密告社会への道開く 畑野氏が指摘

 畑野氏は、市民運動の弾圧と密告社会に道を開く危険性を浮き彫りにしました。

 「共謀罪」法案は、犯罪実行前に「自首」した場合に刑を軽減・免除する規定を設けています。政府が「共謀罪」法案の根拠としている国際組織犯罪防止条約も導入を義務付けていない「自首減免」規定を、法務省の林真琴刑事局長は「犯罪の未然防止のため政策的配慮から設けた」と答弁しました。

 畑野氏は、日本弁護士連合会など多くの法律家団体から「犯罪を持ちかけた方の主犯が処罰されず、それに同意しただけの人が処罰される事態になりかねない」との強い懸念があると紹介。市民団体や労働組合に“スパイ”として入り込んだ公安警察が犯罪の実行を持ち掛け、関係者が同意したことを示す“証拠”を警察に持ち込めば、全構成員が逮捕されるとして、「多くの国民を疑心暗鬼に陥れ、密告社会への道を開きかねないものだ」と批判しました。

(2017年5月13日付 しんぶん赤旗より転載)

 

 

【会議録】

〇畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。組織的犯罪処罰法改正案、いわゆる共謀罪法案について質問いたします。まず、国際組織犯罪防止条約、TOC条約について伺います。我が党は、この条約の承認については賛成をしてまいりました。そこで、過去の議論についてもう一度振り返りたいと思います。  

 まず、二〇〇三年四月十八日の外務委員会で、当時の川口外務大臣は、条約の趣旨について、「我が国がこの条約を締結して早期発効に貢献することは、国際的な組織犯罪に効果的に対処するための国際的な取り組みに寄与するとの見地から有意義であると認められます。」と述べておりました。それでよろしいですね。

〇岸副大臣 今、畑野委員のお問い合わせの件でございます。平成十五年四月十八日、外務委員会において、川口当時の外務大臣が、本条約を締結すべき理由について答弁をしております。本条約の第一条にございます、「一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進すること」という趣旨を述べたものだ、このように考えております。

〇畑野委員 はい、お答えのとおりです。次に、二〇〇五年七月十二日の法務委員会で、当時の南野法務大臣は、「国際組織犯罪防止条約は、一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進することを目的といたしております。」と述べられておりますが、それでよろしいですね。

〇金田国務大臣 御指摘のとおり答弁されていると思います。

〇畑野委員 お答えがございました。国際組織犯罪防止条約の趣旨は国際組織犯罪対策にあるということです。そのための締結国間の協力を促進するということなんですね。では、このTOC条約を締結することによって、我が国に具体的にどのようなメリットがあるのか。各締約国との関係でどのような連携強化が図られるのでしょうか。

〇岸副大臣 このTOC条約を締結することのメリットということでございますが、本条約は、テロを含む国際的な組織犯罪を一層効果的に防止し、これと闘うための協力を促進するための国際的な法的枠組みを創設する条約でございます。本条約の締結によって、例えば、さまざまな国際協力が可能となるわけですけれども、重大な犯罪の合意罪に関しましては、この条約を締結することによって、本条約が犯罪化を求めている重大な犯罪の合意罪について、我が国として、国際的な逃亡犯罪人引き渡し、あるいは捜査共助を要請し、または要請を受けることが可能になってまいります。  

 捜査共助については、我が国との間で刑事共助条約を締結していない国との間で法的義務に基づく共助として一層確実に実施されることが確保され、また、より迅速かつ効率的に得られるようになることが期待をされておるところです。犯罪人引き渡しについては、我が国との間で引き渡し条約を締結していない国との間で犯罪人引き渡しの要請の実効性が高まるということが期待をされているところでございます。 〇畑野委員 つまり、条約によって、主に捜査共助と犯罪人の引き渡しということですよね。実際の捜査共助について伺いたいんですが、厚生労働省の資料で、第四次薬物乱用防止五か年戦略における主な施策として、目標五に、「薬物密輸阻止に向けた国際的な連携・協力の推進」というふうにあります。国連薬物犯罪事務所、UNODCとの連携などを含めて伺ってまいりましたが、具体的に、日常的に各国とどのような捜査あるいは情報のやりとりをしているのか、伺います。

〇森政府参考人 お答えいたします。御指摘のように、近年、海外からの薬物密輸ルートが多様化してございまして、薬物密輸対策における国際連携の重要性が高まっているところでございます。このため、厚生労働省麻薬取締部では、各国の取り締まり機関と、密輸の情報や捜査手法等を含めた積極的な情報交換を通じて、その連携強化を図っているところでございます。  

 具体的には、世界の薬物乱用状況を把握し、統制強化目的の勧告等を行っております国連麻薬委員会を初めとして、アジア太平洋地域の取り締まり機関の代表が集まり、取り締まりの手法の検討や情報交換を行いますアジア太平洋薬物取締機関長会議、また、各国の捜査担当者同士による情報交換を行います国際協力薬物情報担当者会議、こうした国際会議が開催されておりまして、これらに参画することで、各国における取り締まり状況や密輸動向等の情報を入手するということと、加えて、日本国内におきます薬物事犯等への対策を初め、世界規模で蔓延しております危険ドラッグへの取り組み、これを発表するなどしまして、各国との緊密な協力関係を構築するようにしてきてございます。厚生労働省としましては、引き続き、国際会議等への積極的参加を通じて各国との連携を深めてまいりたいというふうに考えております。

〇畑野委員 わかりました。国際組織犯罪防止条約は、現時点でも取り組まれている捜査共助あるいは犯罪人の引き渡し、これをさらに効率的に進めようというものだと思うんですね。しかし、そのために共謀罪を新設して、刑法の大原則を根本から変えるということは許されないと言わなくてはなりません。国際組織犯罪防止条約起草時の交渉の議論について伺いたいと思います。二〇〇五年十月二十一日に、当時、小野寺外務大臣政務官は、このように答弁されております。「当初の共謀罪の規定は、重大な犯罪を行うことを合意するというものであり、また参加罪については、組織的な犯罪集団の犯罪活動またはその他の活動に参加する行為というものでした。」「そこで、我が国は、このままでは我が国の法制度と相入れない旨の意見を強く述べまして、」と述べております。  このように答弁されておりますが、それでよろしいですね。

〇水嶋政府参考人 お答え申し上げます。本条約の交渉の初期におけます案文では、重大な犯罪の合意罪につきまして、組織的な犯罪集団が関与するものという要件を付すことが認められておりませんでした。その上に、重大な犯罪の範囲も定まっておりません。単に重大な犯罪を行うことの合意を処罰するというふうにされておりました。そこで、我が国といたしましては、その当時の案文のままでは受け入れられない旨の意見を述べた上で、重大な犯罪の合意罪について、組織的な犯罪集団が関与するものという要件を加えることを提案した次第でございます。  議論の結果、重大な犯罪の合意罪につきましては、我が国の提案に基づきまして、組織的な犯罪集団が関与するものという要件を付すことができるというものにされまして、また、累次の議論の結果、重大な犯罪の範囲につきましても、長期四年以上の罪とされたということでございます。  

 その上で申し上げますと、我が国においても、現実に法益侵害の結果が発生していなくても、その危険性がある一定の行為については、未遂犯、危険犯として処罰をされておりますし、また、特に重大な犯罪や取り締まり上必要がある一部の犯罪につきましては、予備罪、共謀罪、実行着手前の行為も処罰をされております。したがって、結果実現の危険性が高く悪質であります組織的な犯罪集団が行う重大な犯罪の合意について処罰すること、これは我が国の国内法の基本原則に反するものではないというふうに考えております。

〇畑野委員 このままでは我が国の法制度と相入れないと強く言って、我が国としても積極的な交渉を行った結果、我が国の主張が受け入れられ、本条約第五条の規定になったというふうに当時言っているわけなんですけれども、それにしても、そういうふうに言ってオプションがついた割には、そのオプションをきちんと前のときには使っていなくて今回出してくるということに触れるにつれ、条約の解釈というのはいろいろ幅があるんだなと今の御答弁でも思うわけなんです。そもそもこの条約では、犯罪成立要件について、各国の国内法の基本原則によって定めるということですよね。あらゆる条約はそういう原則だと思います。

 では、日本の刑罰法規の基本的な考え方について伺います。最高裁に伺いますが、二〇一二年十二月七日の堀越事件最高裁無罪判決では、国家公務員法第百二条第一項が禁止する政治的行為についてどのように判示しているのか。四ページの下から、「このような」というところから「相当である。」までお答えください。

〇平木最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分を読み上げます。このような本法百二条一項の文言、趣旨、目的や規制される政治活動の自由の重要性に加え、同項の規定が刑罰法規の構成要件となることを考慮すると、同項にいう「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指し、同項はそのような行為の類型の具体的な定めを人事院規則に委任したものと解するのが相当である。 このように記載されております。

〇畑野委員 お答えいただきましたが、つまり、刑法で守られている人の利益、保護法益というのが実際に侵害される危険性があるときに限り処罰されるということだと思うんです。金田法務大臣に伺いますが、保護法益の侵害について、最高裁は、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものだというふうに述べております。これは刑法の大原則ではないかと思いますが、この最高裁の判決を受けて、御所見を伺います。

〇井野大臣政務官 先ほど最高裁の方から御答弁がありました判決についてでございますけれども、あくまでもこの最高裁の判示は、国家公務員法の規定に違反して政党の機関紙等を配布したという事案において、国家公務員の政治的行為を禁止する罰則規定が憲法二十一条一項、三十一条に反するのではないかということの判断に当たって、同法に禁止される政治的行為とはどのようなものであるかという解釈についてでございまして、刑罰権の発動云々かんぬんというところではないというふうに承知しております。  すなわち、判決は、同法の規定する政治的行為とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる政治的行為に限られるということを前提に、そのような解釈のもとにおける罰則規定は不明確なものであるとしても、過度に広範な規制であるとも言えないということを示したものでございます。  したがいまして、同判決が、法益侵害が観念的でなく現実的なものに処罰をするのが刑法の大原則であるということを示したものではないというふうに考えております。

〇畑野委員 最高裁でこのような判示が出たということについては、大臣、よろしいですね。

〇金田国務大臣 出ておりますことは承知をいたしております。

〇畑野委員 そうだと思います。当委員会の参考人質疑で、高山佳奈子京都大学教授は、「内心の自由、思想、良心、それから表現の自由など含む精神的自由というのは、経済的な自由と比べても一段と上の価値を有する。それを、いわんや刑事罰をもって制限しようというからには、相当の理由がないといけないわけですこの認められる基準については、最高裁は、保護される利益に対する危険が単に観念的なものにとどまらず、現実的なものとして実質的に認められる場合でなければ処罰してはならない、これに反する処罰は憲法違反であるという考え方を示しているわけです。」というふうに述べております。それで、国際組織犯罪防止条約では、合意の処罰について、未遂または既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とするというふうに述べております。さらに、国内法上求められるときは、当該合意の内容を推進するための行為を要件にしてよいというふうにしているんですが、その行為は既遂、未遂の前の段階ということでよろしいんでしょうか。であるならば、予備罪でも条約の要望に応えているということになるのではないかと思いますが、いかがですか。

〇水嶋政府参考人 お答え申し上げます。この条約の第五条一項(a)の(1)でございますが、重大な犯罪の実行の合意そのものを処罰の対象とするということを締約国に求めております。その上で、国内法上求められる場合には、合意の内容を推進するための行為という要件を付すことも認めているということでございます。  この推進行為に予備行為といったもの、予備罪というのを当てるということにつきましては、裁判の例に見られますように、この予備行為ということについては、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合というふうなことになってございます。ですから、その考え方を前提といたしますと、そのような危険性の認められる程度の準備がなければ処罰ができないということで、この条約五条の趣旨に反するおそれが高いというふうに考えております。

〇畑野委員 反するというふうに言うんですが、当該合意の内容を推進するための行為に実質的な危険を要求していないということなんですか。実質的な危険がない行為を処罰するというのは、国内法の原則に反するんじゃないかというふうに思うんですね。ここは先ほどから議論されているんですが、あくまでも国内法の原則に即して解釈するべきだということです。この間の参考人質疑の中でも、日本の実務では、何らかの犯罪を共謀して一名が実行すれば、共謀共同正犯として全員が処罰対象になる、さらに、日本では、予備罪や抽象的危険犯、詐欺罪、建造物侵入罪等が、犯罪の準備段階に当たる行為を広く処罰している、ですから、条約がターゲットにする重大犯罪の合意の内容を推進するための行為というのは対応できるんじゃないかという意見が出されておりますが、この点についてはどうですか。

〇水嶋政府参考人 お答え申し上げます。若干繰り返しとなって恐縮でございますが、この条約の第五条1におきましては、重大な犯罪の実行の合意の処罰化を求めております。それに加えまして、国内法上求められる場合には推進行為といったものをオプションとして認めるというふうになってございます。ただし、それに予備行為、予備罪というものを当てるといった場合には、先ほど申し上げましたように、客観的に相当の危険性の認められる程度の準備が整えられた場合ということで初めて処罰がされるという解釈になってございますし、この条約が求めておりますのは、もともと合意を処罰するということになってございますので、この条約が求めている義務を満たすことができないのではないかというふうに考えております。

〇畑野委員 できないのではないかと考えているということですけれども、条約の解釈というのは、国の方も、政府の方も、幅があって次々と変わってきたということですよね。だから、考え直すべきだということを申し上げなくてはなりません。高山参考人は、国内法の基本原則に従った、憲法に従った組織犯罪対策というのがどの国にも求められているというのが条約の根本的な考え方なんだ、ここから出発して初めて、条約の五条であるとか、立法ガイド五十一項にも、そして国連からの御回答も、全てが整合的に理解できる、そして、それに基づいて日本は条約に参加することができると考えておりますと言っているんです。そういう点では、条約について審査する国際機関は存在しない、レビューだという話がありましたが、報告に過ぎないわけですよ。そういう点では、今回の共謀罪法案によって刑法の大原則が根本から変更されようとしている。政府の言う条約の効果を実現するためにそのようなことを進めて、処罰の対象ではなかった合意を処罰の対象にしていく、人権に大きな制限を加える、このことは条約の求める範囲を超えていると言わなくてはなりません。百六十人を超す刑法学者の専門家の皆さんが反対の声を上げていらっしゃるんです。それで、私、伺います。国際組織犯罪防止条約には自首減免規定はありませんね。

〇水嶋政府参考人 国際組織犯罪防止条約におきましては、国内法上、自首減免規定を設けるべきというような規定はございません。

〇畑野委員 それでは伺います。共謀罪法案第六条の二第一項ただし書きには、「実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。」という自首減免規定があります。なぜ条約にない規定が今回の共謀罪法案に書かれているんですか。

〇林政府参考人 テロ等準備罪の自首減免規定は、自首による刑の減軽または免除を必要的なものにすることによりまして自首を奨励し、重大犯罪が実行されて甚大な被害が生ずることを未然に防止しようという、これは政策的な配慮に基づいて規定を置いているわけでございます。こうした規定を置いた理由でございますが、自首減免規定そのものについては、条約上明示的に求められているものではございません。しかし、テロを含む重大犯罪の発生を未然に防止しようとする点におきましては、これは条約の趣旨に沿うものでありますので、今回設けることとしたものでございます。

〇畑野委員 金田大臣にちょっと確認なんですけれども、今の刑事局長の答弁で、政策的な配慮に基づいて自首減免規定を置いたということですが、そのことでよろしいですか。

〇金田国務大臣 突然の御指名でございますが、ただいまの御質問にお答えしますが、私どもの刑事局長から申し上げたとおりであります。

〇畑野委員 しかし、かつての共謀罪法案のときから、このことは大変議論になってまいりました。  二〇〇五年十月二十六日の法務委員会での、日弁連の海渡雄一参考人からの発言です。このような規定があれば、犯罪を持ちかけた者が会話を録音するなどして相手の犯罪実行の同意を得た上で届け出た、録音テープ、ICレコーダーとかを持って届け出た場合、犯罪を持ちかけた方の主犯は処罰されず、それにうんと言って同意しただけの者が処罰される、こういう事態になりかねません。例えば、市民団体、労働団体の中に公安警察機関がスパイを送り込み、何らかの犯罪行為を行うことを持ちかけ、多くの関係者が同意したところで、それをテープに撮って警察に届け出た。犯罪の実行前に全構成員が逮捕されてしまう。しかし、持ちかけた本人は、その名前も住所も全くわからない、こういうことになりかねないわけです。こういう事態というのは、多くの国民を疑心暗鬼に陥れ、密告社会への道を開きかねないもの ですと。   日弁連は一貫して、重大な問題だと指摘されております。先日の国会内の院内集会でも、今も行われている市民監視の実態事例集で、七つの法律家団体、共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会の資料の中でもその実態が書かれているとおりです。  

 私は、このように条約に書かれていないことが書き加えられている法案、一方で、もう一つ聞きますけれども、対象犯罪についてなんです。公権力を私物化するような行為については入っていないという指摘があって、例えば警察などによる特別公務員職権濫用罪、これは入っておりませんが、なぜですか。

〇林政府参考人 特別公務員職権濫用の罪は、裁判、検察、警察の職務を行う者等がその職権を濫用して、人を逮捕し、監禁する罪でございます。この罪は、主体が、裁判、検察もしくは警察の職務を行う者またはこれらの職務を補助する者などに限定されております。現実の犯罪情勢等に照らし、これらの者が組織的犯罪集団の構成員となり、組織的犯罪集団の団体の活動として、当該犯罪行為を実行するための組織により実行することを計画するということ、これは現実的に想定しがたいと考えられたことから、今回対象犯罪としなかったものでございます。

〇畑野委員 資料につけさせていただきましたが、二〇〇〇年八月四日、警察官が公務員職権濫用の罪に問われて、大阪地裁は懲役三年、執行猶予五年を言い渡しております。あるいは、二〇一七年二月四日、警官、組員に捜査情報漏出疑惑、LINEで兄貴は再逮捕になっているよなどと送付したなど、そういうことは本当に枚挙にいとまがないわけです。一方で、恣意的に対象犯罪を選定したと言わざるを得ないんじゃありませんか。私は、緒方宅盗聴事件の住民訴訟の原告として、盗聴を許さないと訴えてまいりました。警察は、いまだに盗聴の事実も認めないし、謝罪もしない。このような警察の権限拡大を許すわけにはいかないわけです。先ほどからテロ対策と何度もおっしゃいますが、たった一人の犯人が行う単独犯のテロについては入っておりませんが、これはなぜでしょうか。金田大臣に伺います。

〇盛山副大臣 国際組織犯罪防止条約は、「一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進すること」を目的とするものであります。同条約の第五条の1は、組織的な犯罪に効果的に対処するため、重大な犯罪の合意または組織的な犯罪集団の活動への参加の一方または双方の犯罪化を締約国に義務づけております。そして、そこで言う合意罪につきましては、TOC条約五条の1によりまして、「一又は二以上の者と合意すること」とされております。そういうことで、単独犯よりも複数の者の方が、一旦計画され、実行される可能性が高く、一たび実行された場合、重大な結果、莫大な不正利益が生ずることが多く、悪質で違法性も高い、そういうことで、このような単独犯によるテロ等の計画行為をその対象としなかったということでございます。

〇畑野委員 先ほどから、テロを含むとかテロ対策、そしてテロに万全にと言うけれども、こういうローンウルフ型のテロというのは入っていないということですよね。  つまり、このTOC条約は何か。  きょう資料につけましたけれども、参考人質疑でも紹介されたように、アメリカのノースイースタン大学のニコス・パッサス教授が、TOC条約の立法ガイド作成の中心人物でありますが、五月五日の朝日新聞のインタビューに答えて、TOC条約の目的はテロ対策ではないと言っているんです。なぜかといえば、「条約はイデオロギーに由来する犯罪のためではない。犯罪の目的について「金銭的利益その他の物質的利益を得ること」とあえて入れているのはその表れだ」「思想信条に由来した犯罪のための条約は既に制定され、国連安保理の決議もある。テロを取り締まるためには、これらが国際基準となっている」というふうに答えております。  

 高山佳奈子参考人は、「テロ対策については既に立法的な手当てがなされております。五輪の開催は二〇一三年九月に決定いたしましたが、二〇一四年に改正されましたテロ資金提供処罰法の新しい条文により、テロ目的による資金、土地、建物、物品、役務その他の利益の提供、これが包括的に処罰の対象に新しくなったわけです。」「五輪対策は、事実上、テロの観点で申しますと完了しているように思われます。」というふうに言っているんですね。テロ対策というふうに国民を偽ってテロ等準備罪と言うわけですけれども、実態は共謀罪じゃありませんか。私は、この共謀罪というのは内心を処罰対象にする憲法違反の法案だ、断固として廃案を強く求めて、質問を終わります。