第190回国会 2016年5月13日法務委員会

申告権がおろそかに 外国人技能実習法案に対しての批判の質問

 13日の衆院法務委員会で日本共産党の畑野君枝議員は外国人技能実習法案・入管法改定案についてただしました。

 法案は、実習生から法令違反の申告を受ける窓口を、新たに設ける機構に設置するとしています。しかし、現状でも労働基準監督署に申告できるのに、行政相談窓口を記載した「技能実習手帳」に申告権の説明は書かれていません。畑野氏は、「政府が真剣に対応してこなかった表れだ」と批判。母国語での対応も不十分だと指摘しました。

 厚労省の宮川晃職業能力開発局長は、手帳には「ご指摘のとおり、申告について記載がない」「今後、適切な記載を行いたい」と答えました。

 厚労省の濵谷浩樹審議官は介護職への技能実習の拡大について、「コミュニケーション能力の確保などを検討し」、「その上で介護保険の配置基準や介護報酬についてはEPA(経済連携協定)などを踏まえ検討したい」と答弁。畑野氏は「対等な労使関係もない実習生に拡大すべきではない」と批判しました。

 入管法改定案について、畑野氏は「当局の主観によるあいまいな要件で強制退去が乱用されてはならない」と主張。「受け入れ団体の不正行為により、失踪せざるを得なかった実習生に、直ちに退去強制手続をとるべきではない」とただすと、岩城光英法務相は「退去強制手続をせず、実習先の変更を支援する」と答弁しました。

(2016年5月18日(水)しんぶん赤旗)

 

【会議録】

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。
 外国人技能実習法案、入管法改正案について質問をいたします。
 先日の参考人質疑で、技能実習生の申告権の問題が議論されました。技能実習生の不利益を解決する手段として申告権が本当に機能するのか、その体制があるのか、懸念があると指摘されております。
 法案の申告権について伺います。
 申告はどこにするのか、どのような手続を経て技能実習生に対して回答するのか、お答えください。また、最近の労基署に対する申告件数を伺います。
宮川政府参考人 お答えいたします。
 新制度におきましては、申告、相談の窓口を外国人技能実習機構に設置することとしておりまして、実習生の利便性を考慮し、直接来所という形に加えまして、電話でも受け付けることを検討しております。その際、実習生等から、本人確認のため、氏名、在留カード番号等を聴取するとともに、法令違反の事実の申告を受け付けることとしております。
 申告を受け付けた場合、外国人技能実習機構において、法令違反の疑いのある受け入れ機関に対し実地検査等を行うこととしており、必要な指導等を行った上で、申告者に対しましては、対応、経過等について可能な限り通知することを検討しております。
 また、昨年度の監督署への技能実習生の申告件数を私の方から報告させていただきます。
 平成二十七年におきまして技能実習生から労働基準監督機関に対してなされました申告件数は、現在集計中であり回答できませんが、平成二十六年における申告件数は百三十八件ということでございます。
畑野委員 労基署には引き続き申告はできるということでよろしいですよね。確認で。
大西政府参考人 委員御指摘のとおり、労働基準監督署でも引き続き受け付けをしておるところでございます。
畑野委員 技能実習生が申告権を持っているという説明はどこでどのような形で行われるのか、具体的にお答えください。
宮川政府参考人 まず、現在は新法に基づく申告はございませんので、監督署に対する申告でございますが、現行制度につきましては、実習生に対しまして、まず入国時に、労働条件等や出入国に関する行政相談窓口、この案内等を掲載いたしました技能実習生手帳を配付しております。入国後の監理団体が実施する講習におきまして、入管法ですとか労働基準法、あるいは技能実習に係る不正行為が行われることを知ったときの対応方法、その他、技能実習生の法的保護に必要な情報を含む科目を講習で実施することとされております。
 また、委託事業で実施しております母国語相談におきまして、必要に応じ、労働基準監督機関などの関係行政機関の連絡先を紹介することなどによりまして、関係行政機関への申告、相談の方法等について周知を行っているところでございます。
 こうした技能実習生手帳の配付ですとか監理団体による講習は新制度におきましても引き続き行っていくこととしておりますほか、新たに設置されます外国人技能実習機構におきまして、先ほど申し上げました相談、申告窓口、その際、母国語による相談、申告などをできるように取り組んでいきたい。このような取り組みにつきましても、実習生に申告等の方法が適切に周知されるよう取り組んでまいりたいと考えております。
畑野委員 技能実習生手帳というお話がございました。私も厚生労働省からこれをお借りしてきました。六カ国語ある。中国語版、ベトナム語版、インドネシア語版、フィリピン語版、タイ語版、それから英語版ということですね。これを読ませていただきました。きょう、お手元の資料のところに、左側は日本語、そして右側は各国語に訳したものをつけさせていただいております。
 労基署に対しては今も申告権はあるんですね、当然ながら。今後もあると。新たに機構につけようということなんですけれども、この手帳には申告権があると書いてないんですよね。見てみたら、あるのは、医療機関への自己申告という方の申告だけなんですよ。
 資料の一ページ目、行政相談窓口の案内というのは、右側は中国語が書いてありますけれども、「労働条件等の相談」と。相談の中から申告へといくのかもしれないけれども、申告ということはどこにも書かれていない。ですから、これは、今もきちっとそのことをやるべきだし、それから申告のフォーマットを入れるべきだと思いますが、いかがですか。
宮川政府参考人 御指摘のとおり、現在は、労働基準法に基づく申告の点について記載がないこととなっております。
 今後、この手帳につきましては、新しい制度においても引き続き行う際に、今回の新法の内容等をバージョンアップした形でやらせていただきたいと思っておりますが、その際には、労働基準法の申告もあわせまして、申告等についての適切な記載を行いたいと思っております。
畑野委員 いかにこの問題を真剣にやってこなかったかということの一つのあらわれだと思うんですね。
 それから、この手帳によれば、相談なんですけれども、私たちも視察に伺いましたが、JITCOの平日の勤務時間、午前十一時から午後七時まで、休日、夜間は相談することはできません。この間の参考人の発言にもありましたが、申告するというのはなかなか昼間はできない、見つからないようにやるというので深夜とか休日にせざるを得ないという話もありました。
 それから、言語も、今は六種類ですけれども、多様化することが予想されるわけですが、申告権を技能実習生が行使した場合に、適切に対応がなされ、技能実習生に対して明確な回答を母国語で行わなければ申告権の制度を設けた意味がないと思うんですが、この母国語の対応はどうなりますか。
宮川政府参考人 現状の報告をさせていただきますと、現在、先ほど御紹介ありましたように、母国語相談につきましては、JITCOの方で行っていただいているところでございます。また、全国の労働基準監督署等におきましては、外国人労働者向け相談ダイヤルや外国語に対応した相談員を活用することによりまして、技能実習生からの申告等についても適切な受け付けを行っているところでございます。
 また、この新法が成立した場合に新たに設立されます外国人技能実習機構の申告、相談窓口におきましては、使用する実習生数の多い母国語での相談を受け付けることができるようにしまして、適切な申告につなげていこうと考えているところでございます。
畑野委員 資料の五ページのところなんですが、JITCOの技能実習生に対する母国語相談というのがあって、今でいえば、中国語及びベトナム語は火木土、インドネシア語は火土、フィリピン語は木曜日ということだったり、それから、次の六の資料ですけれども、相談窓口、日本語のみというので、医師とか、メンタルヘルスアドバイザーとか、安全衛生とか、労災保険相談員とか。日本語ですからね。対応できてこなかったわけですね。
 そういう点で、今までの実態を見ると、本当にこの申告権に実効性があるのか、対応できるのかということは疑問があります。
 次に、技能実習生の待遇の問題についても伺いたいと思うんです。
 参考人意見の中で、月額の手取り額が三万円弱という例が紹介されました。仕事に使ういろいろな道具代を払えなくて、それも払ったらマイナスになってしまうという月給の状況、月の収入ですね。そういう点では、私は、生活できる最低限の賃金を月額の保障でやってくるべきではなかったのかというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
宮川政府参考人 お答えいたします。
 実労働日数が少なくなるなどによって実習生の報酬が低くなるという御指摘でございます。
 例えば、技能実習計画上、週五日の実習を予定していたにもかかわらず、受け入れ機関側の都合で、実際には月に数日とかいう短い期間しか勤務できなかったということで少額な報酬を払うような例、こういうような場合に、現行制度におきましても、一つは、地方入国管理局が、計画に従った実習を行うよう指導するとともに、計画に従った実習が行われない場合の転籍等の検討を指導する。あわせまして、労働基準法第二十六条に基づく休業手当が適切に支払われていないと認められた場合に、同法にのっとった適切な休業手当を支払うよう労働基準監督署等が指導する。これが現状でございます。
 新制度施行後におきましては、外国人技能実習機構が、実地検査などによる関係書類の確認という中で、技能実習計画に従った取り扱いをしていないと認めた場合には、一つは、実習実施者に対しまして改善の指導、それに従わない場合、究極的には計画の取り消しを行うなど、厳格に対応するとともに、計画に従った実習が行われないというような場合に、実習生の転籍に向けた指導、助言という形のものに取り組むほか、先ほど申しましたような形での、地方入国管理局あるいは労働基準監督署等の関係機関との連携によって対応することとしたいと考えているところでございます。
畑野委員 これまでの対応の状況が少し報告されましたが、そういうものをちょっと資料でいただきたいんですね。具体的にどのように解決されているのかというものを、今出せるのか、今後出していただくのか、お答えください。
宮川政府参考人 お答えいたします。
 今のところ手持ちもございませんので、出せる資料があるかどうかも含めて検討させていただきたいと思います。
畑野委員 そういうものも、聞く前にきちっと資料を出していただくというのがやはり法案審議にとって大事だというふうに思います。
 それで、次に、実習先が倒産してしまった、実際に受け取るべき賃金を実習生が受け取れないというケースがあるというふうに聞いているんですね。失業給付だけしか払われないという場合も伺っております。受け入れ企業が倒産した場合の賃金保障の対策、どのような対策がとられてきたのか、伺います。
大西政府参考人 企業が倒産した場合に賃金が未払いになるという場合でございます。
 こうして退職した労働者につきましては、現在、賃金の支払の確保等に関する法律というのがございまして、この中で、未払い賃金の一部を立てかえ払いするという制度がございます。これにつきましては、技能実習生についても制度の対象となっておりますので、こういった形での保護がなされているところでございます。
畑野委員 これは幾ら返ってくるんですか。
大西政府参考人 現行の未払い賃金立てかえ払い制度につきましては、戻ってくる補償額でございますが、これは、立てかえ払いされる賃金につきましては、課税上、退職所得とされるため課税の額が少ないということ、あるいは立てかえ払いされる賃金から社会保険料が控除されないということ、こういうことを考慮いたしまして、立てかえ払いの額は、いわゆる手取り所得に近い金額として、未払い賃金総額の八割というぐあいに定まっているところでございます。
畑野委員 もう少し伺いたいんですが、技能実習生がこの立てかえ払い制度で対応されたという件数はありますか。
大西政府参考人 立てかえ払い制度につきまして、現在、技能実習生を特定した件数につきましては把握しておりません。そういう状況でございます。
 ただ、直近の例を幾つか調べましたところ、技能実習生につきましても立てかえ払いを実施したというケースはあるというぐあいに承知しております。(畑野委員「件数はわからないですか」と呼ぶ)件数は、済みません、集計しておりません。申しわけございません。
畑野委員 ですよね。ですから、これもやはりきちっと調べていただいて、出していただきたいと思うんです。
 皆さん、お手元、一番最後の資料九のところに、「立替払手続の流れ」というのをいただいたんです。これは、労基署に行ったり認定申請をしたり、いろいろな手続が、日本人だってこれは大変だと思うんですが、それを、言葉も本当に御苦労されているような外国の方に強いる。だから、私は、これはもっときちっと補償できるような体制がつくられてよかったんじゃないかというふうに思います。そういう改善が求められてきた。
 それから次に、年金の問題を伺います。
 技能実習生は、年金加入の対象とされております。先日の質問で、私も、技能実習生の死亡事故など痛ましい事例を御紹介いたしました。資料もそのときお配りをいたしました。それで、死亡事故について、技能実習生に遺族年金などが実際に払われているのか、把握されているか、伺います。
大西政府参考人 労災補償の関係について御答弁させていただきたいと思います。
 委員御指摘の死亡案件につきましては、私どもといたしまして、労災でないことが明らかな事案を除きますものにつきましては、前広に、労災補償制度というのがあるということをお知らせいたしました。その中から、現在、平成二十六年に起きた三十四件の死亡事故があると承知しておりますが、調べましたところ、その中で八件について労災申請がございまして、そのうち六件につきまして遺族補償年金の支給をしたところでございます。残りの二件については調査中という状況でございます。
畑野委員 それも、本当にきちっと渡っているのかという懸念が寄せられております。ぜひ正確に把握をするべきだと思います。
 次に、寮費の問題です。
 先日も岩城大臣に伺いました。私がこれをなぜ取り上げるかというと、住まいは人権だということなんですね、根本的問題として。それで、この適正化について、どのような着眼点で宿舎費の適否を見ていくのが適当かについてさらに検討していくとそのときお述べいただきました。
 それで、その後いろいろ聞きますと、高い家賃を取って実質的には低賃金になるという実態も報告されていますし、それから、この間、日弁連の方からは、雨が降ると畳のところが水浸しになる、布団も敷けないというような写真の実例も紹介いただきました。やはり、人間らしい住環境を提供する責任もあると思うんですね。
 あわせて、やはり、実習生が選べるということも、賃金をきちっと保障することとあわせてですけれども、そういうことも必要になってくると思うんですね。
 ですから、家賃については、文化的な最低限度の生活を確保する、あるいは賃金をきちっと確保していくという観点からも、明確な要件を定めていくことが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
岩城国務大臣 技能実習生が本当に安心して実習に専念できる環境を確保するためには、畑野委員おただしのとおり、宿舎費の金額が適正なものであることは重要でございます。前にも御答弁させていただきましたけれども、この適正な宿舎費について、より明確化していきたいと考えております。
 委員御指摘の点も踏まえまして、宿舎費を適正なものとする方策について、さらに検討してまいりたいと考えております。
畑野委員 このことも、もっともっと前から議論すべきことだったというふうに思うんですが、これは本当に直ちに改善していただきたいというふうに思っております。
 次に、介護の問題について伺います。
 外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会中間まとめというのが出されておりまして、そこで既に実習生について言われております。「介護分野においては、適切な実習体制を確保するため、以下の介護固有の要件を設定すべきである。」一つは、「小規模な受入機関(常勤職員数三十人以下)の場合は、受入れ人数は常勤職員総数の一〇%までとする。」二つ目として、「受入れ人数枠を算定する基準となる「常勤職員」の範囲については、介護の技能移転の趣旨に鑑み、「主たる業務が介護等の業務である者」(介護職等)に限定する。」とあります。
 伺いますが、「介護職等」の「等」にはどのような職種が入るんですか。
堀江政府参考人 お尋ねの「介護職等」の「等」でございますけれども、あくまで新しい制度の実施設計の中で特定することになりますが、実務経験に基づいて介護福祉士試験の受験資格を得ることができる職種を想定してございまして、具体的には、介助員、看護補助者、看護助手等の職種であって介護を主たる業務とするものが含まれるというふうに考えてございます。
畑野委員 「等」と丸めて書いてあるけれども、具体的に聞くとたくさん出てくるということですね。本当に不明確な物言いなんです。
 それで、この委員会の議論の中で、夜勤業務について二年目以降の技能実習生に限定するという話がありましたが、これも問題で、どのような実習生を想定しているのか、伺います。
堀江政府参考人 二年目以降の実習生というのは、日本語の能力でいきますとN3程度の日本語能力が確保されているということでございまして、また、それも含めまして、技能等の水準も、指示のもとであれば決められた手順等に従って基本的な介護を実践できるレベル以上となります。
 その上で、例えば二年目の実習生に夜勤を認める場合でも、実習生一人で夜勤を行わせるのではなくて、他の介護職員が配置され、実習生による介護をサポートできるようにするといった措置が必要と考えておりまして、制度の施行までの間に、業界におけるガイドラインの整備等を通じまして、安全性の懸念が生じることのないように実効性を確保してまいりたいと考えております。
畑野委員 こういうようなやり方はだめですよね。
 それで、介護保険法とのかかわりについて伺いたいんです。
 介護保険法では、介護施設における人員の配置基準が定められております。先日の連合審査で、配置基準の一人に技能実習生を換算するのかという質問に対して、政府参考人は、検討を行うと答弁したんですね。否定しなかった。そういうふうに検討すると。私は、これは大問題だと思うんです。
 ちょっと確認しますけれども、介護実習を行う技能実習生があるとして、介護保険法上の介護施設職員としてカウントされるのか、つまり、技能実習生は介護施設が受ける介護報酬の対象となる介護サービスに当たるのか、伺います。
浜谷政府参考人 お答えいたします。
 介護は対人サービスでございまして、サービス提供に当たりましては、その質を担保し、利用者の不安を招かないようにすることが重要であると考えております。このため、これまで御議論されておりますとおり、技能実習制度における介護職種の追加におきましては、必要なコミュニケーション能力の水準の確保などの検討を進め、条件整備を行うということでございます。
 その上ででございますけれども、介護保険の配置基準あるいは介護報酬の取り扱いにつきましては、今後、関係者の意見、あるいは既に実施されておりますEPAの仕組み等を踏まえ、検討してまいりたいと考えております。
畑野委員 実習生というのは、この間議論されてきたように、みずからの意思で実習先を移転できない、これは解決されていない。高い保証金、この問題も解決されていない。そして、強制帰国もある。対等な労使関係もない。人の命を預かる、そういう現場ですよ、介護の現場というのは。いいんですか。
 私は、こういう一つ一つの問題を、きちんと委員会でもっと議論を尽くすべきだと思いますよ。私は、このような安易なことをやるべきじゃないというふうに強く申し上げます。
 最後に、入管法改正案について伺います。
 在留資格に規定される「活動を行つておらず、かつ、他の活動を行い又は行おうとして在留していること(正当な理由がある場合を除く。)」を、取り消し事由として新設を予定しております。また、在留資格を取り消す場合、当該外国人が逃亡すると疑うに足りる相当の理由がある場合は、出国猶予期間を定めず、直ちに退去強制手続に移行することも規定されております。
 監理団体などの不正行為が原因で失踪したケースでは、直ちに退去強制手続をとられることはあってはならないと思いますが、いかがですか。
岩城国務大臣 お答えいたします。
 新しい取り消し事由を定める二十二条の四第一項第五号は、その末尾に括弧書きで、正当な理由がある場合を除くと規定しております。
 御指摘の監理団体の不正行為が原因で失踪したケースにつきましては、失踪に至る経緯のほか、失踪後の在留状況も踏まえて判断することにはなりますが、例えば、技能実習生が監理団体や実習実施先から人権侵害を受けるなどして、やむを得ず一時的に技能実習を行うことができなくなったような場合には、正当な事由があると認められますので、そもそも二十二条の四第一項第五号に該当いたしません。したがいまして、新設する取り消し事由によって在留資格を取り消すことはできず、退去強制手続がとられる余地はありません。このような場合には、本人が他の実習実施者のもとでの実習継続を希望すれば、実習先の変更を支援していくこととなります。
畑野委員 続いて伺いますが、疑うに足りる相当な理由という、当局の主観による曖昧な要件で退去強制が濫用されるおそれがあるんです。どのような基準で判断するのか、明確に伺います。岩城大臣、お願いします。
岩城国務大臣 逃亡すると疑うに足りる相当の理由がある場合とは、在留資格を取り消して出国猶予期間を指定したとしましても、当該期間中に自発的に出国することなく、故意に入管当局に行方を知られないようにして退去強制を逃れようとすることが疑われ、その疑いを抱くことにつき相当の理由がある場合をいうものと考えております。
 その判断に当たりましては、当該外国人の生活状況、在留資格に応じた活動を行わなくなった経緯、背後関係の有無、取り消し事由が発覚した経緯、取り消し手続中の挙動等の事情を総合的に考慮することとなります。
 このように、逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無は、客観的な事実関係を踏まえて判断すべきものでありまして、当局が恣意的に判断できるものではなく、濫用の御懸念には及ばないもの、そのように考えております。
畑野委員 曖昧な言葉、例えば、行おうとしているとか、委員会でも議論になりましたけれども、そういうことがやはりあってはならないと思うんですね、法文として。
 最後に私申し上げますが、本当にいろいろな困難で失踪せざるを得なかった実習生が、申告をしても、普通だったら一週間から一カ月で解決されるのが、三カ月も待つとか、こういう事態があってはならない。こういう人権をしっかり守るということこそ直ちにやるべきだというふうに思います。
 多くの問題が未解決だと、引き続き討論を求めて、私の質問を終わります。