再審制度(刑事裁判のやり直し)を見直す刑事訴訟法改定案が衆院で審議されています。冤罪(えんざい)被害の救済に重要な役割を果たしてきた証拠の開示が、政府案では現状より後退する危険性が審議を通じて浮かび上がっています。

 袴田事件など再審で無罪が確定した事件の多くで、弁護人の度重なる求めで開示された証拠が無罪の決め手となってきました。

 政府案は、裁判所が検察に証拠の提出命令を出す制度を新設します。しかし、裁判所が再審請求理由との「関連性」や「必要性、相当性」があると考えた場合に範囲を限定。そもそも証拠が提出される先は裁判所であり、弁護人や再審請求人が必要な証拠の「開示」を受けることを保障する制度になっていません。

請求人への証拠「開示」保障せず

 高市早苗首相は提出範囲について「相当の広がりを持つ」などとしています(5月26日の衆院本会議)。しかし、再審請求人は、検察がどんな証拠を持っているか分かりません。全体像が分からない状態で関連性や必要性、相当性を具体的に示すのは非常に困難です。

 日本共産党の畑野君枝議員は5月29日の衆院法務委員会で、「証拠の一覧表」の開示を義務づけない政府案は「再審請求人に証拠のアクセスを保障したとは言えない」とただしました。

 法務省の佐藤淳刑事局長は、一覧表の提示がなくても請求人が必要な証拠の提出を求めることは「十分可能」などと強弁。畑野氏は、一覧表の提示を裁判所限りとし、弁護人に閲覧さえ認めなければ、証拠開示に関する裁判所の裁量をゆがめることになると指摘しました。

 この間の再審無罪判決では、袴田事件での600点や福井事件での287点など、関連性や必要性を問わずに広く開示された証拠が重要な役割を果たしました。

 衆院法務委の参考人質疑で青山学院大学の葛野尋之教授は、請求人は捜査機関の手元にある不提出記録への「アクセスを厳しく限定されている」と強調。政府案で「関連性の限定をかけることで、有罪認定に合理的疑いを生じさせる証拠が開示されないまま終わる恐れがある」と指摘しました。

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 政府案は、証拠の複製などの目的外使用を法律上一律禁止し、違反した場合の刑事罰まで設けています。

 袴田事件では開示されたカラー写真やネガフィルムを支援者らに共有したことで再現実験が行われ、報道によって国民に広く知られたことが、無罪判決につながりました。

 畑野氏は、目的外使用を一律に禁じる政府案では「支援者や報道機関への証拠の開示が不可能、少なくとも萎縮効果により困難となる」と追及。平口洋法相は、「証拠の複製(コピー)などを再審手続きや準備に使用することは許される」「証拠の概要を伝達するなどの行為は禁止されない」などと答えました。

 具体的に何が違反に該当するのか。委員会審議での政府答弁では、その線引きは極めて不明確です。

 袴田事件で開示された5点の衣類の写真を公表し支援者が実験することは政府案の下でも可能か―。質疑でそう問われた刑事局長は「再審手続きの準備に当たるので違反にならない」と答弁。一方、弁護人などが証拠写真をそのまま報道機関に提出することについては「目的外使用の禁止違反となり得る」と述べています。また、弁護人が報道機関に対し、開示された供述調書の全部を読み上げた場合、違反にあたり得るとも答弁しました。

 鴨志田祐美弁護士(日弁連再審法改正推進室長)は参考人質疑で、袴田事件では衣類についた血の色の違いが証拠写真と実験結果とあわせて報じられたことが無罪を大きく印象づけたと指摘し、包括的禁止規定を改めるよう求めました。

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 政府案に対し、日本共産党と中道改革連合、チームみらいは超党派議連で合意した案を議員立法として提出。並行審議されています。議連案は再審請求人に証拠を開示する規定を設け、証拠一覧も開示対象としています。目的外使用の一律禁止は設けず、プライバシー保護などのため匿名化など開示方法や時期に条件を付して対応します。畑野氏は「政府案では冤罪を救えない」とし、冤罪被害の救済のための議連案の実現を訴えました。

(しんぶん赤旗2026年6月2日【2面】)