「おめでとう」「長い間応援ありがとう」。資生堂・アンフィニの非正規切り裁判で原告としてたたかった女性たちは25日、東京都労働委員会で全面勝利和解の合意書に調印し、集まった約50人の支援者と涙を流して抱き合い、喜びました。原告団長の池田和代さん(59)は、支援者から受け取った花束を抱き、「いつやめようかと、ずっと思っていたけど、みなさんの顔を見たらいえなかった」と初めて明かしました。

 

池田さんは、解雇当時、神奈川県鎌倉市の資生堂鎌倉工場で8年半、資生堂社員と肩を並べ、口紅製造ラインのラインリーダー(LL)として働いてきました。当時、池田さんの給与のほとんどは息子たちの学費にあてていたため、生活は一気に苦しくなりました。

 この悔しさをバネにたたかった不当解雇からの6年8カ月。「80カ月の困難を乗り越えた。やってよかった」。ようやく手にした勝利に笑顔を見せました。

 同じくLLとして6年間働いていた露木美香さん(52)。休日に速達で知らされた突然の雇い止めは、全労連・全国一般労働組合神奈川地本アンフィニ分会への加入を通告したとたんのことでした。

 横浜市でおこなわれた記者会見では、「非正規であろうとも権利を勝ち取るため、自分を信じてたたかい続けてきました。うれしい結果に出合えて本当に良かった」と語りました。

 当初から支援してきた日本共産党の畑野君枝衆院議員も都労委に駆けつけました。原告一人ひとりと抱き合い、「生活が大変になり、何より、生きがいである仕事を奪われるなか、工場がなくなってもたたかい続けたみなさんに敬意を表したい。幸せを取り戻して」と声をかけました。

 法廷で事実を突き付け、資生堂と派遣会社アンフィニの法的責任を追及してきた原告弁護団の奮闘、労働組合などの頑張りも、勝利への力となりました。

 全労連・全国一般労働組合の鈴木新中央執行委員長は、東京・銀座での宣伝やパレードなど工夫をこらした行動が解決につながったと語り、「今回のたたかいを教訓にしながら、労働者の尊厳をかけたたたかいに勝利していく」と述べました。

 原告弁護団の藤田温久(はるひさ)団長は記者会見で、この間の労働裁判で裁判所は、労働法違反を認めながらも企業の社会的責任を回避してきたと指摘し、「今回の合意書で、資生堂は一つの範を示した。他の大企業もこの例にならって自らの雇用責任を明らかにし、格差社会を是正する方向に踏み出してほしい」と訴えました。

 

( 「しんぶん赤旗」2016年1月26日(火曜日)付け5面に掲載 )