第192回国会 2016年11月16日国土交通委員会

強引な買収許されず 畑野氏 リニア用地で追及

 日本共産党の畑野君枝議員は16日の衆院国土交通委員会で、リニア新幹線建設のための用地買収が進んでいないことを明らかにするとともに、住民生活と環境を破壊するリニア計画を批判しました。

 畑野氏の質問で、立ち退きなどの対象地権者が神奈川県で約1500人、山梨県で約1300人に上る一方、補償契約を結んだ地権者はまだ少ないことが明らかになりました。

 畑野氏は、リニア車両基地の予定地にされている相模原市緑区鳥屋(とや)地区の地域振興協議会が車両基地建設に反対していることを指摘。山間を360万立法メートル埋め立てる計画で、全50戸弱の同地区谷戸集落の一部が集団移転させられる可能性があり、住民はコミュニティーが壊される不安を抱いています。畑野氏は、住民の声を聞けと主張。石井啓一国交相は「地域の理解と協力を得て進めていくことが重要だ」と繰り返すだけでした。

 畑野氏は「強引な用地買収は許されない」と警告。用地買収の際、地権者が自宅に交渉に来た事業者に退去を求めても応じてもらえず、それに困惑して結んでしまった契約は消費者契約法上、「取り消し可能」(消費者庁)なことが確認されました。

( しんぶん赤旗2016年11月17日付け)

 

【会議録】
 畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 リニア中央新幹線の建設について伺います。
 私の地元の神奈川県、山梨県では、駅や車両基地、変電所建設のために、市民への立ち退きや部分買い取りなどの問題が起こっています。神奈川県、山梨県では、対象となる地権者は何人になりますか。また、そのうち、補償契約を締結した地権者は何人になりますか。
奥田政府参考人 お答え申し上げます。
 リニア中央新幹線の用地取得における地権者数につきましては、現在行われております、また今後行われます予定の用地測量によって定まるものでございます。このため、現時点においては、都道府県別の地権者数は確定していないものと承知をいたしております。
 また、補償契約を締結した地権者数につきましては、JR東海によりますと、用地取得が始まって間がないことから、現段階で公表する予定はないものの、今後、一定程度用地測量や用地取得が進んだ段階で、用地取得の進捗率として公表することを検討しているというふうに聞いております。
畑野委員 神奈川県と山梨県の概数についてでいいですから、お答えください。
奥田政府参考人 お答え申し上げます。
 JR東海が記者会見等で提示をいたしました大まかな数字といたしまして、これは登記簿から推計したというふうに伺っておりますが、移転をお願いする、もしくは区分地上権を設定させていただく地権者数は、品川名古屋間全線で約五千人程度、うち神奈川県が約千五百人、山梨県が約千三百人と想定されているというふうに伺っております。
畑野委員 わかりました。まだまだ詳細をつかむような状況には進んでいないということがわかりました。
 にもかかわらず、相模原市では、測量に応じないのはお宅だけと言って、強引に測量しようと地権者のお宅に何度も日参している事案があると伺っております。地域の人間関係を分断し、地権者に過度な精神的圧迫をするようなやり方は行われるべきではありません。
 消費者庁に伺います。
 用地買収は消費者契約法の対象になり、地権者が用地買収の交渉者に対して退去してくれと意思を示したにもかかわらず、退去しないで、困惑して締結した契約は、取り消すことができるということですね。
小野政府参考人 お答え申し上げます。
 消費者契約法につきましては、消費者と事業者の間で締結される契約が適用の対象となります。よって、リニア新幹線の工事に係る用地買収におきまして、事業者が消費者から土地を購入する契約を締結した場合には、当該契約につきましては、消費者契約法が適用されると考えられます。
 消費者契約法が適用される場合、これは最終的には裁判所の判断になりますけれども、用地買収のために消費者の住居に来訪した事業者に対しまして、その消費者が退去を求めたにもかかわらず事業者が退去しなかったことによりまして、困惑し、土地売買契約を締結したときには、消費者は、当該契約を取り消すことができるということでございます。
畑野委員 確認をいたしました。
 そこで、石井国土交通大臣に伺います。
 リニア建設のために強引な用地買収はあってはならない、そういう立場でJR東海を指導すべきだと思いますが、いかがですか。
石井国務大臣 用地交渉につきましては、事業実施主体でありますJR東海及び用地取得に関する事務を受託しております地方自治体の責任で行われるべきものでございます。
 したがいまして、国土交通省としては、個別の用地交渉の詳細なやりとりについては承知をしておりませんが、いずれにいたしましても、用地取得につきましては、関係法令に適合して行われるべきことはもちろんでありますし、地域の理解と協力を得て進めることが重要でございます。国土交通省といたしましては、JR東海に対しまして、適切な交渉が行われるよう、指導監督してまいりたいと存じます。
畑野委員 しっかり指導していただきたいと思います。
 山梨県南アルプス市では、戸田地区、宮沢地区の住民の方々が、自治会を挙げてJR東海の説明会を拒否し、測量にも入らせていません。地区の真ん中を斜めに貫かれたルート地図を見た住民の方々は、勝手に線引きし、コミュニティーを分断し、住民のルート変更の要求にも聞く耳を持たないJR東海に怒っておられるからです。当然のことだと思います。
 その上、自宅の敷地がJR東海の取得用地と買収されない土地、つまり残地に分断されて、使い道のない残地、例えば角にある三角形の土地などについては補償されないということで、さらに不安を募らせています。
 南アルプス市の九月定例市議会でもこの問題が議論されました。国の損失補償基準では、土地等の取得や土地等の使用によって土地等の権利者が通常生ずる損失はこれを補償するものとするとなっており、JR東海の説明はこの損失補償基準に照らしても不十分だとして、市は、住民の要望がかなえられるようJR東海に強く要望を出していくと答弁いたしました。
 国土交通省として、JR東海に対して、住民の要望に応えるように指導すべきではないかと思いますが、石井大臣、いかがでしょうか。
石井国務大臣 リニア中央新幹線の用地取得に伴う損失補償につきましては、JR東海は、国の指針であります公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱及び公共用地の取得に伴う損失補償基準に基づき対応することとしております。
 いずれにいたしましても、リニア中央新幹線事業の推進に当たりましては、地域の理解と協力を得ることが重要でありまして、用地取得につきましても、まずは関係者に対して丁寧な説明を行うよう、JR東海を指導監督してまいります。
畑野委員 さらにその点で伺いたいんです。本当に住民の理解が得られているのかということです。大臣が指導されるとおっしゃいました。
 リニアの車両基地建設は、相模原市緑区鳥屋地域が予定地とされております。伺ってまいりました。緑深い山合いに、幅四百メートル、長さ二キロメートル、約五十ヘクタール、本当に広大な地域に及んで、車両基地を三百六十万立米の盛り土で埋めて築こうとしております。鳥屋地域振興協議会からは、車両基地の建設は地域コミュニティー全体への影響が懸念される、基本的には反対だと、一昨年九月に市長に要望書を出されています。
 谷戸地区は、集落の約五十戸弱を集団移転させる計画で、住民の方からこういう声が寄せられております。リニア中央新幹線のために今まで築いた生活を変えられたくはない、移転するのかしないのか、いまだにわからず落ちつかない、自然豊かな地域を壊されたくない、鳥屋の中に全戸移転と要望しているが、どのくらいの世帯が鳥屋に残るだろうか、コミュニティーが壊されることは目に見えている、家だけ移転になっても、畑や山、墓などが残され、今後の管理が大変、退職後の楽しみであった農作業ができなくなるのではないか、そして、鳥屋の地価は安いが、どの程度で買い取ってくれるのか不安。もう不安だらけという声を寄せてくださっております。
 その他の地域の方も、蛍の飛び交うすばらしい先祖代々の土地、小学生も本当に楽しみに体験学習で来る、この地域を守ってほしいと訴えておられました。
 石井大臣、自然を破壊し、住みなれた地域が壊され、多数の住民を移転させることについて、住民の反対の声をどのように受けとめられますか。
石井国務大臣 相模原市緑区鳥屋地区の車両基地の建設につきましては、平成二十六年三月、神奈川県知事から、環境影響評価準備書に対する意見といたしまして、車両基地の建設に当たって、動植物への影響を回避した施設配置や造成計画を第一に検討すること、車両基地については、交通分断の検討のみではなく、地域の一体性や社会地域への影響を予測、評価すること、車両基地の計画段階から事業の進捗に応じて具体的な事業内容を積極的に公表すること等がJR東海に送付されました。
 これらに対しまして、JR東海は、環境影響評価書におきまして、環境保全措置の実施により生物への影響をできるだけ回避、低減していく、やむを得ず生息、生育環境が縮小、消失してしまう種に対して、個体の移植や代替巣の設置等の代償措置を実施する、車両基地の詳細な計画の確定に当たっては、生活圏や地域文化への影響を最小限にしていくよう努める、車両基地の施設計画等について、事業説明会や用地説明等の場において地域住民等へできるだけ早い時期にお示しすることとしております。
 これらを踏まえまして、JR東海におきましては、車両基地計画地に生息する一部の種の生息環境が縮小、消失する場合について、湿地、草地等の類似した環境を創出することを環境保全措置として位置づけ、現在、その具体的な内容について検討するとともに、地域の分断等への対応について、引き続き地元との意見交換等を行っていると聞いております。
 これら環境影響評価書に記載された事項について、JR東海が引き続き誠意を持って対応していくことが必要であると考えておりまして、国土交通省といたしましては、JR東海に対して、地域の理解と協力を得て、また環境の保全を図りながら事業を進めるよう、指導監督してまいりたいと存じます。
畑野委員 失った環境はもとには戻らないわけです。大臣もぜひ現地に行って見てきていただきたいと思います。
 リニアの道志川橋梁がかけられる相模原市緑区道志地区の計画予定地にも行きました。住民、自治体の方からお話を伺いました。静かな山合いの百四十世帯ほどの集落で、橋の建設のために曲がりくねった狭い市道を工事用のダンプが行き交うことは不可能です。もしダンプが入ってくれば、静かな住民生活は破壊されてしまうという声です。この声にどのようにお答えになりますか。
石井国務大臣 御指摘の道志川橋梁及びその両側の山岳トンネル工事に伴う工事用車両による騒音、振動への影響につきまして、JR東海は、地元である相模原市道志地区において開催された事業説明会におきまして、車両の運行計画の配慮、工事の平準化、工事従事者への講習、指導など、環境影響評価書に記載した環境保全措置の内容等について説明を行っており、現在、引き続き地元との意見交換等を行っているとのことでございます。
 御指摘の箇所の工事については、まだ契約手続には入っておりませんで、具体的な工事用車両の運行ルートにつきましては、今後、工事が契約され、現地工事に着手されるまでの間に、工事説明会等の場を通じて地元の方々に説明されることとなります。
 国土交通省といたしましては、引き続き、JR東海に対しまして、地域住民に十分な説明を行うとともに、地元の理解と協力を得ながら、環境保全についての配慮が適切になされるよう、指導監督してまいりたいと存じます。
畑野委員 推進するのは難しい地域だと思います。
 さらに、隣接する相模原市緑区の津久井地区ですが、宮ケ瀬ダム関連工事の導水路掘削によると考えられる水がれ等が発生した経過がございます。水がれの痛恨の碑が建てられています。近くには横浜市の水源地としての施設もあります。
 ですから、リニアのトンネル工事によって水がれや水質汚染についての懸念がありますが、これらの問題に対してJR東海はどのように対応するのでしょうか。
石井国務大臣 御指摘の相模原市津久井地区を含む山岳トンネル工事に伴う水資源への影響に対する環境保全措置といたしまして、JR東海は、環境影響評価書の中で、工事の施工に先立ち、事前に先進ボーリング等を用いて地質や地下水の状況を把握した上で、必要に応じて薬液注入を実施することや、覆工コンクリート、防水シートを設置することにより地下水への影響を低減する、工事により排出する濁水は、必要に応じて、沈殿、ろ過、中和等の対策により、水質の改善を図るための処理をした上で排出する、回避、低減のための措置を講じても水源の機能をやむを得ず確保できなくなった場合は、代償措置としてその他の水源を確保するとしております。また、これらの水資源に対する環境保全措置について、事業説明会等を通じて地元の方々に説明していると聞いております。
 国土交通省といたしましては、引き続き、JR東海に対しまして、地域住民に十分な説明を行うとともに、地元の理解と協力を得ながら、環境保全についての配慮が適切になされるよう、指導監督してまいりたいと存じます。
畑野委員 大事な水源地を壊してはならないと思います。
 最後に私、川崎市でのリニアの建設計画について伺います。二つまとめて伺いますので、お願いします。
 一つは、川崎市宮前区にあるリニア梶ケ谷非常口です。
 中原区等々力から宮前区犬蔵、麻生区東百合丘までの掘削による残土が排出される。周辺道路は今でも、東名インターや国道二百四十六号線につながる道路で、交通量は著しく多いところです。
 ダンプ車両による排出残土の輸送についてJR東海は調査をしているというふうに聞きますが、ダンプなどの工事車両の通行がふえれば環境がさらに悪くなる。この点で、市街地の運搬ルートを明らかにすべきだ、ダンプ車両による輸送はとめるべきだと思うのが一点。
 それからもう一つは、その先の、きょう資料をお届けしておりますが、市の臨海部の埠頭へ輸送する三つの候補地なんです。
 これは、幸区から中原区にかけて貨物線で輸送するということなんですが、一体どこを通るのかというのは黒塗りでわからないわけなんですね。駅名や交差点、踏切は黒塗りになっております。一日八百四十台ものコンテナダンプが走ることになるルートも検討されている。
 川崎公害の地です。大気汚染がひどくなるということは許されないと思いますが、この二点、大臣の認識を伺って、質問を終わります。
石井国務大臣 中央新幹線の環境影響評価書では、川崎市の梶ケ谷非常口からの建設発生土の量は、約百五十一万立米を見込んでおります。
 環境影響評価書での建設発生土の輸送に伴う影響評価については、ダンプトラックでの輸送を想定して行っておりますが、神奈川県においては、梶ケ谷非常口から排出する発生土をできる限り鉄道貨物を活用し臨海部等へ運搬する計画とし、大気質、安全交通等の環境影響の低減に努めていくとされております。
 このことを踏まえまして、JR東海は、鉄道貨物を活用した場合の川崎市臨海部からの積み出し候補地の検討等を行うため、川崎市臨海部における調査を川崎市港湾局に委託して実施したと聞いております。
 この調査におきましては、貨物列車にて積み出し地まで運搬するケースでは、ダンプトラックによる交通への影響は生じないとされておりますが、一方で、一部の踏切において遮断時間の増加が指摘されていると聞いております。これを受け、現在、JR東海におきまして、利用予定ルートの踏切の遮断時間について調査をしているところであります。
 国土交通省といたしましては、川崎市への委託調査結果や、今後のJR東海における調査結果を踏まえ、建設発生土の運搬については、環境影響に配慮して、可能な範囲で鉄道輸送が活用されるよう、JR東海を指導監督してまいります。
畑野委員 終わります。