北陸新幹線延伸区間(敦賀―新大阪)を巡り、国土交通省が示した「費用対効果」(開業による利益を整備費用で割ったもの)の計算手法が疑問視されている問題で、政府とJR西日本が推す「小浜・京都ルート」に有利になるよう算定されていたことが改めて明らかになりました。与党整備委員会は7月、同ルートの桂川案を決定しましたが、京都の環境と生業(なりわい)を破壊し沿線自治体に多額の負担を強いる同ルートが意図的な算定をもとに決められたことになります。
国交省がこのほど、日本共産党の畑野君枝衆院議員に示した資料によると、北陸新幹線延伸区間8ルートを比較した費用対効果は、小浜・京都ルートが南北案、桂川案とも0・5。米原(一部直通)、湖西、小浜・舞鶴、小浜・亀岡など他のルートも、0・3から0・7で、米原(乗り換え)のみが1・0でした。
整備新幹線を建設着工する指標は1・0以上とされており、小浜・京都ルートはその半分の数値しかありません。
ところが、国交省は、すでに開通した区間も含む北陸新幹線全体(東京―新大阪)を「一体評価」として各ルートを比較した数値も提示。その結果、小浜・京都ルート(南北、桂川両案)は1・1となりました。
国交省は「一体評価」を提示した手法について、同省の有識者会議の議論を踏まえたと説明。今後、費用対効果の算定のマニュアルに反映させるとしています。ただ、その議論の経過が公表されておらず、一体評価の手法自体、正式にマニュアルに反映されていません。恣意(しい)的にこの手法を持ち出した疑いがあります。
国交省の資料は、両者の算定を統一した条件で行わず、別々にしたと説明。不利な前提で算定された他ルートの数値が悪くなったためです。
(1面のつづき)
算出根拠 責任問われる
北陸新幹線延伸区間(敦賀―新大阪)の費用対効果について、国土交通省が示した説明資料によると、例えば、米原ルート(乗り換え)は1・0と、小浜・京都ルート0・5の倍あります。それが「一体評価」と称して同省が提示した東京―新大阪の全区間では、米原ルートは1・0で、小浜・京都ルートは1・1に跳ね上がり、逆転しました。
資料には、「整備計画の変更や新たな環境影響評価手続きの実施が必要となる場合、追加的な期間を要し」として、着工を7年間繰り下げた想定で物価上昇分等を上乗せして計算したことを明らかにしています。その場合、費用は増加します。小浜・京都ルートはそうせずに、米原ルートを含むそれ以外のルートで実施。国交省は、小浜・京都ルートは環境影響評価が進んでおり、それ以外のルートはやり直す必要があるためと説明します。
延伸区間においては、米原ルートの建設費は小浜・京都ルートよりはるかに低いのに、それが「一体評価」(全区間)となると、1・3倍以上に。便益=効果は高いものの建設費がさらにかかることで費用対効果は上がりませんでした。一方、「一体評価」で建設費が低くなった小浜・京都ルートは、費用対効果が上昇しました。
こうした、建設着工を繰り下げる算定は、開業済みの既存区間(東京―敦賀)でも反映されました。開業区間の費用は、どのルートも同じであるはずと考えられますが、そうはならず、米原ルートが小浜・京都ルートの1・5倍になっています。これについて国交省は、開業区間を含め全体で「現在価値化」をしたためと説明します。
自民、維新の議員は何の疑問ももたなかったのか。国交省は、今回の費用対効果の説明資料は、与党整備委員会では示していないと説明。算出根拠を確認せずにルートの選定に至ったのか、国交省とともにその責任が問われます。
「一体評価」なぜでてくる
桜井徹・日大名誉教授
国土交通省が提示した北陸新幹線の「各ルートの費用便益比」(費用対効果)の問題点を指摘します。一つは、個別評価では、最大値でも1・0で、費用便益比を前提とする限り、現状維持と変化ないということです。現在の在来線特急「サンダーバード」を高速化するという代替案の費用便益比も試算すべきではないでしょうか。
二つ目は、従来の整備新幹線に適用してきた個別評価ではなく、既設区間を含めた東京・大阪間の「一体評価」が突然なされたということです。算定の基準年の相違の問題に加えて、一体評価の算定マニュアルも公開されていません。一体評価による今回の結果提示は、「小浜・京都ルートがいい」というためのものとしか考えられません。
算定方法の詳細な情報公開に加えて、一部の政治家間の議論ではなく、在来線の高速化などの多様な代替案を含む広範な国民の議論が必要です。
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(しんぶん赤旗2026年9月23日【1面】【2面】)