第192回国会 2016年11月18日文部科学委員会 

不登校児追い詰めるな 畑野氏が反対 教育機会確保法案を可決

 不登校の子どもたちへの対応と夜間中学の設置促進を柱とする教育機会確保法案が18日の衆院文部科学委員会で自民、民進、公明、維新などの賛成多数で可決されました。日本共産党、社民党は反対しました。

 反対討論で日本共産党の畑野君枝議員は、夜間中学は8都府県に31校あるだけで、法案によって各県ごとに協議会を設けることは「夜間中学の開設の拡大につながり、賛同します」と表明しました。

 不登校への対応については、「過度に競争的で管理的な学校社会から自分の心と命を守るための緊急避難・自己防衛」であり、「子どもの命の確保、安全安心を第一に、居場所や人間関係の確保が求められる」と述べました。

 法案は「教育機会の確保」を掲げて、学校復帰を前提にしていると指摘。すでに「不登校ゼロ」などの数値目標が導入され、子どもと親を追い詰めているとして、「性急に『教育機会の確保』を迫ることは、子どもの成長・発達を傷つけ、子どもと親を今以上に追い詰める危険性がある」と述べました。

 さらに畑野氏は、国連からも高度に競争的な学校環境が不登校を助長していると指摘されているにもかかわらず、不登校の原因を主に子どもの心理に起因するものと定義し、学校の在り方を不問にしていると批判しました。

(2016年11月19日(土)しんぶん赤旗掲載)

 

【会議録】

○畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案について質問をいたします。

 この法案は、夜間中学の部分と不登校の部分との二つから成る法律案です。夜間中学については、当事者、関係者が一致して賛成をしており、我が党も賛同するものです。しかし、不登校の部分には、本来、一番歓迎されるべき当事者、関係者の中から強い批判が起こっています。慎重審議などを求める請願署名は、十一月十五日時点で一万五百三十筆に及び、まだ集まってきているという状況です。紹介議員は五十五人に及びます。ですから、我が党は、夜間中学の部分は一致しているのだから、まず立法化をする、不登校の部分については、これは分けて引き続き話し合いを継続しようと主張をしてまいりました。

 まず、夜間中学について伺います。十五歳を過ぎて義務教育を修了していない人は全国に百数十万人いるとされていますが、公立夜間中学は八都府県に三十一校あるのみで、北海道、東北、中部、四国、九州には一校もありません。夜間中学が設置されている地域においても、入学要件が市内在住、在勤などに限定されている場合があって、区域外に住む人々の就学の機会が制約されている状況があります。

 本法案には、夜間中学の拡充、設置拡大を進めるために都道府県ごとに協議会を設置することが盛り込まれていますが、努力義務にとどまっています。

 松野文部科学大臣に伺います。 全国各地で夜間中学が設置、拡充される必要がありまして、そのためにも全ての都道府県で協議会を設置すべきだと考えますが、いかがですか。

松野国務大臣 夜間中学の設置等に当たって、都道府県及び域内の市区町村等が協議会を組織して、役割分担をしながら取り組むことは有効な手段であると考えております。一方で、地域の実情に応じて、それ以外の方法により協議を行ったり、周辺の市町村が互いに協力したりして取り組みを進めることも考えられます。  文部科学省としては、先ほど答弁もさせていただきましたけれども、各都道府県に少なくとも一つは夜間中学が設置をされるよう、本法案が成立した際には、各地方公共団体において協議会の仕組みも活用しながら検討を進めていただきたいと考えております。

畑野委員 各県でつくろうということですから、ぜひこれを進めていただきたいと思います。  現在、全国で約三十校の自主夜間中学が頑張っています。これら自主夜間中学の関係者を協議会の構成メンバーに入れる必要があるのではないかと思いますが、提案者、いかがでしょうか。

富田議員 この問題は、もう畑野先生は当然御存じのように、PTの中でもかなり時間を割いて話し合いをしました。結論として、今のような第十五条第二項第三号において、協議会の構成員として、「学齢期を経過した者であって学校における就学の機会が提供されなかったもののうちその機会の提供を希望する者に対する支援活動を行う民間の団体その他の当該都道府県及び当該市町村が必要と認める者」というふうに最終的に規定させていただきました。この「民間の団体」には、例えば自主夜間中学の関係者も含まれる場合もあるというふうに考えております。  いずれにしても、各都道府県及び市町村におきまして、地域の実情に応じて検討していただき、協議会の構成員をお決めいただきたいと考えております。一番詳しいのは多分先生がおっしゃったとおりだと思いますので、必ず入っていただけるようになっていくのではないかと期待しております。

畑野委員 提案者の、自主夜間中学をきちっと位置づけていくという御答弁でした。  そこで、松野大臣に伺います。  公立夜間中学でフォローし切れない人が通う自主夜間中学への今後の支援、施設利用費免除措置などを行う必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。

松野国務大臣 公立夜間中学のみならず、いわゆる自主夜間中学についても、義務教育を卒業していない者等に対する重要な学びの場として機能していると認識をしております。  文部科学省としては、自主夜間中学に対する取り組みについて、各地方公共団体に対し、地域の実情に応じて適切に検討いただくよう促してまいりたいと考えております。

畑野委員 ぜひ国としても支援を進めていただきたいと思います。  次に、不登校について伺います。  まず、不登校の認識についてです。  不登校は一九八〇年前後から急増し続け、二〇〇〇年代に入っても高どまりのままです。十二万六千九人という結果です。これは前年度の約十二万三千人からさらにふえていて、大きな社会問題になっています。  その多くは、競争的で管理的な学校社会から自分の心と命を守るための緊急避難、自己防衛だと言われています。わけのわからない校則、いじめや体罰、あるいはそれを見ていることの苦痛、忙し過ぎる生活、学校生活の中で何らかの理由で身も心もすり切れた子供たちは、なし得る最後の行動として学校を休みます。そして、不登校を始めると、さらに苦しみを負います。行けない自分を責め、期待を裏切っている罪悪感にさいなまれる。不登校の子を持つ親も、自分の子育てが間違っていたかと苦しむ。そして、このままだと大変なことになると我が子に登校を促せば、子供が暴れ、家の壁に穴があくなど、家庭が何とも言えない状況になっていくわけです。  そんな場合に、子供にまず必要なのは何か。多くの当事者は、まず命の確保、安心、信頼できる人間関係のある居場所だとおっしゃいます。教育機会は、そのずっと後になって、ケースによっては数年間の命がけの葛藤を経て、教育を受けてみようとなるというんです。  提案者は、不登校の子供に何よりも必要なのは命の確保、安心であり、教育の機会はその後にやってくる課題だという認識はありますか。

河村議員 答弁申し上げたいと思いますが、その前に、この不登校問題を扱う勉強会に畑野先生は大変熱心に御出席をしていただいて、いろいろな角度から御指摘をいただいて、我々も勉強させていただきました。  さて、今御指摘の点はあの場においてもいろいろ議論があったところでございますが、不登校の原因にはいろいろな原因があるわけで、先ほどの寺田先生は、いじめからだ、こうおっしゃった。現実に不登校の状態の子供たちがたくさんいるということについては、やはりそれは直視しなきゃいかぬ。そして、教育は、やはり命を育む教育でなければならないわけでありますから、命第一ということは当然の前提だというふうに我々も考えております。  これは、不登校児童だけの問題じゃなくて、あらゆる児童についても言えることではございますが、特に、不登校状態にあるということは、その児童において、登校している子供たちと違った心理的ないろいろな問題を抱えているということ、これをやはりしっかり受けとめた形での対応をする。したがいまして、命最優先であるという御指摘は当然の前提であるというふうに考えます。

畑野委員 命最優先とおっしゃいました。  一方で、子供の心理的な問題、それに私は逃げちゃいけないと思うんです。本当に命優先というのならば、なぜこのような法案のたてつけになっているのかということを問わなくてはなりません。  不登校経験者の方、Oさんは、自分の体験を次のように語っています。  私は昔、不登校でした。学校へ行くことがただただ苦痛でした。でも、家にいれば楽に過ごせたわけではありません。自分は学校に行けないだめな人間なんだと自分を責めていたからです。こういうとき、体は動きません。だめな人間でごめんなさい、だめな人間なのに生きていてごめんなさい、これは決して私一人の特殊な考え方ではないと思います。多くの不登校の子は、ただ学校に行けないというだけで自分を責め、時には生きていることすら悪いことだと追い詰めたりしています。そこへの、みんな待っているよ、学校においで等の働きかけはもちろん、学校が無理ならフリースクールもあるよ、それも無理なら家で勉強したら等の、働きかける側が、どんなに善意からでも、いえ、善意であればこそ、自分を責めている当事者には凶器になります。みんながこんなにいろいろしてくれているのに、自分はそれに応えられない超だめ人間なんだと思わせるには十分だからです。  提案者に伺います。  教育機会の確保がメーンの法案のもとで、不登校している子供とその親は追い詰められるのではありませんか。

河村議員 この法案においては、基本理念として掲げてありますように、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにするということが大前提でありまして、不登校の施策がこの基本理念に基づいて行われるわけであります。  第十三条にも、「学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、」と同時に、「個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、」ということで、そういうような観点に立って措置をやっていこうということであります。また、二十条におきましては、教育及び福祉に関する相談を初めとする各種の相談に乗るための体制整備ということでありますから、この法案によって、個々の児童生徒たちの意思といいますか状況に応じて、それを十分尊重しながらやっていかなきゃいかぬということでありますから、その結果において、今議員御指摘のように、追い詰めるようなことになってはいかぬ、こう思っているわけであります。  今回のこの法案によって、いわゆるフリースクールといったようないろいろな多様な機会もある、そういうものを包含した中で、どのような支援ができるかということを考えていこうということで、大きな一歩になるということでこの法案を出させていただいた、こういうことであります。

畑野委員 教育の機会よりも命の確保、安心の方が大事なんだということなんです。ところが、法案のタイトルはどうなっているかといえば、教育機会の確保等なんです。メーンは教育機会。今おっしゃった支援などは、「等」の中に隠れているだけで、つけ足しじゃありませんか。明らかに順番が違う。  そのいろいろな対応をするという名のもとに、現実はどうかといえば、学校復帰の圧力が強められて、子供と親が追い詰められている現状があるんです。だから、当事者や関係者は心配しているんです。  その一つが、不登校の減少を数値目標にして追求する現場の状況です。もとは国です。教育振興基本計画で、成果指標として全児童生徒数に占める不登校児童生徒の減少を挙げて、それによって、地方自治体の計画では、例えば、二〇一七年度までに不登校児童生徒の割合がゼロになることを目指すという北海道や、二〇一〇年度比で、二〇一六年度までに小学校で五十人以上、中学校で五百人以上減少させるという埼玉県など、各地で数値目標を掲げております。  しかし、不登校というのは、いじめや暴力などの問題行動ではありません。やむにやまれず子供が選択する、身を守る行動です。むしろ、不登校は子供の命のために保障されるべきものです。それを数値目標で、例えば、来年にゼロにしろと言えばどんなことになるでしょうか。命を守る、その必要のために不登校をしている子供にとって、来年の自分の存在は許されないということになるではありませんか。  子供や親たちからも、不登校数ゼロとか半減とか言われれば自分たちが否定されているように感じると訴えるのは当たり前です。  こうした数値目標で不登校の子供を追い詰めるようなことは、やめるべきではないでしょうか。提案者、そして松野大臣に伺います。

河村議員 先ほど来から、命の大切さということについては私も共有をしているというふうに思います。  政府あるいは地方自治体が計画を立てていく、そのことそのものを、今ここで私の方からよしあしについて述べる立場にはございませんが、ただ、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送ってもらいたい、また安心して教育を受けさせてもらいたい、そうした学校における環境づくりというのは非常に大事だということ、このことは基本的な考え方にあるわけでありまして、教育委員会あるいは学校が、児童生徒が安心して教育を受けられる環境をつくっていく、これに向けてやはり努力することは積極的に評価されなきゃいかぬというふうに思うんです。  そのことが、結果として、不登校児をどんどん引っ張り出すことによって数字が上がったとか、そのことのために今回の法案があるとは私は思っておりませんで、先ほど申し上げました理念にもありますように、その過程過程、あるいは不登校の子供自身、それぞれの状況の違いがありますから、それについて支援を行うことが必要だし、学校が、そのテリトリーの中で不登校児がいるということについては、やはりどういうことでそういうことになっているかという理解を深めていく必要はある。また、そのことが、将来、不登校児をつくらないように努力をすることにつながっていくと私は思うんです。  したがって、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援ということ、あるいは意思を十分に尊重することの重要性ということは基本理念に強くうたってあるところでありますから、そういうことについて配慮をして本法案を運用していただくことが大事だと思いまして、おっしゃるように、不登校の子供を追い詰めたりする、そのようなことにならないような配慮というのは当然あった上で、全ての子供が安心して学校に出られる、学校で教育が受けられる環境を整えていこうということ、それは不可能なことではないと思っております。  しかし、さっき申し上げましたように、あらゆる教育の機会、多様な機会というものを設けていこうということですから、そういうものを考えながら、やはり教育現場、義務教育における教育の機会均等というこの基本は崩すわけにいきませんけれども、その中にあって、多様な教育の機会も持ちながら、多くの児童生徒が、豊かな学校生活といいますか、教育の中にあって、教育が受けられる環境をつくっていこうというその第一歩として、この法案を大きな前進として出させていただいた、こういうことであります。

松野国務大臣 児童生徒が安心して登校できるように関係者が努力をするということは重要なことであります。教育委員会や学校におけるそのような努力というのは、やはり積極的に評価をされるべきだと考えております。ただし、児童生徒の状況や意思に配慮しながら支援を行うということが重要であることも当然のことであります。  今、不登校の状況にある子供たちも、それは、一人一人状況も違う、環境も違う。その中において、先生からお話があったとおり、非常にシリアスな状況の中にあって、その子に対する接し方に関して、慎重を要さなければいけないということもあると思いますし、自分で学校に行きたいと思いながら、何かしらの理由によって今学校に足が向かない子供たちに相談、アドバイスをすることによって、その子供たちが学校現場に戻って、結果、その子にとっていい方向に向かうこともあるかと思います。それは、個別の状況に応じて適切に判断をしていくということになるんだろうと思います。

畑野委員 ですから、数値目標などやめるべきだというふうに言いました。やめるとは言わない、こういう点ではだめです。  数値目標というのは、企業などでは掲げられることはありますけれども、教育、特に不登校というナーバスな課題で掲げられればどうなるか。子供一人一人の人生にどう寄り添うかではなくて、とにかく数を減らす、そのために学校に来てもらうとかいう本末転倒のことが起こるわけです。  校門タッチで出席扱い。学校の校門をタッチしたら出席扱いというやり方があると訴えられました。親の会の小学校六年生の娘さんのお母さんが、せめて校門まで連れてきたら出席扱いにしますと担任から言われたと語っているんです。現に、こういうことが今あります。  不登校のお子さんは、学校近くを車で通ると、車の中で身を隠します。学校や学びで、友達の中で傷つく経験を重ね、もう無理と、最後の一滴が満杯のコップからあふれ出た状況です。最後の一滴が満杯のコップからあふれている。学校へ向かうと、涙が出たり、身体症状として腹痛が出たり、頭痛を訴えたりします。今学校へ行くと自分が壊れてしまう。正常な反応です。自分の命を守る最後の手段で、気持ちをわかって、この苦しさ、しんどさ、つらさを受けとめて、助けてと言っているんです。死にたいと、多くの不登校のお子さんが親御さんにぶつけます。  学習活動の支援云々ではなく、生存の危機に直面しているお子さんもいます。そこまで追い詰めるのは何なんですか。学習活動よりも休息、休養ですというふうに語っています。私は、数値目標を正そうとしない皆さんに猛省を求めたいと思います。  さて、松野大臣に伺います。  文部科学省が従来言ってまいりました不登校の定義とは何でしょうか。

松野国務大臣 平成十年度から、不登校児童生徒を、一年度間に連続または断続して三十日以上欠席した児童生徒のうち、病気、経済的な理由を除き、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因、背景により児童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるものと定義をしております。  なお、平成四年度から平成九年度までは、学校嫌いを理由に一年度間に三十日以上欠席した児童生徒を登校拒否児童生徒として定義していたと承知をしておりますが、現在、もちろんこの定義は使っておりません。

畑野委員 そこで伺います。  国の定義では何らかの心理的負担とありますが、法案では、学校における集団の生活に関する心理的負担と、あたかも不登校の子供は集団の生活に心理的負担を感じる子供だと言える表現になっております。  提案者に伺います。どういうことでしょうか。

笠議員 今先生からお話がありましたように、私どもは、この定義について、法案第二条第三号においては、「相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるものをいう。」としております。  ただ、この不登校の事案については、先ほど来さまざま皆様方の御指摘もあるように、家庭あるいは学校にかかわるさまざまな要因が複雑にかかわり、登校できない状態になっているものと私どもは考えております。  文部科学省の調査においても、小中学校における不登校児童生徒については、友人関係であったり、あるいは学業不振であったり、本当にいじめであったり、さまざまなこうした不安の傾向があるケースというものが多く見られるわけでございます。  こうした点を踏まえて心理的負担と、負担を規定したものでありますけれども、これはあくまで例示であり、具体的な定義においては、心理的負担以外のさまざまな要因、背景を考慮した上で定められるものだと思っております。

畑野委員 それに加えて、もう一つ見過ごせないことがあります。国の定義にはある社会的要因、背景が、条文からなくなっております。  国の一九九二年の調査研究協力者会議の報告では、不登校の社会的な要因として、社会においても学歴偏重等受験競争をあおる風潮などが学校や親に不安感を与えており、それが日常生活の中で子供自身にプレッシャーやストレスを与え、将来への不安感を感じさせ、学習への意欲や将来への希望を失わせてしまっているとして、それ以来、定義に社会的要因、背景を明記したわけです。  提案者はこれまでどおり大丈夫ですと言うんですが、その法律上の保証はどこにあるのか、伺います。それと、もう時間がありませんので、松野大臣、先ほど大臣が答弁された、これまでの国の不登校の定義を引き継がれますか。二点、まとめてお答えください。

笠議員 今、畑野委員から御指摘のあった点については、この第二条第三号の中で、「不登校児童生徒 相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるものをいう。」ということで、この「その他の事由のため」のところから読み込んでいただければと思います。

松野国務大臣 文部科学省の問題行動等調査においては、不登校の定義を、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因、背景により児童生徒が登校しない、あるいはしたくてもできない状況にあるとしており、これを踏まえ、定義を定める予定であります。

畑野委員 時間が来ました。まだたくさん質問があります。国連子どもの権利委員会から、高度に競争的な学校環境が不登校などを助長している可能性があると懸念されてまいりました。不登校について、世界に比べて余りに競争的で管理的な学校のあり方を是正することをぜひ検討するべきです。そのことを求めて、私の質問を終わります。

【反対討論】

○畑野委員 私は、日本共産党を代表して、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案に反対の討論を行います。
 本法案は、議員連盟の場において、夜間中学、フリースクールへの支援をどうするかとして検討されてきたものです。しかし、本法案は、不登校の子供たちへの対応と夜間中学の設置促進を内容とするものです。一緒に法案化するのではなく、分離すべきであることを改めて申し述べます。
 その上で、夜間中学は、現在、全国で八都府県に三十一校あるのみです。また、設置されている地域においても就学の機会が制約されている状況があります。都道府県ごとに協議会を設けることで、夜間中学の開設の拡大、拡充につながり、この点については賛同いたします。
 問題は、不登校の部分についてです。不登校は、現在十二万六千人となり、大きな社会問題となっています。その多くは、過度に競争的で管理的な学校社会から、みずからの心と命を守るための緊急避難、自己防衛としての不登校です。学校に行けない自分を責め、不安や緊張感からくる命の危機にさいなまれ、家庭崩壊といった深刻な状況も少なくありません。不登校を生み続ける学校教育のあり方を根本的に改め、子供の命の確保、安全、安心を第一に、居場所や人間関係を確保することが求められています。
 しかし、本法案は、不登校の子供への対応として、教育機会の確保を掲げ、学校復帰を前提とした現在の国の施策を正当化しています。既に、国の方針のもと、不登校ゼロ、半減などの数値目標が導入され、子供と親を追い詰めています。性急に教育機会の確保を迫ることは、子供の成長、発達を深く傷つけ、子供と親を今以上に追い詰める危険性があります。
 一九九〇年代に、国は、不登校は誰にでも起こり得る、競争的教育もその一端となっていることを認め、国連子どもの権利委員会からも、高度に競争的な学校環境が不登校などを助長している可能性があると懸念されています。しかし、本法案は、不登校の原因を主に子供の心理に起因するものと定義し、不登校を生み続けている学校のあり方を不問にしています。
 以上のように、不登校の子供たちに求められているものとは逆行している本法案には賛成することができないことを表明し、討論といたします。(拍手)