衆院憲法審査会は14日、自民党などの要請で衆院法制局、憲法審査会事務局がまとめた「『緊急事態条項』のイメージ(案)」について報告を受け、各会派が意見を表明しました。(関連2面)
日本共産党の畑野君枝議員は、一部の会派がイメージ案の作成を主張しただけで、全体の合意になっていないと指摘。法制局や憲法審査会事務局は中立・公平な立場で運営に関わることが求められていると述べ、「イメージ案なるものをつくらせ、あたかも改憲議論が進んでいるように喧伝(けんでん)するやり方だ」と批判しました。
イメージ案は「緊急事態」の「対象範囲(定義)」として(1)大規模な自然災害(2)感染症まん延(3)内乱など社会秩序の混乱(4)外部からの武力攻撃―などをあげ、広範な地域で長期間にわたって国政選挙の実施が難しい「選挙困難事態」と内閣が認定すれば、国会議員の任期延長や、内閣による「緊急政令」の制定を可能とするなど、緊急事態条項を主張している政党の意見を並べています。
畑野氏は緊急事態条項を憲法に盛り込む目的は「戦争を想定した態勢整備だ」と指摘。「選挙困難事態」と称して、1年も国会議員の任期延長を認め、国民の選挙権を停止することは「主権者たる国民の参政権を侵害し、国民主権と民主主義をゆがめるものだ」と批判し、「国民が求めていない改憲のための議論はするべきではない」と主張しました。
(しんぶん赤旗2026年5月15日【1面】)
緊急事態条項イメージ案
議論加速狙う自維国 戦争想定態勢整備が目的
(しんぶん赤旗2026年5月15日【2面】)
衆院憲法審査会で14日、衆院法制局と審査会事務局が「『緊急事態条項』のイメージ(案)」を示しました。国会議員の任期延長や、内閣に権限を集中させる「緊急政令」の制定を可能にするのが柱です。
イメージ案は「緊急事態の範囲(定義)」として、大規模な自然災害や感染症のまん延、外部からの武力攻撃などを挙げ、国会議員の任期を延長できるとの主張があるとしています。さらに、「国会機能の維持が困難となった場合」として、内閣が法律と同等の効力を持つ「緊急政令」を制定することも例示しました。
全体の合意はない
前回4月の審査会で、自民党の新藤義孝議員が緊急事態条項に関する具体案を明示したいと提起。これを受け、審査会幹事会が法制局と審査会事務局に緊急事態条項を主張する政党の意見をまとめさせたのがイメージ案です。
14日の議論では、自民、日本維新の会、国民民主党は、イメージ案を元に議論を加速させていく姿勢を示しました。
新藤氏はイメージ案のうち総選挙延期の明文規定について「異論はなく、ピン留めしてもよい」などと、既に結論が出ているかのように主張。維新の馬場伸幸議員は、直ちに条文起草委員会を設置するよう強調し、国民民主党の玉木雄一郎代表も異論の少ない案を優先して条文案づくりに着手するよう求めました。
しかし、イメージ案は全体の合意となったものではありません。一部の会派の主張で、中立・公正な立場で審査会の運営に関わるべき法制局と審査会事務局にイメージ案を作らせるのは間違いです。
中道改革連合の国重徹議員はイメージ案について「あくまでも議論の整理」であり、「合意された事項をまとめたものではない」と指摘。参政党の和田政宗議員が、緊急事態の対象に感染症のまん延が含まれている限りは反対だと表明するなど、改憲勢力の足並みはそろっていません。
中道の国重氏は、イメージ案によって、むしろさまざまな課題や論点が浮き彫りになったと述べ「『議論は出尽くし、あとは決めるだけだ』といった現状認識は当てはまらない」とくぎを刺しました。
そもそも災害や感染症は個別の法律で対応すべき問題です。東日本大震災やコロナまん延時にも、緊急事態条項がないから対応できなかったということは起きていません。問題は地方自治体や医療体制です。にもかかわらず、憲法に緊急事態条項を盛り込もうとするのは、戦争を想定した態勢整備を目的としているからです。
高市早苗首相は、3日の憲法記念日に合わせた産経新聞のインタビューで、特に急がれる改憲項目に緊急事態条項を挙げました。14日の審査会では馬場氏が「火急のテーマである9条改正」も並行して条文化を進めるよう要求。参政党の和田氏は「9条改憲と併せて議論する必要がある」と述べました。
日本共産党の畑野君枝議員は「自民党は緊急政令や緊急財政処分を主張しているが、国会の権限を奪って内閣に権限を集中させ、人権の制限を可能にする」と指摘。「高市政権が進める戦争する国づくりと一体で、断じて認められない」と批判しました。
国民は求めてない
さらに、国会議員の任期延長論は、国民主権と民主主義をゆがめるものにほかなりません。そもそも国会議員の任期は国民の負託によるもので、憲法の任期の規定は、定期的に民意を国政に反映させることで、国民主権の原理を徹底しています。「選挙困難事態」と称して議員の任期を延長すれば、国民の参政権を侵害します。
日中戦争下の1941年、当時の政府は、挙国一致の戦争遂行体制の確立が必要な時に国民を選挙に没頭させられないとして衆院議員の任期を1年間延長。選挙の延期で国民の声を抑え込み、無謀な戦争に突き進みました。
この痛苦の反省から、戦後の日本は権力者の都合による任期延長を防ぐため、法律ではなく憲法に国会議員の任期を規定。任期延長のための改憲は、歴史の教訓を踏みにじるものです。
畑野氏は、国会は国民に正当に選挙された議員で構成されなければならず「国民の信任を得ていない議員が長期にわたって居座ることは許されない」と批判しました。
そもそも国民は、このような改憲を求めていません。朝日新聞と東京大の谷口将紀研究室が、3~4月に実施した共同調査では「もっとも優先的に取り組んでほしい政治課題」の12項目のうち、「憲法」を選択したのはわずか1%でした。
中道の国重氏は「国民生活に広く関わる平時の国会機能の維持」こそ、国民のための憲法議論として優先すべき課題だと主張。畑野氏は「国民が求めていない改憲の議論はやめるべきだ」と求めました。