日本共産党の畑野君枝議員が3日の衆院本会議で行った、外国人技能実習制度改定法案の質問は以下の通りです。

(写真)質問する畑野君枝議員=3日、衆院本会議

(写真)質問する畑野君枝議員=3日、衆院本会議

 外国人技能実習制度は、技能移転と国際貢献を名目としながら、実態は低賃金・単純労働力受け入れという構造的矛盾を抱えたまま、深刻な人権侵害を生みだしてきました。

 政府が「適正」や「保護」をいうのなら、この構造的矛盾を解決しなければなりません。

 外国人の就労を原則認めない政府のもとで、同制度は外国人研修制度として制度化された当初から、研修とは名ばかりの外国人労働力の供給手段とされ、強制労働、低賃金、ピンハネ、強制貯金、残業手当不払い、パスポート取り上げ、高額の保証金や違約金、強制帰国、セクハラと性的暴行など、数々の人権侵害が続発してきました。

 こうした実態に、日本弁護士連合会は、「人権侵害は構造的問題に起因」するとして「早急な廃止」を要求。国連自由権規約委員会は「性的虐待、労働に関する死亡、強制労働」を指摘し、米国務省は「労働搾取や人身売買への懸念」を表明するなど、国連人権機関、国際社会から国際人権規約に違反していると指摘されています。

 このようなことが起きる原因に、悪質ブローカーによる研修生ビジネス、国際人身売買と呼ばれてきた実態があります。中国やベトナム、フィリピンなどの10代、20代の外国人労働者が、母国での貧困・生活苦のもとで、家族への仕送りができると、日本への憧れをもって来日する。その思いを食い物にするブローカーが横行してきたのに、政府は根絶のための対策をとってきたとはいえません。

 母国の送り出し機関による高額な保証金や違約金をとる悪質行為をどのように規制するのですか。本法案の人権侵害の禁止規定や罰則は、母国の送り出し機関やブローカーに適用されるのですか。

 2010年の入管法改正により、それまでの「研修」を「技能実習」にかえて、労働関係法令を適用し、「監理団体」を設けました。しかし、技能実習生をめぐる悪質な人権侵害の状況は引き続き深刻です。実習生の失踪件数は、10年の1282人から14年には4851人と4倍に増え、過去最高です。

 あるベトナム人技能実習生は、「日本で働けば月給20万円から30万円。1日8時間、週5日勤務で土日は休み。寮あり」と聞き、仲介会社に約150万円を支払い、来日しましたが、毎日、朝6時から深夜2時まで働き、休みはない。寮は農機具の保管場所で、家賃として月額2万円が給料から天引きされ、手元には6万円程度しか残らない。それでも可能な限り3万円から4万円を母国に仕送りする生活が7カ月続き、「頑張ったが疲れてしまい逃げ出した」というのです。この実態を法案は解決できるのですか。

 法案は、外国人技能実習機構を新設し、実習生受け入れ企業やその企業を監理する団体への監督を強化するとしています。しかし、この機構には、報告・実地検査などの権限しかありません。強制的立ち入り権限を持たずに、十分な監視、監督ができるのでしょうか。

 また法案は、「技能実習3号」を新設し、受け入れ企業や監理団体が「優良」と認められれば、合計5年間の実習を可能にするとしていますが、企業が「優良」というのは、どのような調査に基づき、何を基準に判断するのですか。実習期間の3年から5年への延長、受け入れ人数枠の拡大、対象職種の拡大は、技能実習制度の深刻な問題を拡大するだけです。

 本年4月から、オリンピックや震災復興の建設需要に対応する「緊急措置」と称し、建設分野で3年の技能実習終了後に2年ないし3年間、建設労働に従事することができる制度が発足。介護分野にも技能実習制度を拡大し入管法改定で「介護」の在留資格を新設しようとしています。国家戦略特区における外国人家事支援の実施も検討されています。

 財界の要求に従った外国人労働力の受け入れ拡大は、低賃金と劣悪な労働条件をいっそう深刻にするものです。

 

( 「しんぶん赤旗」2015年9月7日付け )

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