11月20日、衆議院文部科学委員会で、サッカーくじの対象にバスケットボールのBリーグを加え、単一試合の投票を盛り込んだ「スポーツ振興投票の実施等に関する改正」案などの審議と採決が行われ、賛成多数で委員会を通過しました。日本共産党は反対しました。

 自民党、公明党、立憲民主党、日本維新の会の4会派で共同提案した2法案は、スポーツ議員連盟のプロジェクトチーム(PT)がこの間、議論してきたものです。

 法案提出者が、くじ購入行為を「ギフティング」(贈り物)と表現していることを追及しました。「スポーツ振興くじは刑法で禁じている富くじの一種」(サッカーくじ法で)違法性を阻却しているだけで性格はギャンブル」であり、それをごまかすネーミングだと指摘し、「人を欺く。答弁は不誠実」と厳しく批判しました。

 初めて導入された単一試合投票が、これまで行われてこなかった理由をただすと、提案者は「当選確率を過度に上げないなどの射幸性の抑制、選手の不正行為のリスク軽減から慎重な判断がなされた」と答弁し、問題点をみずから“告白”した形となりました。

 共同提案者の資料でも不正防止対策が列挙されていることを指摘し、「それが書かれていること自身、(八百長などの)危険があるということ。実際、韓国のサッカーくじで八百長が起き、日本のプロ野球でも黒い霧事件があった。対岸の火事ではない」と問題点を明らかにしました。

 法案提案者がかつて同法改正の際、「国立競技場などの施設の整備は国費が基本」と答弁したことを指摘するとともに、萩生田光一文科大臣に対しても、「スポーツ振興は国や自治体によって担われるべき。スポーツ基本法に基づく国民の権利として、スポーツ予算の抜本的増額を」と強く求めました。

【議事録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 スポーツ振興投票法等一部改正案について伺います。

 まず、提案者に伺いたいのは、第一条のスポーツ振興投票の性格についてです。

 お手元に資料を配らせていただきましたけれども、スポーツ庁からいただいた資料の中に、「ギャンブルではなくギフティング」と書かれております。これは正しくないというふうに思いますが、確認です。

 スポーツ振興投票と刑法百八十七条との関係について説明を求めます。

○齋藤(健)委員 お答えいたします。

 まず、このスポーツ振興投票は、当せん金の払戻しの割合が売上金額の二分の一以下と低く定められているということ、それから、残りの収益についてはスポーツの振興等のために充てられるなど、寄附的な性格が強いものであるということであります。

 そういった意味では、次から次へと金銭をつぎ込んで、生業をなげうってまでのめり込んでしまうようなギャンブルではありません。夢や楽しみを買って、スポーツの振興のために寄附をしてもらうというギフティングの性格が強い制度であると認識しております。

 スポーツ振興投票を法律の根拠なく行えば、これは富くじを禁じる刑法百八十七条に抵触するおそれが当然あるわけでありますが、スポーツ振興投票は、試合での不正防止策を講じ、運営においても公正性を確保するなど、刑法の規定を除外するに足る十分な合理的な制度として行われるものでありまして、法律で規定されたものであります。

 これによりまして、刑法三十五条の正当行為として違法性が阻却され、実施することが認められているものであります。

○畑野委員 かつても、サッカーくじはギャンブルでなく宝くじと類似していると言ったんですね。しかし、宝くじも刑法で禁止されている富くじの一種なんですよ。だから、違法性を阻却していると言うんだけれども、もともとはこういう、ギャンブルじゃないですか。それをギャンブルじゃないという、こういう欺くようなことをやっちゃいけませんよ。

 しかも、教育基本法は、勤労を重んずる態度を養うと書いてあるんですよ。文部科学省ですよ、担当は。私は、全く今の御答弁は不誠実だというふうに言わなくてはならないと思います。

 次に伺います。

 法の第二条、単一試合投票の導入を今回初めて行います。今までやらなかったんです、さすがに。なぜ行わないことにしていたのかということを伺いたいのと、本改正案では、サッカーとともにバスケットボールも加えて、広げるというんですね。バスケットボールが加わるだけじゃなく、サッカーも含めて、単一試合投票は初めて入るんです。物すごく広げる。

 これに対して、射幸心をあおり、また八百長など不正行為の問題が広がるんじゃないかという指摘の声がありますが、どうですか。

○浮島委員 お答え申し上げます。

 スポーツ振興投票法の制定に当たりまして複数の試合を対象とした理由は、我が国においてスポーツ振興投票というこれまでにない仕組みを導入するに当たりまして、当せん確率を過度に上げないことによる射幸性の抑制、そして選手による不正行為のリスクの軽減といった観点から、慎重な検討そして判断がなされたことということでございます。

 また、他方、スポーツ振興投票法が施行されて約二十年がたち、スポーツ振興投票が社会に定着し、Jリーグ等におきましても、これまで不正行為事案等は発生していないことが事実でございますし、また、商品の設計等におきましても、適切な配慮を行うことにより、射幸性の抑制と不正行為の防止を担保しつつ売上げの向上を図ることが可能であると判断をし、単一試合の投票の導入を盛り込んだところでございます。

 また、射幸性の抑制に関しましては、単一試合の投票は、払戻し率は売上金額の五〇%以下に決まっておりまして、当せん者も多いことが見込まれるために、特定の購入者に多額の利益が生じにくい。また、Jリーグ、Bリーグとも、特定のチームの試合は一日一回でありまして、次の試合まで数日から一週間程度の間隔があき、この冷却期間が置かれることから、次から次へとお金をつぎ込むことは生じにくいといった理由から、そもそもの仕組み上、射幸心を過剰にあおらないものと考えているところでございます。

 また、不正行為の防止、これに関しましては、単一試合の投票は、特定の購入者に多額な利益が生じにくく、また、具体的なスコア等まで、特定の予想、結果を合致するような、相当数の選手等を買収するなどして試合結果を操作することは困難性が高いといった理由から、不正行為を起こすインセンティブは少ないものと考えています。

 この点、今回の改正では出場選手の数が五人であるバスケットボールも対象競技に追加いたしますけれども、バスケットボールは選手の交代の回数の制限がなく、頻繁に行われることから、試合結果を操作するような不正行為が困難であるという実情は、サッカーと変わるところは何もありません。

 以上です。

○畑野委員 ここにわざわざ、この資料にもありますけれども、単一試合投票の導入に関する留意事項に、一、射幸心を過剰にあおらないような商品設計、販売、二、不正行為の防止、選手の安全の確保等と書かれているということ自身が、そういうことの危険性があるということじゃありませんか。

 いろいろ言ったって、あの韓国のプロサッカーリーグでも八百長事件が発覚しました。韓国のくじは、スポーツ庁によると、一口十円だということなんですね。いろんな仕組みは違うでしょうけれども、金額の多寡にかかわらず、くじを導入したから八百長が起きている。売上げをふやそうと対象試合数をふやす、そういうのは日本と同じですよね。対岸の火事じゃないと思います。

 Jリーグでもモニタリング会社から指摘された。不正はなしとされたけれども、サッカーだけでも、スペイン、イングランド、イタリア、ベトナム、ドイツ、マルタ、ギリシャなど、多数の国でこういう事件は起きています。日本でも、古くはプロ野球球団の黒い霧事件がありまして、法制定当時のプロ野球コミッショナーだった川島広守さんも懸念をしていたわけですよ。そして、何とおっしゃっているか。スポーツ振興というのは、本来、国や自治体によって担われるべきものですと。本当に私は正論だと思うんですね。

 しかも、子供たちの大好きなサッカーに、更にバスケットボールなんですよ。しかも、今SNSです。どれだけの多くの選手や審判や関係者が巻き込まれるか、想像にかたくないです。

 そこで、時間が余りありませんので、まとめて提案者と萩生田光一大臣に伺います。

 スポーツ振興センター法附則八条について、提案者は、かつて法改正のときに、国立競技場などのスポーツ施設の整備は国費が基本だと御答弁されましたが、今回もその認識でしょうかと確認と、それから萩生田大臣にも、このスポーツ振興センター法附則八条について、そういう点では、国費による財源を確保しつつ取り組むことが望ましいと当時の文科大臣が答弁されていますが、萩生田大臣もその認識でよろしいのか。そして、大臣には、スポーツ振興投票に対して青少年への悪影響を懸念する声に応えて、スポーツ基本法に基づく国民の権利としてのスポーツ予算を抜本的に増額するよう求めたいと思いますが、お願いいたします。

○遠藤(利)委員 お答えいたします。

 平成二十五年の法改正では、貴党の宮本岳志委員から御質問をいただきました。そのときにも、国立競技場など独立行政法人日本スポーツ振興センターが保有するスポーツ施設の整備については、国費により財源を確保しつつ取り組まれるべき性格のものであり、その上で、国立競技場の改築等に係る財源を調整する中で、やむを得ない場合にはスポーツ振興くじの売上げの一部を活用することも考えると申し上げました。今回の法改正にあってもその認識は変わっておりません。

 なお、国際大会の招致については、大会のために常に新たな箱物をつくるということではなくて、既存施設を計画的に整備して対応するということが国際的なトレンドになっております。こうしたことを踏まえ、今回の改正は、附則第八条の三の文言を「緊急に行う必要があるもの」から「特に必要があるもの」に改めるものであります。御理解をいただきたいと思います。

○萩生田国務大臣 まず、日本スポーツ振興センターが保有する施設の整備等の財源については、国立競技場など独立行政法人日本スポーツ振興センターが保有する施設の整備等喫緊の課題については、基本的には国費による財源を確保しつつ取り組むことが望ましいとの認識は変わっておりません。

 また、これと同時に、例えば、PFI事業ですとかコンセッションですとかネーミングライツですとか、やはり多様な財源を確保するという観点も同時に持ち合わせていかなくてはいけないというふうに思っておりまして、こういう点も考えは持たせていただきたいと思います。

 子供たちにとって悪影響をというふうに先生おっしゃいましたけれども、totoが法制化されて以来、子供たちを取り巻く事件、事故というのは一つも起きていません。どういう悪影響があるか私には理解できませんけれども、いずれにしましても、スポーツの振興のための予算はしっかり確保していくことは頑張りたいと思います。

○畑野委員 それは皆さんの努力があったからじゃありませんか。三百三十四地方議会からも懸念の声が出たと、私、当時の資料を見ましても、四百ぐらいいったんじゃないでしょうかね。そうやってみんなが、いけないというふうにやってきた。

 私は、だから、本当に、国が真剣にスポーツ振興の予算を拡大させていくということが本筋だということを申し上げて、この法案には断固反対の意思を表明して、質問を終わります。