス感染症の影響を受けて公開の機会が減少したことなどにより、一層厳しい状況になっております。
 今回の文化財保護法の改正は、文化審議会の企画調査会の報告を踏まえ、第一に、無形文化財及び無形の民俗文化財において、先行する有形文化財等の制度を参考にしながら、従来の指定制度に加えて登録制度を創設するものです。
 また、平成三十一年四月に施行された文化財保護法改正により、文化財保存活用地域計画が制度化され、各地域の文化財の把握が進む中、地域の実態に合わせた多様な保存、活用の仕組みが求められています。
 このため、第二として、現在は条例等により独自に実施されている地方登録制度を法律に位置づけるとともに、地方登録された文化財の国の登録文化財への提案制度を創設をし、地域の文化財保護の取組を促進し、あわせて、国、地方の文化財保護制度の体系的整備を図るものでございます。
○畑野委員 今大臣も御答弁されましたが、地域に根差した無形の文化財を保護する、これは大事だと思います。
 第三回国連防災世界会議が二〇一五年三月十四日から十八日まで宮城県仙台市で開かれ、仙台防災枠組二〇一五―二〇三〇が採択されました。大事だったと思うんです。この世界会議の枠組みの中で、仙台防災枠組に文化遺産をどのように統合し得るかを検討した国際専門家会議である東京戦略会議の開催を始め、東京、仙台、それぞれでシンポジウムが開催されました。文化遺産と防災の関連性に関する議論が活発に行われたと伺っております。
 その中で、特に、東日本大震災からの復興過程でのコミュニティーの再建との関連で、文化遺産の持つ意義が再確認されたと伺っております。その具体的な内容について伺います。
    〔委員長退席、原田(憲)委員長代理着席〕
○矢野政府参考人 お答えいたします。
 東日本大震災におきましては、文化財に関しても、文化財保護法上の指定等を受けた文化財だけ、これに限っても七百件以上が被災するなど、極めて大きな被害がございました。
 一方で、文化庁といたしまして、独立行政法人国立文化財機構も含め、被災地域における文化財復旧の取組に寄り添う中で、文化財、特に無形の文化財が復旧復興に大きな力を持っていることを再確認させられたところでございます。
 例えば、福島県の女川町の各浜には獅子振りが伝わっておりますけれども、震災により道具も全て流され、演者の方も亡くなられました。しかしながら、被災後、獅子振りで地域を一つにと、女川獅子振り協議会を組織、各所からの支援を受け、道具をそろえ、震災の年の八月には獅子振りの披露会が開催されております。獅子振りの周りには笑顔があふれたといいます。
 また、千葉県のこれは香取市の例でございますが、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定される佐原という地域がございます。震災による地盤の液状化により、都市インフラに深刻な被害を受けました。一方、佐原には、国の重要無形民俗文化財に指定される佐原の大祭が受け継がれており、甚大な被害を受けてもなお、何があっても祭りだけはやるんだという地域住民の意欲から、祭りの山車を通せるような復旧工事を早め、震災の年の夏には祭りの実施にこぎ着けております。
 これらの事例は、地域において受け継がれる無形の民俗文化財がいかに地域住民の心のよりどころになっていたか、こういうことを示すものだと考えているところでございます。
○畑野委員 今、東日本大震災から十年を迎えた今年、当時亡くなられた方もいらしたということで、改めて哀悼の意を表したいと思います。
 先日、東京文化財研究所に伺いまして、大変学ばせていただきました。
 二〇一五年三月十一日から十三日に開催された東京戦略会議では、当時の文化庁文化財部の齊藤孝正文化財鑑査官、今回伺いましたら、現在、東京文化財研究所の所長をされておられました、その齊藤さんが、文化遺産と地域社会のレジリエンスという基調講演を行っています。
 例えば、宮城県気仙沼市で、津波で市街地は壊滅的な被害を受けたが、地域にある一景嶋神社の鳥居を再建し、六か月後には例大祭が行われたことや、また、今次長も御報告されましたが、地震の揺れと液状化の被害が国の重要伝統的建造物群保存地区に及んだ千葉県香取市では、地域が一体となって復興祈願をかけて恒例の祭りが実施されたことなどが紹介され、無形の遺産が心の復興を支え、有形の遺産が記憶の継承を支えながら、生活の再建や町の復興に活力をもたらす、文化は、被災地域の人々がきずなを取り戻し、生活再建に取り組む活力となるもの、そのためには、生活に根づく様々な遺産に目を向け、これらを地域や国の防災計画に位置づけながら守っていくことが重要と述べておられます。
 こうした議論を受けて取りまとめられた東京戦略会議の結論文書、国際専門家会合「文化遺産と災害に強い地域社会」勧告は、その基本的な考え方として、文化遺産を次のように位置づけています。文化遺産は、コミュニティーの強さやレジリエンスの源とみなせるものであるがゆえ、コミュニティーが全ての局面、例えば、計画、減災、災害時対応、復旧で災害に取り組むことを助ける有用なツールとなり得る、文化遺産は、単なる災害時の救済対象なのではなく、災害復旧や、更に重要なこととして、持続発展のための効果的なツールになり得る。
 こうした認識は、文化遺産が、単に守られる対象にとどまらず、守ることを通じてその地域の人々に生きる力を与える、積極的な意義を持つものであると私たちに問いかけていると思います。
 萩生田大臣は、文化遺産の持つこうした意義について、どのように御認識されていらっしゃいますか。
○萩生田国務大臣 今先生から御紹介がありましたように、災害の復興において、地域において伝承され、親しまれてきた文化財が果たす役割というのは非常に大きいと考えております。
 東日本大震災においては、文化財について甚大な被害があった一方で、先ほど次長も紹介しましたが、谷田川先生のお地元の香取市の佐原の大祭ですか、こういったものを含め、地域の祭礼や行事が民俗芸能や復旧復興を牽引し、被災した住民の皆さんを元気づけてきたと認識しております。
 古くは、私の地元も、戦後、ちょうど夏に終戦を迎えて、秋口にどこからともなく始まった祭りのおはやしが皆さんを勇気づけて、そして、祭りをやろうということから町の復興が始まったということを先輩たちから聞いたこともあります。
 私、東日本の震災直後は担当が福島県でございまして、何度もお邪魔していたんですけれども、まだ行方不明者が大勢いたり、災害のがらをどうするかというような議論をしている会議のときに、馬追をどうするかというのをすごくみんなが真剣に話していて、一体何の話をしているんだろうなと。馬追って何ですかと聞いたら、相馬野馬追というお祭りを今年やるかどうかというのを真剣に皆さんがその会場で会議をしているのを見て、ちょっとびっくりしたんですね。そんな余裕あるのかなと思ったんですけれども、しかし、それはやはり地域の皆さんを奮い立たせる大きな要因であったなと、後になってすごく肌で感じたところでございます。
 有形無形の文化が持つそういった力というものは、説明に限りがある、超える大きな力を持っているんだと思いますので、文化の復興は心の復興であり、地域や地域の復興のよりどころとなるものであることを常に意識しながら、文化財行政に取り組んでまいりたいと考えているところです。
○畑野委員 大事な御答弁でした。
 我が国の文化財保護は、こうした国際的な議論の到達点を踏まえて取り組んでいく必要があると思います。
 国内で唯一、系統的に無形の文化財を調査研究し、記録の保存を担っているのが、先ほど御紹介した東京文化財研究所です。第三回国連防災世界会議でも重要な役割を果たされました。
 そこで伺いますが、独立行政法人文化財機構東京文化財研究所となった二〇〇七年度と今年度の研究所に対する運営費交付金は、それぞれどうなっていますか。
    〔原田(憲)委員長代理退席、委員長着席〕
○矢野政府参考人 ちょっと、お答えする前に訂正させていただきたいんですけれども、先ほど福島県の女川町というふうに申し上げましたけれども、宮城県の誤りでございますので、大変失礼いたしました。
 御質問でございます、二〇〇七年度と今年度の独立行政法人文化財機構東文研の運営費交付金についてでございます。
 人件費を除いた額でございますが、二〇〇七年度は五億七千万円、二〇二一年度は三億八千六百万円となっているところでございます。
 なお、独立行政法人国立文化財機構全体で見ますと、人件費を含め、二〇〇七年度九十億四千万円、二〇二一年度九十億五千万円となっているところでございます。
○畑野委員 先ほど、文化財の保護に関する国際的な認識の発展について触れました。大臣も、その重要性について答弁されました。
 今回の文化財保護法の改正は、無形の文化財の登録制度を設けて、地方の登録制度も法的に位置づけて、幅広く文化財を保護しようとするものであります。
 その点では、東京文化財研究所を始めとする国立文化財機構が果たす役割がますます重要になってくるというときに、国立文化財機構の運営費交付金も微増にとどまり、東京文化財研究所の運営費交付金は削減されているということですから、萩生田大臣、法改正の内容にふさわしく、研究所の予算増、定員増など、必要な予算を確保するべきではないでしょうか。
○萩生田国務大臣 東京文化財研究所を設置、運営する独立行政法人国立文化財機構の運営費交付金につきましては、前年度に比べ四億円増加をしているとともに、人員につきましても、この度、八人増加をさせていただきました。
 独立行政法人国立文化財機構では、設置する各博物館、研究所の機能を相互に連携させることなどにより、総合的に文化財の保存、活用に取り組んでいるところです。
 引き続き、貴重な国民的財産である文化財の保存及び活用を図り、次代に継承する取組を充実していくためには、先生御提案のように、しっかり予算を増やして、また人員も増やして対応していくことが望ましいと私も思いますので、頑張ります。
○畑野委員 是非、大臣、頑張ってください。
 本改正案で、国による無形の文化財の登録制度が創設されます。国内には、地域の祭りや郷土料理など、放置しておくと消滅などの可能性が高い無形の文化財が数多く存在します。また、無形の文化財は人から人へと伝えられ継承されていくものですので、過疎化や少子高齢化といった担い手不足により存続が危ぶまれるものも多くあります。こうした現状にある無形の文化財について、地方登録制度をつくり、幅広く文化財を保護しようということです。
 そこで、私は、まず、今年度の予算ではどのくらい無形文化財、無形民俗文化財が登録されると見込んでいるのか、また、国の支援はどのようになるのか、伺います。
○矢野政府参考人 お答え申し上げます。
 あくまでもこの法案を国会においてお認めいただいた場合でございますけれども、令和三年度の無形文化財と無形の民俗文化財の新規登録は合わせて、これは初年度でございますので五件程度と見込んでおります。
 それらへの支援として、記録の作成、伝承活動、普及、広報等のための費用を補助するということとしておりまして、一件当たり百五十万から二百万円程度、合計約九百万円ぐらいを想定しているところでございます。
○畑野委員 これは法律が通ったことということですけれども、これが一回ということで、今後はまた検討ということになるわけですよね。はい、分かりました。
 それで、現在、地方の制度としては、法律に規定されている指定制度や条例に基づく独自の登録制度がありますが、それらに対する国の支援はどうなっているかということと、また、今回の法改正で地方登録制度が法律に規定されることになりますが、改正案の内容を議論してきた企画調査会では、登録となると規制がかかるので、特別交付税などの手厚い支援がないと登録に当たって保有者の理解が得られないなど、国の財政支援の在り方についての意見も出されていました。
 地方登録制度が法律に規定されることで、地方への財政支援の仕組みはどう変わるのか、伺います。
○矢野政府参考人 お答えいたします。
 現行制度上は、地方登録について、件数に応じて地方交付税措置が講じられているところでございますが、地方登録制度は各地方公共団体が自らの判断で実施するものでございまして、指定登録制度と同様に国庫補助による支援を行うことは、現在のところは想定していないところでございます。
 地方が文化財を積極的に登録していく取組を応援していくため、今後、制度の実施の状況も見つつ、法案が成立した際には必要な支援について適切に検討してまいりたいと考えております。
○畑野委員 これは法律が通れば来年度から実施されるという制度だと思うんですけれども、地方登録制度を法律に位置づけて、地域の無形、有形も含めてですけれども、文化財を保護、促進をしようというのならば、国による財政支援を抜本的に強化する必要があるというふうに思うんです。
 大臣に一言だけ御認識を伺いますけれども、ちょっと、私もいろいろと地域を回って伺ってきたので、それを御紹介したいと思います。神奈川県内なんですが、川崎市を伺ってまいりました。
 小向の獅子舞は、県指定無形民俗文化財に指定されております。一七〇〇年代にそのお宅から上人が出られて、それ以降続けられてきたと言われております。獅子舞の獅子頭なんですけれども、伺いましたら、羽根がオナガと違う、でも何だか分からない、こういうのも調べたいと。あるいは、十年に一度、この羽根を全部取り、そして漆を塗る、そういうことも必要になっていると。その後継者が、地域の子供たちが参加するんですが、中学生になると部活などでやめてしまう、今、お孫さんは何とか引き継いでくれそうだという悩みを伺いました。
 それから、稲毛神社は、川崎山王祭り宮座式が県選択無形民俗文化財に選択されています。これは、専任の神主がいない地方の神社で氏子の代表者が神事を行うという中世で見られた制度を引き継いで、関東地方では非常に珍しいということです。十年に一度の装束の新調も、今、宮司さんを始め神社が負担をしていらっしゃるということでした。
 それから、川崎大師引声念仏・双盤念仏、これは、川崎市重要習俗技芸に二〇一九年に指定されまして、大変励みになると喜ばれているということです。かねをたたくんですが、右と左がありまして、普通に録音すると、どっちから先にたたいたか分からない。ですから、やはりそういう録音の仕方もいろいろと御苦労されているし、かねをたたきますので、これがいつ壊れるか分からない。そして、朝早い取組なので、御近所の方の取組で支えられていて、やはりここでも後継者のことについての御心配が寄せられました。
 少し伺っただけでもたくさんの要望と課題があるんだなというふうに勉強させていただいたんですけれども、やはり、こういった制度を国の法律に位置づけていくとしたら、先ほど今後の検討ということだったんですが、総務省とも協議になると思うんですが、しっかりと財政的な支援を抜本的に強化していくということが必要だと思うんですけれども、大臣、御所見いかがですか。
○萩生田国務大臣 先ほど来答弁申し上げていますように、これはある意味、初めの一歩だと思います。将来的には国もそういった財政的な裏打ちができる基金などを持って、困っている文化財の継承のために補助を出すようなことのメニューをつくることができれば理想だなというふうに思うんですけれども、まずはそれぞれの地域で指定をしていただくというのが今回の法案でございますので、そういったことも視野に入れながら、是非この制度を磨いていきたいな、現段階ではそういうふうに思っているところです。
○畑野委員 それで、もう一つだけ。
 東京文化財研究所に伺いまして、東京和楽器の三味線作りについて伺ったんです。大変危機感を持っておられました。
 私、地元の邦楽器店に伺いましたら、やはり三味線の作製や修理という点では、この間、舞台公演や演奏会が中止される中で、大変御苦労をされている。やはり、愛好者が増えないと支えられないと。
 それから、先日、国会には、能楽や寄席の団体の皆さんが来られまして、例えば能楽でいうと鎌倉薪能がコロナによって中止になったとか、あるいは、落語は三百六十五日開けてこそ成り立つのだけれども、それができなくなっていると。
 こういったものも是非支援を強めていただきたいということを一言申し上げたいと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
○萩生田国務大臣 今御披露いただいた東京和楽器というのは、たまたま私の地元にある企業で、それで、私も知らなかったんですけれども、全国シェアの半分以上をそこで三味線を作っているということで。経営者は、このコロナの中で仕事も減ってきて、やめようということを従業員の皆さんとも相談をして、廃業すると決めて、それが報道に出たことをきっかけに、多くの皆さんから支援が集まり、また、文化庁としても、現場をきちんと見て、これは保存すべき技術だなということで、今年度から新たにその指定をさせていただいて、技術継承のための支援を行うことにさせていただきました。
 我々が気がつかないうちに埋もれてしまう、朽ちていってしまう文化あるいは技術というものは国内にたくさんあるんだと思います。ここは、この法案の成立をきっかけに、アンテナを高く上げて、そして、国として、地方の皆さんと伴走できる、そういう体制を人的にも財政的にも充実させていく、それがこれからの課題だと思っていますので、今あるメニューもありますから、それを上手に使いながら、先ほど来お答えしているように、深化させていきたいなと思っております。
○畑野委員 是非、取組を強めていただきたいというふうに思います。
 文化財保護法は三年前に大きな改正がされ、二〇一八年改正では、過疎化や少子高齢化などを背景に、文化財の滅失や散逸、担い手不足が喫緊の課題となっているため、未指定の地域の文化財の掘り起こしを含め、地域社会が総がかりで文化財保護に取り組めるようにするため、都道府県が策定する大綱を勘案して、市町村が文化財保存活用地域計画を作成することなど、文化財の保存と活用の計画行政化を推進する仕組みを法律化いたしました。また、計画の認定を受ければ地域の文化財を国の登録文化財に提案できる制度も盛り込まれました。
 伺いますが、改正法施行後、大綱を策定した都道府県数、地域計画を策定した市町村数、地域から国に登録の提案が行われ、登録された文化財の件数は、それぞれどうなっていますか。
○矢野政府参考人 お答えいたします。
 まず、文化財保存活用大綱でございますけれども、三十八の道府県において策定されております。地域計画は二十三の市町において策定されておりまして、また、一件の登録有形文化財について国に対しての登録の提案がなされており、現在、提案内容を精査しているところでございます。
 更に言いますと、今年度中に七道県において大綱を策定するというふうに聞いてございまして、大多数の都道府県において今年度中の策定完了が見込まれております。
 また、地域計画につきましては、四十以上の自治体から今年度の認定に向けた相談を受けており、今後も地域における取組を着実に支援してまいりたいと考えております。
○畑野委員 今回の改正案の内容を検討した企画調査会では、飛騨市の市長さんから、少ししっかり調査をしたり、保存したりということになると、学芸員の力がどうしても必要になる、文化財の保存活用地域計画もそうなんですが、なかなか私ども今踏み切れていないのはマンパワーの不足があるところが大きな要因でありまして、そうすると、その後、特に学芸員不足ということをどう解消するのかということが一つの論点としてあると発言されています。
 市町村が文化財保存活用地域計画を作成するに当たっても、専門知識を持つ職員や学芸員など、専門人材の確保は非常に重要になってくるということです。
 伺いますけれども、文化庁は二〇一七年に、地方公共団体における文化財保護行政の現状に関する調査を行っています。一番多い、記念物、埋蔵文化財の専門的な知識や経験を持つ職員は、都道府県、一般市、町、村、それぞれ平均何人配置されているのか。
 あわせて、一番多い埋蔵文化財担当者の状況と併せて、無形文化財に関する専門的な知識や経験を持つ者はそれぞれ平均で何人配置されているのか、伺います。
○矢野政府参考人 お答えいたします。
 先ほど委員が御指摘になりました調査によると、記念物、埋蔵文化財の専門的知識、経験を持つ職員の配置状況は、これはそれぞれ平均でございますので、都道府県が二十・五名、端数ということは本当はあり得ないんですが、あくまでも平均でございます、二十・五名、政令市と中核市を除く一般市が二・八名、町が〇・八名、村が〇・三名となっております。
 さらに、無形文化財に関する職員につきましては、都道府県が〇・四名、一般市が〇・一名、町、村が〇・〇三名となっているところでございます。
○畑野委員 今回の地方の登録制度新設については、無形の文化財も含まれるわけですから、今あったように、都道府県レベルでも極めて少ないわけです。市町村レベルではこれからどうやっていくのかという状況です。
 だから、自治体任せで進むのかということでは、文化財専門職員の配置の必要性、どのようにお考えですか。
○矢野政府参考人 お答えします。
 無形文化財の登録制度の円滑な実施のためには、地方において専門人材の確保を含めた体制の整備を図ることが重要と考えております。
 この点につきましては、本法案の基になりました文化審議会の企画調査会からも御指摘を頂戴したところでございまして、地方における体制整備については、専門知識を有する大学等との連携、広域的な連携など、先進事例の横展開を図るとともに、文化庁の調査官等から地方公共団体が指導助言を受けられる仕組みの構築を検討してまいりたいと考えております。
 それぞれの地方公共団体においても、職員配置の工夫などにより、体制整備の取組を進めていただきたいというふうに考えているところでございます。
○畑野委員 最後に、萩生田大臣に伺いますが、先ほど学芸員のお話をされておられました。一九七三年に、公立博物館の設置及び運営に関する基準が作られまして、都道府県、指定都市の設置する博物館には十七人以上の学芸員又は学芸員補を置く、市町村の設置する博物館には六人以上の学芸員又は学芸員補を置くものとされていたんですが、二〇〇三年の基準改正で削除され、「必要な数」となってしまったんですね。
 しかし、そういう根拠がなくなってしまったものですから、そういったものをしっかりともう一回見直して、文化財保護を担うにふさわしい体制を再構築していく必要があると思うんですけれども、最後にそのことだけ伺います。
○萩生田国務大臣 昨年までで百四か所の日本遺産の指定をしました。このときにも私同じことを申し上げて、やはり調査、記録、保存をするには専門性の高い職員がいてくれないと、全く通訳ができなくなってしまいます。
 そういう意味で、時代が変わりましたけれども、この時代に改めてまた専門性を持った学芸員の必要性というのは求められているんじゃないかということは全国にも発信をしています。財政の問題もあれば定数の問題もありますから、国があらかじめその人数を明記するというのは今の時代はふさわしくないと思いますけれども。
 しかし、せっかくこういう法律ができて、地域文化を大事にしていこうというマインドが出てきたんだとすれば、先ほど私申し上げたように、昭和の時代みたいに、専門家として、役所の中に常にその仕事だけをという環境にはなかなかないかもしれないんですけれども、知識を持った人たちがある意味では役所の中にしっかりいらっしゃるということは極めて大事だと思います。
 おかげさまで学芸員の数そのものは今増加傾向にありますので、このトレンドを大切にしながら、適切な措置を促してまいりたいなと思いますし、おっしゃるように、必要性があれば、専門性の高い、専門職としての学芸員の配置を再び必要とする時代が来るんだと思うので、今ちょっと過渡期だと思いますので、よく地方自治体とも連携を取りながら頑張ってまいりたいなと思います。
○畑野委員 しっかりとした支援を求めて、質問を終わります。
 ありがとうございました。