日本共産党の畑野君枝議員は6日の衆院消費者問題特別委員会で、特定商取引法で定められた紙の契約書面の交付を電子化する改定法案の提出に対し、消費者被害を防ぐ役割を持つ書面交付の重要性を強調し、被害拡大につながるとして電子化の撤回を迫りました。

 畑野氏は、川崎市消費者行政センターでの昨年度上半期の相談件数の1位がデジタルコンテンツで、平均購入金額は23万8千円、契約・解除の相談が全体の8割だと指摘。紙の書面交付の義務付けは、訪問販売や連鎖販売取引(マルチ商法)などトラブルが多い契約から消費者を守るためのものであり、被害に第三者が気付く「見守り機能」が電子化で失われる懸念を示しました。

 井上信治消費者担当相が、電子化は「消費者の承諾を得た場合に限る」と述べたのに対し、畑野氏は、利益誘導や脅しで承諾を迫る例も考えられると指摘。「大臣の説明は歯止めにならない」と批判しました。

 井上担当相は「書面交付義務は重要な制度だ」としながら「(政省令で)消費者保護に万全を期す。消費者団体から意見を聞き、具体的な詰めを行っている」と答弁。畑野氏は各界の懸念の声を突き付け、法案そのものの修正を求めました。

 また畑野氏は来年4月の成年年齢18歳への引き下げに伴う被害対策、消費生活相談員の処遇改善を求めました。

(しんぶん赤旗2021年4月7日付)

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【議事録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 井上信治担当大臣にお伺いいたします。
 今、大きな問題になっているのが、特商法、預託法の契約書面交付の電子化、デジタル化です。先ほど、井上大臣が、この法案の参照条文に誤りがあったと御発言をされました。
 私、このデジタル化の問題について、いろいろと皆さんからお話を伺ってまいりました。
 先日、川崎市の消費者行政センターに伺いまして、この間の相談件数はどうですかと聞かせていただきました。二〇二〇年度の上半期で五千三百四十一件の相談件数、そのうち、商品、役務の品目は、一位がデジタルコンテンツだということです。これは、コロナ禍における外出自粛や仕事の減少、失業なども影響していると思われるということです。
 紹介をいろいろとされたんですけれども、副業を紹介する無料動画サイトを見て投稿者に話を聞きたいと連絡をしたら電話があり、転売ビジネスの情報商材を購入したがクーリングオフをしたいなどの相談があるということです。それで、店舗外の購入というのは二千九百十八件で、前年同期の二千三百十一件に比して二六・三%も増えている。全体の五四・六%になっているということです。このデジタルコンテンツの契約購入金額は、平均二十三万八千三百一円で、最高が二百五十万円、既支払い金額が平均八万九千四百五円、最高二百三十五万円ということなんですね。デジタルコンテンツだけではないんですけれども、全体の相談内容は、やはり契約、解除に関する相談が一番多くて、八割を占めているということです。
 消費者庁は、これまで紙での交付が義務づけられている契約書面について、特商法、預託法の改正で電子化、デジタル化を可能としているわけですが、大臣に伺いたいのは、メールによってスマホなどの端末に届く電子契約書というのは紙の契約書と根本的に異なると思うんですね。
 そもそも、特商法、預託法で紙による契約書面の交付義務を課している目的は何でしょうか。
○井上国務大臣 特定商取引法におきましては、通信販売を除き、事業者と消費者が契約を締結したときに、事業者が消費者に対し契約内容を明らかにする書面を交付することを義務づけております。
 また、預託法においても、事業者と消費者が預託等取引契約を締結した場合に、事業者が消費者に対し契約内容を明らかにする書面を交付することを義務づけております。
 このように事業者に書面交付義務を課す目的は、契約内容を明確にし、後日、紛争を生じることを防止することにあります。
○畑野委員 なぜこれが交付義務を課しているのかということなんですけれども、いわゆるマルチ商法やネズミ講など、やはり、トラブルを生じやすい商法を規制して、事業者の違法、悪質行為から消費者を守ることが目的だと思いますが、いかがですか。確認です。
○井上国務大臣 はい、そういった目的もその目的の一つというふうに考えています。
○畑野委員 消費者があらかじめ購入、契約を意図しない契約や、長期継続的で高額な契約だからこそ、悪質行為から消費者を保護する必要があるということだと思います。
 具体的には、紙の契約書面には、家族やヘルパーなどが消費者被害に気づくという見守り機能があると言われています。ジャパンライフ事件も、紙の契約書があったために第三者が気づいて、後の裁判で重要な証拠にもなったというのは周知の事実です。
 ところが、電子書面になれば、本人のスマホにしか契約書がなく、第三者が気づくという見守り機能が失われる懸念がありますが、この点についてはどうお考えですか。
○井上国務大臣 契約書面の書面交付義務は、消費者にとって重要な制度であります。ただ、社会や経済のデジタル化を踏まえて、電子メールなどにより必要な情報を受け取りたい消費者のニーズにも応える必要があります。
 そんな中で、消費者委員会からも、デジタル化のような社会的な要請に迅速に対応することは重要であり、かつ、デジタル技術を活用することにより、消費者の利便性の更なる向上を図るとともに、消費者の保護につなげることが重要である旨の建議もいただいたところです。
 御指摘の論点も含めて、消費者団体などから、高齢者などデジタル機器に必ずしも慣れていない面もある方々への対応や、悪質業者に利用されるのではないかなど、不安の声が寄せられていることは承知をしております。
 法改正の後、政省令、通達などを検討する過程において、御指摘の点も含めて消費者保護の観点から万全を期すこととし、法律の施行までの間に、消費者団体等からも意見を聞いて具体的な詰めを行っていきたいと思っています。
○畑野委員 消費者団体から様々な意見があるというお話がございました。
 私も聞いてまいりました。全国消費者団体連絡会や、あるいは全国消費生活相談員協会、弁護士会、あるいは司法書士連合会など、たくさん懸念の声を寄せられているんです。
 私は、法律が通ってからという話じゃないと思いますよ、現実に対応されている方たちが懸念の声、反対の声を上げているわけですから。そういう立場で臨むことを求めたいと思います。
 川崎でも被害の中であるのが、FX、外国為替証拠金取引ですね。ダウンロードされてもそれが開かない、どうしたらいいのか、そういう相談をたくさん現場では対応されているんです。
 つい先日ですが、架空のFXを持ちかけ現金をだまし取ったとして、昨年の十月から今年の二月にかけて、大阪府で特殊詐欺グループが摘発されました。被害者は約七百人、被害総額は二億円を超えると見られています。
 この手口は、スマートフォンに南太平洋の島国サモアにある投資会社というライズリンクの代理店店員を名のる者から電話があり、FXの自動売買システムのモニターに当選した、専用口座を開設して証拠金を預けるよう求められ、その相手は、元本は減らない、必ずもうかる、こういう話をしたそうです。それで、被害者は、ホームページに名前などを登録し、開設した口座に約百三十万円を入金した。FX取引に必要なソフトもダウンロードした。しかし、その後、連絡がつかなくなり、口座から出金もできなくなった。
 詳しい時間はないですが、本当に巧妙に、いかにも証拠金を運用しているかのように見せかけて、この二億円を超すような被害をつくった。これは一例です。もうたくさん、金融庁からもいっぱい警告書が出ているものはあります。金融庁によると、二〇一九年度に警告した業者は四十二社に上り、うち三十五社は海外を所在地としていたということですよね。
 国民生活センターは、さすがに、二〇一一年度からこういった問題を、投資ソフト、FX自動売買の解約に関する紛争は対応されているんです、もう十年前から。しかも、これが、二〇二〇年度、これは二〇二〇年十二月三十一日現在ですから全部じゃないですけれども、FXのPIO―NETだけの相談件数で八百二十八件、前年同期四百七十四件ですから、三百五十四件も同期で見たら出ているわけなんですね。だから、これは今でさえ対応できていない。だから、金融庁とかあらゆるところと検討して、対策を打たなくちゃいけないんじゃないでしょうか。
 そういう点では、紹介する時間がありませんが、大臣、この間、野党の皆さんと一緒に私も申入れに行かせていただいて、この後、成年年齢の話も、引下げの問題もお話ししますけれども、そのときに、電子化は購入者の承諾があった場合だから大丈夫だというふうにおっしゃったんですが、承諾とは何をもって承諾とするのか、教えていただけますか。
○井上国務大臣 今回の法改正によって、消費者の承諾を得た場合に限って、例外的に契約書面等について電磁的方法による提供を可能とするものです。
 承諾を得ていないにもかかわらず承諾を得たなどとする悪質業者を排除する観点から、消費者庁としては、消費者団体などの御意見も十分に踏まえながら、決して消費者にとって不利益になることがないよう、政省令、通達などの策定過程において詳細な制度設計を慎重に行い、消費者の利便性の向上や消費者保護の観点から、承諾が実質的なものとなるよう万全を期してまいります。
○畑野委員 この間、相談員の方が、いや、デジタル、電子化で、その場面を、どうやって承諾したかというのは証拠がないから分かりません、今までいろいろな裁判とかいろいろな紛争解決をやってきたけれども、今まででさえ大変だったのに、どうしようもないというふうにおっしゃっているんです。だから、私はこれは本当にやめるべきだというふうに申し上げたいと思います。
 それで、特に現場から言われているのは、紙の契約書の意義というのは、見守り機能だけではなく、例えば、契約内容を一覧して確認できる確認機能。スマホですと小さいですから、拡張すると全体が見えなくなっちゃう。紙だと全部見える。何十ページにもわたる契約書というのがあるんです、紙で。一々それは確認できない。それから、クーリングオフ等の権利を知らせる告知機能、契約の履行状況を判断する際の保存機能、冷静に考え直す警告機能などがあるわけです。
 伺いますけれども、とりわけ未成年の消費生活相談でも多くの相談が寄せられているのが、連鎖販売取引、いわゆるマルチ商法やネズミ講なんです。そこでは、契約締結時だけでなく、締結前の勧誘段階でも契約内容を記載した書面を交付する義務を定めています。これによって、契約内容を確認しながら締結するか否かを考え直すことができる、さらに、締結後に冷静に再確認もできることになっているんです。
 しかし、こういう対策がある今でもなお、未成年者をターゲットにした被害は後を絶たないんですね。こういう状況をどのように考えられますか。対策はどうされますか。
○井上国務大臣 連鎖販売取引に関する二十歳未満の消費生活相談件数は、ここ数年では年間二百件から四百件で推移しており、二十歳未満の者からも連鎖販売取引に関する消費生活相談が寄せられております。
 こうした状況も踏まえて、連鎖販売取引につきましては、連鎖販売業者に対して適合性の原則などの厳格な規制を設けて、近時においても、当該規制に違反した連鎖販売業者に対して取引停止命令等の行政処分を行うなど、厳正な法執行を行っております。昨年は十六件、一昨年は十五件の行政処分を行っております。
 また、成年年齢引下げを控えた今年度は、行政処分と併せ、大学生協へのチラシの配布など、若年者に向けての周知も徹底的に行うことを予定しています。
○畑野委員 川崎市に伺った際には、デジタルコンテンツの相談というのは、十九歳以下、二十歳代、三十歳代では一位で、一番多いということなんですね。ですから、こういうところでも、デジタル化を進めたら更に被害が拡大すると私は言わなくてはならないと思います。
 先ほどの承諾の件も、スマホの入力画面の中に、電子書面を承諾するとの欄にあらかじめチェックが入っているデフォルト設定を認めるということも十分起こり得るわけですね。不意打ち型の勧誘や利益誘導型や、あるいは脅しなどのやり方をもって承諾を迫ることも考えられる。いろいろなことを含めても、大臣がおっしゃったことは歯止めにならないと私は思います。ましてや、未成年の問題が出てくる。
 成年年齢引下げの実施が来年四月に迫っております。今まで述べたような被害に遭っても、これまでは未成年であることを証明するだけで契約の取消しができる未成年取消権がありましたが、これが喪失してしまう。この対策はどのようにされますか。
○井上国務大臣 成年年齢引下げを見据えた消費者被害の防止について、先ほど御紹介いただいたように、先日、立憲民主党、日本共産党、社会民主党からも要請をいただき、また、皆様にお越しをいただいて、意見交換もさせていただきました。
 消費者庁にとって、成年年齢引下げへの対応は今年度の最重要課題の一つと考えています。
 これまで、主として若年者に発生している被害事例を念頭に置いた消費者契約法の改正などの制度整備を行ったほか、厳正な法執行、消費者教育の充実、消費生活相談窓口の充実、周知などに取り組んでまいりました。
 成年年齢引下げまで残り一年となり、新たに成年となる十八歳、十九歳を始め、若年者に向けたあらゆる施策を講じる必要があります。
 若年者向け消費者教育につきましては、三月二十二日に、関係省庁から法務大臣、文部科学大臣、内閣府副大臣にも会議に御出席をいただき、成年年齢引下げに伴う消費者教育全力キャンペーンを決定したところであり、関係省庁と連携して、一層の強化を図ってまいります。
 また、若年者を含む消費者の脆弱性につけ込む悪質商法に迅速かつ厳正に対処するため、制度の見直しを絶えず行うほか、厳正な法執行など、重層的な施策に引き続きしっかり取り組んでまいります。
○畑野委員 最後に、地方消費者行政について伺います。
 二〇二〇年度都道府県の消費者行政調査報告書、地方消費者行政の充実強化を考えるという全国消費者団体連絡会の報告を私もいただき、二月五日のオンラインシンポジウムにも参加をさせていただきました。
 そこで、もう時間がないので、端的に伺います。
 そこで出されたのは、消費生活相談員の体制強化と処遇改善です。各県の課題で一番多いのは、募集しても応募がない、少ないというのが二十八県、六割だということですので、あるいは、会計年度任用職員制度についても、一年単位の雇用契約のままになっていて、専門性にふさわしい処遇に抜本的に改める必要があるという声が寄せられていますが、その点についていかがか、伺います。
○片岡政府参考人 お答え申し上げます。
 消費者生活相談体制の強化につきましては、これまでも地方消費者行政強化交付金などを通じまして地方公共団体の取組の支援などを行ってまいりましたけれども、令和三年度におきましても、地方の相談員の支援をするために、例えば、自治体間連携の促進や相談員のメンタルケアの取組の支援、それから、担い手の確保のためには、国が直接実施をする相談員の育成事業の強化、それから、国民生活センターにおけるオンラインを活用した相談員の研修なども行っていきたいというふうに考えております。
 それから、処遇の改善につきましては、会計年度任用職員制度を踏まえた処遇の在り方につきましては、基本的にはそれぞれの自治体の状況に鑑みて各自治体において検討されるものというふうには考えておりますけれども、消費者庁としましても、その能力や経験等に見合った処遇となるような取組を進めていきたいというふうには考えてございます。
 具体的には、先ほど申し上げた地方消費者行政強化交付金などを通じた支援を行うこと、それから、様々な機会を通じて地方公共団体に直接働きかけるということで、相談員の働く環境の改善に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。
○畑野委員 時間が参りましたので、この続きはまた次の機会にしたいと思います。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。