藤森毅・日本共産党文教委員会責任者にききました。

 

(写真)国会内で開かれた夜間中学議連・フリースクール議連合同総会。発言するのは日本共産党の畑野君枝衆院議員=8月11日

(写真)国会内で開かれた夜間中学議連・フリースクール議連合同総会。発言するのは日本共産党の畑野君枝衆院議員=8月11日

 ――無理にまとめた「座長案」。懸念が集中したのは「個別学習計画」という仕組みですね。

 藤森 そうです。不登校関係の方々が声をあげ、私たちも「このままでは賛成できない」と言いました。

 個別学習計画は、保護者が作成し、教育委員会が承認すれば、学校籍を抜き、その子のフリースクールなどでの学習を学校と同様のものと認めるというものです。

 計画がなじむ場合もありえますが、「学校にいけない自分を責め、今生きるだけで精いっぱいの子どもに、学習計画なんて無理」「休息が大切なのに家庭が学校みたいにならないか」などの声があがり、元不登校の青年は「親と子どもの意見が違う家庭では、子どもは深い心の傷を負うことになる」とも指摘しました。個別学習計画が経済支援の条件とされ、その面からの強制性も心配されました。

追いつめないで

 ――なぜ当事者が反対する方向を進めようとしたのでしょうか?

 藤森 そこには、就学義務をはきちがえた、「不登校への指導=学校復帰」という国の原則があるのです。

 座長案は、「個別学習計画↓フリースクール」という例外領域を設けて、そこを支援する発想でした。しかし今述べたように副作用が大きすぎます。しかも、個別学習計画以外の不登校の子ども(不登校約12万人中11万人超を想定)には支援がないばかりか、「学校復帰」が強調されることになります。「これ以上子どもを追いつめないで」と訴えた母親の声は切実です。

 1993年に国は「誰にでも起きうること」と不登校観を転換しましたが、指導観は「学校復帰が前提」のままです。そこを改めて、全ての不登校の子どもを多様な場で支援していくことが必要で、それは個別学習計画なしでも可能です。

学校よくする力

 ――当事者たちが声をあげ政治に働きかけてきました。

 藤森 それは本当に大事なことです。

 教育再生実行会議提言がフリースクールに言及(昨年7月)、安倍晋三首相が施政方針演説でフリースクール支援を明言(今年2月)、来年度概算要求でフリースクール支援約5億円計上(新規)などの変化にもそうした面があります。同時に、支援事業を大手企業のもうけの場にしたり、フリースクール統制に利用する動きには注意したいと考えています。

 不登校への支援は誰が見ても進めなければならない所にきつつあるわけで、政党も政府も当事者とよく話し合い、その思いと知見を生かす方向で、法整備を含め支援策を検討し、前進させることが重要です。

 不登校の子どもたちの声を受けとめることは、学校や社会のあり方そのものをよくする力にもなると思います。 (おわり)

 就学義務

子どもを義務教育学校に通わせる、保護者の義務。子どもの義務ではない。子どもの権利重視から罰則付きだが、不登校は「正当な事由」による欠席とされ罰則はない。子どもの権利保障のための規定という大前提を見失うと、「就学義務があるから、不登校への指導は学校復帰」という実態にあわない議論となる。

 

(「しんぶん赤旗」2015年11月7日(土曜)付け 社会・総合面に掲載)