「表現の自由」明記へ

文化芸術基本法案 全会一致で可決

畑野氏が質問

 衆院文部科学委員会は26日、議員立法の「文化芸術基本法」を全会一致で可決しました。

 日本共産党の畑野君枝議員は、「表現の自由」を法の前文に明記する意義について質問。提出者の河村建夫議員(自民党)は「文化芸術活動の自主性や創造性の尊重のため、表現の自由を明記することは必要であるという意見を踏まえた」と答えました。

 法案は、現行の文化芸術振興基本法から文化芸術基本法に改め、観光・まちづくりなどの施策も取りこむとしています。畑野氏は、山本幸三地方創生相の学芸員に対する暴言もあげ、観光・まちづくりとかかわらない文化芸術そのものの振興が縮小されないかとただしました。提出者の平野博文議員(民進党)は「関連分野も法の中に巻き込むという趣旨であり、従来の文化芸術がより充実していくと確信している」と答えました。

 畑野氏は文化芸術振興のための予算が1000億円程度にとどまっている現状を指摘し、国が積極的な役割を果たすよう要求。河村氏は「文化予算の拡充を党派を超えて政府に働きかけていきたい」と答えました。

(2017年5月30日付 しんぶん赤旗より転載)

 

【会議録】

〇畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。文化芸術振興基本法の一部を改正する法律案の起草案は、文化芸術振興議員連盟の場で昨年来議論を続けてきたものであり、成案の取りまとめに当たられた皆さんに敬意を表します。  私も議連の場で意見を述べてまいりましたが、文化芸術振興基本法制定後初めての改正でありまして、文部科学委員会の場で大いに議論をし、議事録に残すことで、後世に本法案の意義を明確にすることにつながると考えております。  

 文化芸術を進める上で、表現の自由は基盤となるものです。我が党は、本法律の制定時から表現の自由を明記することを求めてきました。今回、前文に明記されることになりました。表現の自由は文化芸術の推進にとって極めて重要だと考えます。今回前文に明記する意義について伺います。

〇河村委員 お答え申し上げます。畑野議員御指摘のとおり、文化芸術活動における表現の自由は極めて重要である、この法案をつくるための超党派の議連でも御指摘をいただいたところでございます。現行法におきましても、前文、目的、基本理念において、文化芸術活動を行う者の自主性や創造性の尊重については繰り返し規定をしておるわけでありますが、表現の自由を直接明記はしていないものの、文化芸術活動における表現の自由の保障という考え方は十分にあらわされてきた、このように考えております。  今回の改正案においては、超党派の文化芸術振興議員連盟において、振興基本法の範囲を拡大する中で、改めて、文化芸術活動を行う者の自主性や創造性、これを十分尊重する趣旨をあらわすために、文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識する旨の記述を加える必要がある、この議論、御指摘をいただきました。これを踏まえて、前文にそのような一文を入れて、改正を加えることにした、こういうことでございます。

〇畑野委員 各地の美術館や図書館、公民館などで、創作物の発表を不当な理由で拒否するなど、表現の自由への侵害が相次いで、創作活動の萎縮も懸念される中で、文化芸術の基本法に表現の自由を明記するということは意義があることだと思います。本起草案は、文化芸術の振興にとどまらず、観光、まちづくり、国際交流などの各関連分野における施策も取り込み、有機的な連携を進め、文化芸術により生み出されるさまざまな価値を文化芸術の継承、発展及び創造に活用するためとして、法律の題名を、文化芸術振興基本法から文化芸術基本法に改め、振興法から、文化芸術に関する全般的な法へと性格を変えています。文化芸術は、観光、まちづくりなどと関連する部分もあり、連携を進めること自体はあり得ることです。ただ、先日の山本幸三地方創生担当大臣による、一番のガンは文化学芸員だ、観光マインドが全くなく、一掃しないとだめだとの発言があり、学芸員という職種に対する暴言だと言わなくてはなりません。  大臣たる人物が、このような学芸員の現状について理解のない発言を公然と行うような状況ですと、観光、まちづくり、国際交流などの関連施策にかかわらない文化芸術そのものの振興は置き去りにされないかといった危惧を抱かざるを得ません。また、観光やまちづくりの名のもとに、文化財の保存が曖昧にされたり、文化行政がゆがめられてはなりません。本起草案により、観光、まちづくりなどと関連しない文化芸術そのものの振興が縮小されることがあってはならないと考えますが、いかがでしょうか。

〇平野委員 お答えをいたします。御質問は、観光、まちづくりなどと関連しない文化芸術そのものの振興が今まで以上に縮小されるのではないか、こういう御指摘でございますが、今回の改正の趣旨は、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の関連分野も巻き込んでやろうということで、この法案の中に取り込んでいこう、こういう趣旨でございます。したがいまして、今までの文化芸術そのものの振興にとどまらない、幅広にやっていくんだ、こういう趣旨でございますので、今先生から御指摘ありました、従来の部分、いわゆる観光やまちづくり等に関連しないところについては、そういう文化芸術の振興については縮小されるんじゃないか、こういう懸念に対しては、全くそういうことではなくて、より幅広にやっていこう、こういうことでございますから、体制、予算等々含めて、この改正をすることによって、私は、より充実していくものと確信をいたしておるところであります。私も、十六年前のこの議法の提案者として感慨深いものがありますし、これからもしっかりとサポートしていきたい、かように思っております。以上でございます。

〇畑野委員 本起草案では、現行の文化芸術の振興に関する基本方針を文化芸術推進基本計画へと改めております。  文化芸術の振興そのものは、何か成果を上げなければ行わないとか、成果を上げていないものは行わないというものではなくて、文化芸術の創造、享受は、本法律にあるように国民の文化的権利なのでありまして、当然、今以上に進めていく課題だと思いますが、いかがでしょうか。

〇伊藤(信)委員 畑野委員にお答えいたします。 現時点で基本計画において想定されることは、例えば、地域の文化的環境に対して満足する国民の割合が上がっているとか、そういう計画の達成状況を、わかりやすく、国民に理解できるような形のものを持つことによって説明責任を果たすということが目的でありまして、もちろん、文化芸術の振興は、文化芸術活動を行う者の自主性、創造性、それを尊重するということが大前提でありますので、御指摘のような、いわゆる成果主義を強調することによって文化芸術活動を行うことが萎縮するようなことがあってはならないと考えておりますし、それは法律の趣旨ではございません。むしろ、基本計画の策定により、文化芸術が今まで以上に力強くといいますか推進する、そのことが重要であると考えております。

〇畑野委員 あわせて、地方自治体にも、地方文化芸術推進基本計画として、地方の計画を策定する努力義務を新たに規定しております。国の計画を参酌して策定するということになっていますが、国の計画のとおりに地方自治体も計画を策定せよと受けとめられかねないのではないかと思いますが、その懸念についていかがでしょうか。

〇伊東(信)委員 畑野議員にお答えいたします。  観光やまちづくりなど関連分野を含めまして文化芸術に関する施策を推進するためには、国の取り組みだけでは、それのみならず、地方公共団体の取り組みも推進されることが当然望ましい、そういった観点から、第七条の二として、地方公共団体における基本計画の策定を促す規定を置いたものです。  本条では、地方公共団体に対して、国の計画を参酌、すなわち参考にしつつも、その地方の実情に即した計画を定めるよう努めることを求めておりまして、国の計画どおりの計画を策定するようなことを求めているものではないということをお答えいたします。

〇畑野委員 それでは、最後に伺います。

〇永岡委員長 時間が来ております。ぜひ手短にお願いいたします。

〇畑野委員 現状の文化予算の規模を当然視するのではなく、文化芸術の振興のために予算面で国が積極的な役割を果たすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

〇河村委員 現在の文化予算、当初予算ベースですと一千四十三億ということでありまして、この規模は、文化の祭典であるオリンピック・パラリンピックを二〇二〇年に控えている日本の国の文化予算として十分なものではない、我々も同じような認識を持っておるところでございます。  文化振興のために予算面で国が積極的な役割を果たしてもらうという御指摘は私も全く同感でございまして、この法案を成立させていただきました暁には、さらに文化予算の充実、拡充に、党派を超えて皆さんと一緒になって、この超党派議連でつくった法案でもございます、政府に働きかけてまいりたいと考えております。  また、この予算を適切に執行するためにも、文化庁の機能の拡充が必要であるというふうに考えております。その行政組織のあり方を含めた検討条項を附則第二条に規定をさせていただいております。文化庁の機能の拡充についても、各党各会派の先生方とも、その実現に向けてひとつ一層の尽力をしてまいりたいと思いますし、御協力をお願いしたいと思います。

〇畑野委員 終わります。ありがとうございました。