第190回国会 2016年2月25日予算委員会第七分科会

鉄鋼業の死亡事故対策を

再発防止徹底要求

 日本共産党の畑野君枝衆院議員は25日の予算委員会分科会で、相次ぐ鉄鋼業での労災死亡事故について労働者の命を守る対策を徹底するよう求めました。

 畑野氏は「危険箇所を直ちに補修するべき」との労働者の声に応え、直ちに対策を講じるよう追及。林幹雄経済産業相は「本日午前に厚労省と鉄鋼各社に対し、安全対策の必要がある箇所については速やかに対策を講じるよう半年以内をめどに実施報告書を提出するよう指示した」と答弁しました。

 畑野氏は、労働者から提言されている「ゆとりある要員配置」など5項目の安全対策を行うよう迫りました。

 林氏は「畑野議員の指摘をふまえ、現場の声を聞き」「死亡事故が再び起きることがないよう指導を徹底したい」と答えました。

 畑野氏はまた、日立製作所が、黒字にもかかわらずリストラをすすめ職場では違法な退職強要が行われている問題を追及。日立の労働者から「退職勧奨面談は昨年で7、8回おこなわれた」「4回面談されて、精神的に追い詰められている」と訴えがあり、こうしたことは違法な退職強要にあたるのではないかと追及しました。

 厚生労働省の大西康之大臣官房審議官は「最高裁判所の裁判例では全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況であった場合、当該退職勧奨は違法な権利侵害にあたる」と答弁しました。

(「しんぶん赤旗」2016年2月28日付け)

 

箱根の火山被害支援を

日本共産党の畑野君枝議員はこのほど、衆院予算委員会分科会で、箱根・大涌谷周辺の火山活動による被害への支援を求めました。

 畑野氏は「噴火警戒レベルが1に引き下げられ、箱根町では、旅館、公共交通機関はおおむね平常通り営業、運行していますが、箱根・大涌谷周辺の立ち入り禁止エリアでは、観光施設が営業でき名い状況が続いています。温泉供給設備で苦労され、周辺の宿泊施設はボイラーの燃料費がかさむなど経営に苦しんでいる。風評被害の影響も受けています」と指摘。火山国・日本で、火山と共生し、地域経済が振興できるよう、国としての具体的支援を求めました。

 豊中厚志中小企業庁長官は「日本政策金融公庫セーフティーネット貸付などの融資、販路拡大支援措置などの利用を呼びかける」と答弁しました。

 畑野議員は「林幹雄経産相の所信で、観光産業育成と地域経済の活性化にとりくむ決意を述べている」として、経産省に支援強化を要求。

 林経産相は「箱根は観光業が主たる産業になっているので、その振興が地域経済活性化に直結している。国内外の観光客を増やすことが地域経済の好循環を生むカギ。関係省庁と連携して進めていく」と答えました。

( 「しんぶん赤旗」2016年3月9日付け首都圏のページに掲載 )

 

建設現場 賃上げに導け

 日本共産党の畑野君枝衆院議員は、衆院予算委員会分科会で、公共事業設計労務単価の引き上げが、現場労働者の賃金引き上げに確実につながるように徹底した指導を求めました。

 畑野氏は、2016年から適用される公共事業設計労務単価が、2012年から全国平均で34.7%引き上げられたが、現場労働者の賃金上昇は微増だと指摘。国交省は建設業団体の長や都道府県知事などに対する適正な賃金水準の確保要請だけでなく、徹底した指導が必要ではないかと問いました。

 木暮康二大臣官房長官審議官は「賃金上昇が下請けも含めて現場の労働者に行きわたることは非常に重要。建設業団体に対し要請をおこなっていきたい」と答えました。

 畑野氏は、賃金支払いの実態について、現場レベルでの調査や聞き取りを行うことが必要だと迫りました。国交省担当者は、専用ダイヤルを設置したことや、職員が団体を訪問して聞き取りをおこなったことなどを報告し、今後とも処遇の改善に努めていくことを約束しました。

 畑野氏は「賃金の引き上げなしには建設技能労働者の確保はありえない」と主張。現場の実態を把握すると同時に、公共事業の現場で働くすべての労働者に賃金の最低基準を保証する公契約法の制定を要求しました。

(「しんぶん赤旗」2016年3月11日付け首都圏のページに掲載)

 

【会議録】

畑野分科員 日本共産党の畑野君枝です。
 経済産業省が確認されているとおり、ことしに入って鉄鋼業では重大事故が多発しています。
 まず、二〇一〇年から二〇一六年現在までの鉄鋼業の労災死亡事故人数の推移について伺います。
    〔主査退席、佐藤(ゆ)主査代理着席〕
糟谷政府参考人 鉄鋼生産及びそれに付随する事業活動に伴って発生した死亡災害として、日本鉄鋼連盟から経済産業省が報告を受けている人数について申し上げます。
 二〇一〇年は四名、二〇一一年は十一名、二〇一二年は十五名、二〇一三年は七名、二〇一四年は十五名、二〇一五年は十一名、二〇一六年は現在までに五名でございます。
畑野分科員 お手元に資料を配らせていただきましたけれども、それが今お話のあったこの間の死亡者数の推移のグラフでございます。この資料によりますと、ことしですけれども、労災死亡人数は既に五人、ことしの二月十七日時点でこういうふうになっております。
 ことしの五人の死亡事故について、日時、企業名、事故の概要について伺います。
糟谷政府参考人 一つ目の事故でございますが、一月九日、新日鉄住金大分製鉄所におきまして、塗装補修中、補修用足場の架設作業時に墜落をされた事故でございます。
 二つ目は、一月十三日、JFEスチールの東日本製鉄所におきまして、クレーンの点検中、運転室の床が傾いて墜落された事故であります。
 三つ目は、一月十五日、共英製鋼の名古屋事業所におきまして、クレーンで鋼片を移動中、鋼片がマグネットつり具から外れて頭上に落下したことによる事故でございます。
 四つ目でございますが、二月十二日、新日鉄住金大分製鉄所におきまして、精錬設備の補修中、内部に残っていた高温の溶けた鉄が漏れ出して、それに触れられたという事故であります。
 五つ目の事故でございますが、二月十六日、新日鉄住金大分製鉄所におきまして、原料の荷おろし用のクレーンの清掃準備中に墜落をされたというものでございます。
畑野分科員 重大な事故が相次いでいるわけです。
 資料の二枚目以降につきまして、経済産業省より資料をつくっていただきました。この中では、新日鉄住金大分製鉄所でことし三人が亡くなっていらっしゃるということもあります。それで、私は、二枚目以降、二〇一六年、それからさらに三枚目、二〇一五年、そして四枚目は二〇一四年の三年分の労災死亡事故に関する資料を提出していただきました。
 このような鉄鋼業の労災発生に対して、この間、経済産業省としてどのような対策を行ってきたのか伺います。
糟谷政府参考人 鉄鋼業は、従来から重篤な産業事故が多い業種でございます。死亡者数は、一九八〇年代の前半に比べるとおおむね半減したとはいうものの、一進一退を繰り返してまいりました。
 このため、昨年六月、鉄鋼業における過去十年程度の取り組みと課題を踏まえまして、産業事故防止に向けて各社が取り組むべき十三の取り組みを取りまとめて、各社への普及啓発、業界や業種横断的な情報共有などを促してきたところでございます。
 にもかかわらずことしに入って立て続けに死亡事故が発生したことを、経済産業省といたしましては極めて重く受けとめているところでございます。
 このため、第一に、一月、二月の二回にわたりまして、日本鉄鋼連盟に対して注意喚起を行いました。
 第二に、新日鉄住金大分製鉄所でことしになって三件目の死亡事故が発生した直後の二月十七日には、現地へ担当管理職を緊急派遣いたしまして、事情の聴取を行うとともに、原因究明と再発防止の徹底を指示いたしました。
 三番目に、同じ二月十七日、日本鉄鋼連盟に対しまして、従業員が立ち入る全ての場所の安全性の再確認などの取り組みを文書で要請いたしました。
 本日の午前中も、日本鉄鋼連盟の主要各社の安全責任者に対しまして、厚生労働省とともに、改めて指導を行ったところでございます。
畑野分科員 ことしの死亡事故の件で、一月十四日付神奈川新聞の記事では、一月十三日のJFEスチール東日本製鉄所京浜地区の事故について報じております。三十九歳の社員の方が、クレーンの操縦室、高さ約二十メートル付近から転落、地面で頭を強く打ち死亡した、何らかの原因でクレーン操縦室前の床が抜けたと見て、調べられているということが言われております。
 私も、地元の労働者の方からお話を伺ってまいりました。現地にも伺いました。ある労働者からは、危険箇所を直ちに補修するようにしてほしいという要望の声が寄せられております。
 先ほどお話があった二月十七日の経済産業省の要請、これを周知徹底するとけさもおやりになったということですが、そのことを初め、直ちにこの危険箇所の対策などを講ずるべきだと考えますが、林経済産業大臣、いかがでしょうか。
林国務大臣 労災事故で亡くなられた方々への御冥福をお祈りするとともに、こうしたことが繰り返されることがないよう対策を徹底してまいりたいと思います。
 参考人からも答弁したように、鉄鋼業界に対しましては、本年二月十七日に発出した文書におきまして、屋外や、厳しい環境下に置かれている機械設備の周辺、通路等を含め、従業員が立ち入る全ての場所の安全性を確認することを要請したところであります。
 さらに、本日午前にも、厚労省とともに、鉄鋼各社に対して、安全性を確認した結果、安全対策を講じる必要性がある箇所については速やかに対策を講じるよう指示をしたところでありますし、各社に対しては、半年以内をめどに実施報告を提出するよう指示を行いました。
 今後、各社の安全対策につきましては、適切に進捗を確認したいと思っております。
畑野分科員 ぜひ、速やかに徹底をしていただいて、本当に労働者が安心して仕事ができるようにしていただきたいと思います。
 それで、三枚目、四枚目の、先ほどの経済産業省の資料によりますと、千葉県では、二〇一五年、四件の死亡事故が起きている。
 一月十一日、JFEスチール東日本製鉄所千葉地区では、ロールの手入れ中、ロールに巻き込まれた。七月十八日、JFEスチール東日本製鉄所千葉地区、クレーンの清掃中、転落。八月十八日、新日鉄住金君津製鉄所では、クレーンの解体中、切断した構造物が被災者の上に落下。十月十七日、新日鉄住金君津製鉄所では、切り板の積み込み中、切り板が被災者の上に落下した。こういう状況で、八月十八日の死亡事故は、千葉日報でも報道をされております。
 私は、川崎と千葉のそれぞれのところにも伺いまして、被災者の方の御冥福を心よりお祈りしたわけでございます。
 それで、経済産業省の資料には、さらに二〇一四年の千葉県での三件の死亡事故が記載されております。
 八月十九日、クボタ京葉工場船橋事業所、クレーン取りつけ中、頭部を挟まれた。十一月二十三日、JFEスチール東日本製鉄所千葉地区、ベルトコンベヤー補修中、挟まれた。十二月十五日、クボタ京葉工場船橋事業所、取鍋の位置がえ作業中、つりばりが被災者の上に倒れたと記載をされているわけです。
 製鉄所で働く労働者の皆さんからは、具体的な安全策について、次のような提言がされております。
 五点なんですが、一つは、ゆとりある要員配置、作業基準書を守って作業できるようにする。二、故障やトラブル発生時には、設備を停止して対処するようにする。三、労働者がミスをしたりうっかり手を出しても、設備が自動的に停止するなど、絶対にけがをしないよう本質安全化を図る。四、事故調査制度の再構築を行い、事故原因と背景をより正確に追求し、労働者の行動や安全意識の問題に矮小化しない。五、危険が多い関連企業の安全確保に向けて支援を強化する、などの要望が出されております。
 現場の声をよく聞いていただいて、具体的な安全対策を行うべきではないかと思いますが、林経済産業大臣、いかがでしょうか。
林国務大臣 事故の再発防止のために、現場の声にも耳を傾ける、具体的な安全策を速やかに講じていくことが大事だと思っております。
 経済産業省においても、異常、危険を察知した際に設備をとめる、それから、協力会社も含めた安全教育を実施するなど、産業事故防止に向けた具体的な安全対策を取りまとめ、各社に対して取り組みを呼びかけてきたところであります。
 畑野議員御指摘の内容を踏まえまして、現場の声も聞きつつ、同様な死亡事故が再び起きることがないよう指導を徹底してまいりたいと思っております。
畑野分科員 先ほど御紹介された、昨年六月十六日の経済産業省の文書でも、
  欧州においては、産業革命以降、安全への配慮の考え方が定着している。
と。
 一九八九年に制定された欧州機械指令においては、新規設備導入時における本質安全化が求められ、人と設備(危険源)との分離徹底が要求されている。そのため、欧州の製鉄所では、ベルトコンベアなど稼働物周辺には防護柵が設置されるなど、機械安全の対策が講じられている。我が国鉄鋼メーカーでも、順次、本質安全化(設備的対策)が行われているものの、統一的な行政指導はなく、個社の対応に委ねられており、
とあるんですね。
 同じ文書で、
 鉄鋼業において、災害防止・安全確保は、重要な経営課題の一つであるとともに、必要不可欠な社会的責務である。
というふうに述べているわけですから、ぜひ、大臣がおっしゃったように、現場の声、労働者の声を聞いて、昔は本当に現場からいっぱい会社に意見を言った、いろいろうるさいこともあったかもしれないけれども、それが安全やまた企業の発展にとっての力になったということを私もきょう現場で伺ってまいりました。ぜひ、鉄鋼各社に徹底をしていただいて、死亡労働災害を根絶して、労働者の生活と命を守っていただきたいと思います。
 次に、電機情報産業について伺います。
 日立製作所の労働者が繰り返し退職強要をされているということについて質問をいたします。
 東洋経済の二〇一五年十月三十一日付のホームページでは、日立製作所は、二〇一四年三月期と二〇一五年三月期に連続で過去最高の収益を更新したと報じられております。
 二〇一五年十月に発表した二〇一六年三月期上期、四月から九月の決算は、売上高が前期比六%増の四兆八千六十八億円、営業利益は四%増の二千七百四十億円と、上期では過去最高を記録したというふうに報道されているんです。
 同じ記事は、上期に情報通信部門の通信事業を中心に二千人を削減、うち四分の三を社外へ転出させ、残りをグループ内で配置転換した、下期にも約千人程度の削減を行う予定だというふうに報じられているんです。
 それで、日立製作所で働く労働者のお話をお聞きいたしました。
 ある方は、二〇一四年から退職勧奨の面談を十回以上も受けてきた、働き盛りの労働者です。初期面談では事業部業績の不振の説明だったが、すぐ退職強要が続くようになった。退職面談は、昨年で七、八回行われた。スキルを求めても、企業内スキルは他企業には通用しないので、転職や他企業では役に立たないのではないか。今の職場でとどまるしかない。家族を抱えてやめられない。これまでも何回も出向した経験があるが、今度はいよいよやめろと言われると納得がいかないとおっしゃっているというんです。また、別の労働者は、四回面談されて、精神的に追い詰められていると訴えておられます。
 このように、日立製作所の労働者から、繰り返し退職勧奨が行われているという訴えを伺うわけですが、こうしたことは違法な退職強要に当たるのではないかと思いますが、厚生労働省、いかがでしょうか。
大西政府参考人 退職勧奨に関しまして、個別の事案について直接お答えすることはちょっと差し控えたいと思いますが、一般論といたしまして、退職勧奨につきましては、最高裁判所の裁判例というものがございます。この内容でございますけれども、全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況であった場合には、当該退職勧奨行為は違法な権利侵害となる、こういう判例がございます。
 各企業におかれまして、そのような違法な権利侵害とならないように適切に対応していただきたいと考えているところでございまして、厚生労働省といたしましても、こうした裁判例をお示しして、企業に対する啓発指導を行うこととしておるところでございます。
畑野分科員 日立グループ人権方針というのが出されておりまして、次のように書かれております。
 「日立グループは、社会が直面する課題にイノベーションで応え、優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する中で、人権が尊重される社会の実現を支援していきます。その前提として、日立は人権尊重の責任を果たす努力をして参ります。」このように言っているんですね。
 そういう中で、黒字でありながら、利益を上げるために違法な退職強要が行われている、こういう訴えが出されているわけです。
 個別の労働者の実態をきちんと調査して、事実を把握し、労働者の生活を守るべきだと思いますが、いかがですか。
    〔佐藤(ゆ)主査代理退席、主査着席〕
大西政府参考人 企業が大規模な人員整理を行うなどの場合に、先ほど申し上げました裁判例に照らして、違法な退職勧奨が行われることのないように、都道府県労働局あるいは労働基準監督署におきましては、こういった人員整理の事実を確認の上、この裁判例を示して、企業に対する啓発指導を行うこととしておるところでございます。
 今後とも、こうした事実関係の把握に努めて、企業において適切な労務管理がなされるよう取り組んでまいりたいと考えております。
畑野分科員 企業のために頑張って働いてきた労働者とその家族の雇用と暮らしを守る、そういう点で、それができてこそ、電機情報産業、ひいては日本の産業の発展があるという立場で、ぜひ現場の労働者の声に応えていただきたいということを強く求めておきます。
 次に、建設労務単価の問題について伺います。
 二〇一六年二月から適用する公共工事設計労務単価が、再び引き上げられました。二〇一二年度との比較では、全国平均で三四・七%引き上がったと伺いました。
 しかし、全国の建設労働組合の賃金調査を伺いますと、職種などでばらつきがあるものの、日額で数百円、よくて微増の範囲にとどまっているという調査結果なんです。
 国土交通省では既に、建設業団体の長、各都道府県知事並びに各政令指定都市市長、そして主な民間発注者団体の長に対して、「技能労働者への適切な賃金水準の確保について」という通知を出して、技能労働者に係る適切な賃金水準の確保、社会保険加入の徹底等を要請しているわけです。
 つまり、元請企業から下請企業まで、この通知の内容がいまだ十分徹底されていないということで、労働者の現場の賃金上昇が微増にとどまっているのではないかと懸念をするんです。
 そこで、伺います。
 公共工事設計労務単価について、建設技能労働者の確保のためには、技能労働者の処遇改善、特に賃金引き上げは待ったなしの課題で、現場労働者の賃金が具体的に引き上がるように、下請企業との適正単価での契約、あるいは元請から積算された法定福利費等が適切に下請に払われて、雇用される職人、労働者に確実に支払われることを担保するような徹底した指導が必要ではないかと思うんです。
 技能者の処遇改善が進まなければ、担い手三法改正の趣旨が実行できないのではないかと思いますが、国土交通省、いかがでしょうか。
木暮政府参考人 まず最初に、建設労働者の賃金の動向でございますけれども、近年上昇傾向にございます。こうした市場の実勢を反映するという形で、今般、四回連続となります公共工事設計労務単価の引き上げを行ったというところでございます。
 この賃金上昇の動きが、今御指摘のように下請も含めた現場の労働者に行き渡るということは非常に重要なことだと考えておりまして、今月の十七日の日に、宮内政務官から直接、国土交通省に関係の建設業団体を呼びまして要請を行ったということでございます。これが今後とも現場に行き渡るよう、引き続き建設業団体に対して要請を続けていきたいと思っております。
 また、御指摘がございました社会保険の加入の促進、これも極めて重要なことでございまして、特に法定福利費が元請から下請、現場の労働者までしっかりと行き渡るようにということが重要でございます。
 このため、昨年の四月でございますけれども、社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインというものを改定いたしました。これによりまして、元請企業が下請企業に対して法定福利費を内訳明示した見積書、こういうものの提出を求めるという旨の新たな規定を設けたということでございます。
 いずれにいたしましても、引き続き、担い手三法改正の趣旨をしっかり私どもも踏まえまして、適切な賃金水準の確保など処遇の改善に取り組んでまいります。
畑野分科員 ぜひ進めていただきたいんですけれども、あわせて、元請団体などへの要請や働きかけにとどまらないで、現実の賃金支払いの実態について職場レベルでの調査やヒアリングを行うことが必要ではないかと思いますが、いかがですか。
木暮政府参考人 私どもも現場の声というのは非常に重要だというふうに認識しておりまして、今般の公共工事設計労務単価改定後の実際の請負契約に関する情報も含めまして、あるいは担い手三法の関係も含めまして、建設業に関するさまざまな生の声を受け付けるため、各地方整備局に専用ダイヤルを設置しております。建設業フォローアップ相談ダイヤルという名前でございまして、全国一本の電話番号でございますけれども、各整備局につながるということで、現場の声を拾っているところでございます。
 また、労務単価の改定も受けまして、専門工事業団体やその会員企業を訪問して、技能労働者の処遇の実態を含めた現場の生の声を直接聞き取っているところでございまして、昨年も、労務単価の改定の後、私どもの職員が訪問をして聞き取りを行ったということがございます。
 今後とも、現場の声を聞きながら、処遇の改善に努めてまいりたいと考えております。
畑野分科員 賃金の引き上げなしには建設技能労働者の確保はあり得ないということで、さらに踏み込んで現場の実態を把握していただきたいと思います。
 公共事業の現場で働く全ての労働者に対して賃金の最低基準額を保障する公契約法の制定が必要だというふうに私は思いますし、ぜひそれも取り組んでいきたいということを申し上げておきます。
 最後に、箱根町のことについて伺います。
 大涌谷周辺では、二〇一五年五月六日に噴火警戒レベルが二に引き上げられましたが、現在は、十一月二十日に噴火警戒レベルが一に引き下げられておりまして、箱根町は、旅館やホテルや物産店、公共交通機関などはおおむね平常どおりの営業や運行が行われております。
 しかし、いまだに大涌谷周辺の観光施設やロープウエーの一部が営業できないという状況にあります。周辺の皆さんは、火山活動の活発化によって収入が減ったというふうに訴えられているんです。
 周辺は、現在、噴火警戒レベルは一ですが、立入禁止エリアにある観光施設が営業できないという状況がありますし、また、温泉供給の設備でも大変御苦労されておりまして、周辺の宿泊施設はボイラーの燃料費がかさむなど経営に苦しんでおられます。観光に関連する企業も風評被害の影響を受けていると伺ってまいりました。
 国として、具体的な支援はどのようなものがあるのでしょうか。火山国日本で、火山と共生し、地域経済振興ができるように、国として何らかの支援が必要ではないかと思いますが、中小企業庁長官に伺います。
豊永政府参考人 お答え申し上げます。
 大涌谷の火山活動による地域の中小企業、小規模事業者への影響につきましては、経済産業省といたしましても、地元の商工会議所等を通じて情報収集に努めております。私自身も、昨年の九月の中旬に行って、業者の方々のお話も伺ってまいりました。
 今お話にありましたように、九月、十一月の噴火レベルの引き下げ以降、徐々に客足も戻ってきておりまして、おおむね前年の九割ぐらいの客足に戻っているようでございます。
 ただ、お話にありましたように、大涌谷周辺では、引き続き三百メートル立入禁止があるとか、団体客の戻りが遅いなど、いまだ火山活動による影響は存在していると認識してございます。
 こうした中で、公的金融機関には、依然として一部の方から資金繰りに関する相談が寄せられております。これまで六十五件、約三十億の融資を行っておりますけれども、引き続き、日本政策金融公庫によるセーフティーネット貸し付けや、信用保証協会によるセーフティーネット保証四号の発動により、これらの方々の支援に取り組んでまいりたいと思っています。
 また、販路拡大とか新たな商品やサービスの開発といった他の局面で用意されているいろいろな支援措置がございますけれども、自然災害の影響を受けておられるこうした事業者の方々にも広く使っていただけるものと考えておりまして、広くその利用を呼びかけてまいりたいと考えてございます。
畑野分科員 ぜひ支援を強めていただきたいと思うんですけれども、例えば小規模事業者支援パッケージ事業、小規模事業者持続化補助金なんですが、これは神奈川県の業者の方に伺いますと、応募してもなかなか当たらない、専門家の援助を受けて、いい内容にしないとなかなか通らない、ですから、枠を広げて、また具体的な援助も強めてほしいという声も上がっております。ぜひ広く利用される制度にさらに進めていただきたいということを申し上げておきます。
 三月二日から、第一回火山観光サミット二〇一六イン箱根が開かれます。二月二十四日の経済産業大臣の所信で、観光産業の育成と地域経済の活性化について取り組む決意を述べられていらっしゃる林大臣として、ぜひ箱根など観光産業への支援を強めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
林国務大臣 箱根においては、観光業が町の主たる産業になっておりますので、その振興はやはり地域経済の活性化に直結するわけでございます。
 観光業は、御指摘のように、宿泊業や小売業を含む裾野の広い産業でありまして、地域への波及効果が非常に大きい、こういうふうに思います。
 特に、最近急増する外国人観光客ですけれども、我が国経済の起爆剤となる存在でもありまして、こうした外国人観光客を地域に呼び込む取り組みも重要であります。
 あわせて、地域資源を活用した観光ツアーの開発などによって地域の魅力の再発見を促して、日本人による観光を盛り上げることもこれまた重要でございます。国内外の双方の観光客をふやすことが地域経済の好循環を生むための鍵となります。
 今後とも、まず魅力的な観光地づくりのためのクールジャパン機構の投資、そして観光地の魅力の積極的な情報の発信、多言語表示や免税カウンターの整備等買い物環境の整備、こういったものなどの取り組みを、まち・ひと・しごと創生本部や観光庁など関係省庁と連携しながら進めてまいります。
畑野分科員 ぜひ、現地の声をきめ細やかに聞いていただいて進めていただきたいと思います。